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83.浅慮

ついて来ないミュミテを無視してペースを落とすことなく青月棟へ進む。

「今回は先走らないでください。

 敵の数が多いということはそれだけ干渉デュナミスが飛んでくるということです。」


そう、物理的な攻撃は重複してもかわせば何とかなるが、干渉に関しては攻撃範囲で視認さえすれば必中なのだ。

相手の物量による干渉デュナミスが、私達『最強の剣』の弱点でもある。


棟が見えてきた。

私は考えていた作戦を共有する。


「みなさん、棟裏へ回り込みましょう。できる限り人の少ない辺りを狙って壁を破壊します。」

「アテラって生真面目そうに見えてやることイかれてるよね。」

ユスティアから不名誉な言葉が投げられる。

気にせずに話を続ける。


「先頭はレーテ。ユスティアは私とルレウの後ろに控えた方が良いです。

 レーテに防御を集中するため、前方が視認できる程度に縦並びでいきましょう。」

歴史の本に兵法だとか陣形だとか書いてあった。

それに関してこれまで実戦に携わらなかった私は、机上のイメージだったが、今ここでならその意義を説明できよう。

これは突貫力重視の陣形、鋒矢(ほうし)の陣がよい。


棟の裏側は驚くほど防衛がいない。

しかし棟の2階の窓より人がこちらを見ている。

これは見つかったとして急ぐべきだろう。


「さぁ、レーテ、ユスティア、持てる限りの速さで突撃してください。

 壁は中央に向けて直線に割って進んでください。」

大広間はその面積から、かならず棟の中央を占有するはずだ。

従って、中央を真っすぐ貫くと行き当たるに違いない。


「おう、いっくよー!」

「今度は教官に勝つ。」


金色の脚腰を備えた二人は消えるようにして前方へ飛んだ。

この疾さは頼もしいの一言に尽きる。


ゴオォォォオン!ゴオォォォオン!ゴオォォォオン!


重機が建物を壊すかのように簡単に壁が破壊される。

同時に棟裏に立っていた青月2名を吹き飛んだ。

そして、棟周辺からざわめきが聞こえるとともに、すぐに砂煙が立ち、あたりを見えなくした。


「ここからは真っすぐです。視界に惑わされず、大広間まで突っ切れるはずです。」

私はそういうとルレウに強くしがみついた。


棟遠目に青月の者がくるのも見えたが、とにかく前進した。

これは包囲される前に『種族の根源』を破壊した方がよいだろう。


砂煙の中、息を止め、衝突してもケガを追わない程度の速さで突き進む。

視界は前方2m程度のみ。

ルレウは壁に激突することも想定して右腕を前方につきだしていた。


直線に進み破壊された壁を1,2,3,4,5,…6枚越えたところで周囲が広がる。

広がった先では喧噪に悲鳴交じりで、人がごった返していた。


ユスティアとレーテの攻撃は的確に青月を叩いていき、人数を削っている。

しかし敵主力と教官らしき人物が付近にいない。


私は必死に目をこらして探す。

…上にそれはいた。

全身金化した者とがれきを高速で公転させている者。

レーテとユスティアめがけて降下してくる。


「上です!」

私がそういうと同時にレーテが金化した者の直撃を受けて、ユスティアはがれきのかすり傷を受けた。

この攻撃はまずい。


「破壊してください!ユスティア!」

時間がない。

レーテは身体を潰されていて戦えない。

ユスティアが破壊しなければ負ける。


「ルレウ、可能な限りにチャームをばらまいてください。」

『種族の根源』は左奥。不幸にも壁を割った位置の対角にある。


私はのたうち回るレーテに変身デュナミスをかけてその長い髪の色をピンクに変える。

敵の干渉が来たらこの髪の色は変わるはずだ。


奇襲有利といえど無計画すぎた。

せめてミュミテの分裂くらいは使った方がよかった。


そう後悔がよぎると同時に、ユスティアがおびただしい量のがれきに被弾する。


そして私の視界も崩れた。

周囲の猛攻はルレウを倒し、それによって私も床に放り投げられた。

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