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65.初齢会談

7日目の朝、初齢会談が第4棟で行われた。


会場には、各色から代表と副代表の二名のみが入室できる。

また、正式な意思表明は原則として代表のみが行う、という取り決めだった。


赤誠は、私アテラが代表、ムイが副代表として参加した。


室内はだだっ広く、中央には黄昏からの要望により、机と椅子が円形に配置されている。


そこへ各色の代表が着席していった。

ハクレイ、ユスティア、カルテイン、シーケウス、ナズナ、ラニュヤ、レーテ、サミャー。

顔ぶれは、すでに見慣れた者ばかりだった。


先に到着していた者たちは、軽く自己紹介を交わしていた。

最後にレーテたちが席に着いたのを見て、私は口を開く。


「本日はお集まりいただき、ありがとうございます。


 デュナメイオンという特殊環境において、利己心を制御し、利他心との均衡を俯瞰できる方々が、この段階で一堂に会したこと。

 それ自体が、皆さんの優秀性を示していると考えています」


一呼吸置いて、続ける。


「ただし、優秀であることと、勝つことは別です。

 中齢、終齢には、我々の何倍もの経験と実践を積んだ者たちがひしめいています。


 合意書の原点である

 ・他齢からの安全保障

 ・プログラム優位を得るための制覇


 この二軸から逸れることなく、進めていただければ幸いです」


少し釘を刺す表現になったかもしれない。

だが今日は、個人としてではなく、代表としてここに立っている。

その立場に応じた振る舞いが必要だ。


「では、ここからは俺が進行しよう」


ハクレイが引き継ぐ。


「まずは情報共有だ。

 一つ目、本日の投資結果について」


彼は淡々と数字を読み上げた。


アッティラ(1/98)被投資:9720


ハクレイ(2/98)被投資:9580


ナズナ(3/98)被投資:3800


レーテ(4/98)被投資:3710


カルテイン(5/98)被投資:2940


ルレウ(6/98)被投資:1410


ユスティア(8/98)被投資:360


「他は不明だが、ユスティアの例から見て、高くても300を超えている者はいないだろう」


ここに挙げられた者の合計は約3万1000デューン。

初齢は約600人。総量60000デューンから、初期配給交換分を引いても、未投資は17000前後残っている計算になる。


「ありがとうございます、ハクレイ。


 私の推察では、未投資は約15000デューン。

 これも白刃、青月、黄昏に促すのが望ましいと考えます」


「うむ。これは本来、利のない赤誠と黒風の代表である、アテラと俺が同意した提案だ。

 異論があれば各色で対処してくれ」


ハクレイは話を続ける。


「次に、初齢の盟主についてだ。

 現在は赤誠――アッティラ・ラシュターナが務めているが、

 俺は各色対等のローテーション制を提案する」


代表たちがざわつく。


昨晩、私はハクレイと事前に会っていた。

この会談の議題、書簡への支持、そしてこのローテーション案――すべて合意済みだ。


ハクレイの腹の内は分からない。

だが、ここで私が拒否すれば、「対等性」において後れを取る。


協調性のある赤誠が賛成し、協調性に欠けるはずの黒風が提案している。

どうしても、何かを勘ぐってしまう。


案の定、視線が私に集まった。


「同意します。


 私は自分の責任意識に強い自負があります。

 同時に、盟主という役割が背負う重圧と不利益も理解しています。


 だからこそ、これまで他者にその役を負わせることを避けてきました。


 しかし盟主をローテーションすることは、不測の事態への統制――

 すなわち、安全保障にも繋がります。


 皆さんが責任を分かち合う覚悟があるのであれば、これが最善だと考えます」


あらかじめ用意していた言葉だ。

ここで民主主義を前面に出すと、

「なぜ先に提案しなかったのか」という疑念を招きかねない。


そして、この案を事前に持ち込んできたハクレイの統率力は、素直に認めざるを得なかった。


「では、サイン順で

 青月、黒風、白刃、黄昏、赤誠としよう。

 合意する者は拍手を」


私とハクレイが最初に手を叩く。

続いて青月、白刃、黄昏。


拍手の順序一つにも、各人の性格が表れていて興味深い。


「次だ。

 教育プログラムは、デュナミス開発系と競争系に分かれ、各三つある。


 今回の『投資』は競争系。

 残りは競争二回、開発三回だ。


 次のプログラム内容は前日に告知される。

 開発プログラムでは、デュナミスコピーが特定場所でのみ発動するようになるため、

 速やかに初齢会談で統制を取る必要があるだろう」


本来なら、極めて重要な情報だ。

どこから仕入れたのだろう。


「その情報源は?」

カルテインがすぐに問いかける。


「黒風には、兄弟が教官をやっている者がいる。それ以上は言えん」


……情報漏洩では?

だが罰則がない以上、これも情報戦の一部なのだろう。


「デュナミスコピーは、人生を左右する。

 計画的に合意を取れれば、希少種の量産すら可能だ。


 安易に動かないよう、この情報はできるだけ多くのメンバーに共有してくれ」


全員が頷く。

この時点で、悪名高かったハクレイの印象は大きく変わったはずだ。


「最後の議題だ。

 中齢への侵攻は、次回の競争プログラム開始時としたい。


 作戦会議日は、例年通り15日・30日。

 競争プログラムが翌日開始の場合のみ、前日に行う形でどうだ」


「最短だと、『投資』終了後、九日後ですね。会議はその前日」


「そうだ。

 ただし競争の次は原則、開発プログラムだ。

 最短になる可能性は低い。

 もっとも、この情報の真偽自体は確定していないがな」


ハクレイがそう締めくくった。


こうして、初めての初齢会談は淡々と終了した。


顔合わせの色合いが強く、積極的な反論は出なかった。

結果として、情報と戦略で一歩先を行くハクレイの独壇場となり、

彼の影響力の大きさを改めて印象づける会談となった。

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