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84.平和ボケ

「警戒して、まだ敵が潜んでいるかもしれない」

青月の誰かがそう言った。


床に打ち付けられて暫く息ができない。

ユスティアやレーテに比べて自分はなんて脆いんだ…。


息苦しい中、何とか刮目(かつもく)して周囲を見渡す。

がれきに被弾したユスティアは瓦礫にまみれたままでてこない。


レーテの髪は依然としてピンク色。

しかしなぜか再生を始めない。


…ルレウは倒れている。


「威勢がいいやつだったな。どこの棟だろう。」

「見たことない顔だな。」

倒れた私たちを見て青月の者が言う。


…直感的に、この今の状況が詰みではないと感じる。

全員がルレウのチャーム待ち、全くの勘だがそう思った。


一方で青月は勝った気でいるようだ。

確かに奇襲を退けて私達を静まらせることには成功しただろう。

しかし、なぜ私達を徹底的に無力化しないのか。これが平和ボケなのか。


「こんな小さな子がいるなんて…」

足音が私に近づく。

分かっていない。子供の姿こそが根源的な悪となりえることを…



「うああぁぁ」

私はすぐにその声の方を向くと、金々の青月の者ががれきの公転を纏う者を投げ飛ばしていた。


その直後、待っていたかのようにルレウ、ユスティアが動き出す。

ユスティアが『種族の根源』に近づこうとすると、大広間の正規入口から教官らしき者が2名、ユスティアに襲いかかった。

始めてまみえる青月の教官は、もう一人を呼びに行っていたようだ。


ユスティアは惜しくも『種族の根源』を前にして足止めされる。

他方でルレウの周囲には10名以上の青月が取り囲んでいる。

これではもはや敵主力へのチャームも叶わないだろう。


金々の者もすぐに周囲に取り押さえられてデュナミスにより相殺されてしまった。


頼みのレーテも横たわったまま。

なぜレーテは干渉も受けていないのに動かないのだろうか。


レーテにおいて、最悪の事態はどうしてもイメージできなかった。

私は悪あがきに片手を鋭利な刃物に変化させて『種族の根源』に向かって走る。


「こんな小さい子が頑張ってるのを見ると油断しちゃうなぁ。」

そういった長髪の女は私の刃物の腕を掴む。

強い力だ。腕は動かない。


自分に変身デュナミスをかけて縮小し、腕の把握をすり抜ける。

しかしすぐに背後からがんじがらめに遭い、前進を抑止された。

「暴れないでねー。今動けなくするからねー。」


『2891』『2645』『2401』『2169』…

異常な速さで重ねがけが削られていく。

メイラ先生の文章がよぎる。

─本気の一撃ならば300枚は破壊されることを想定しておけ


「あれれ、おかしいなぁ。」

目の前の女はそう言うと、私を仰向けに倒し、その瑠璃色の髪で両手両足を束縛した。


その女と目が合う。どこかで見たことがあるような顔。

そして、女の後ろ、天井にはでかい異物があることに気づいた。

そして私は気づかないふりをした。


この女はかなりのデュナミス量に違いない。

そして、天井の『あれ』。なんとかこの女を他へ釘付けにしたい。


「まだあきらめません…。」

私は自らを拡大したりして形状をかえるも、髪の束縛はまとわりつき抜けることができない。

そのまま少し泣きそうになる演技をした。

…そして同時にこの女の背中をむき出しにした。


「そんなかわいい顔してもだめ。目を潤ませてもだめ。」

「潤んでないです。泣かないもん。」

私は幼いふりをしてできる限り思考をそぐことに努める。

自分に変身のデュナミスを行い頬を徐々に赤くしたり手を赤ん坊風にしたり工夫を凝らす。


「はぁ…調子くるうなぁ。」

女は今にも泣きそうな私を見ながらため息をする。


「あのーセンシアさーん。」

「ん?」

ルレウを囲う者達の一人がこちらに走り、声をかけてくる。

この瑠璃髪の女がセンシアだったんだ。


「背中やられてますよー。ぱっくり。」

そう言った者は懐から手鏡を取り出して、センシアの背中を映してみせた。

「え。…ええー!」


変身デュナミスによりぱっくりむき出しになった背中は、腰あたりまで露出している。

センシアは前方の布を後ろに伸ばそうとしている。

…残念ながら服装は変身の一部、布が絶対的に足りないのだ。


暫く頑張るセンシア。布は伸びない。


「…ねえ直して、でないと…」

センシアは私にやたらと近づいてきた。

時間稼ぎももう限界だ。


「ユスティア!今です!大技をきめてください!」

私はとにかく大声をあげた。


ユスティアにそんな技があるのかはわからない。

ただ、ほんの一瞬全員がユスティアに向いた。


その一瞬の間で、天井から高速落下した異物が『種族の根源』に命中し、『種族の根源』はボフっと鈍く破裂した。

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