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55.二人の子供

ルレウは私を引き離し目を見る。

そして先ほどのような泣き顔を作ることなく静かに頷いた。


「アテラはアテラだもんね。」

「弟が大好きにしていたルレウは、ぼくが尊重するルレウでもあるはずだよ。しっかりしてください。」


合意書のことが頭をよぎる。

しかし、本当にチャームの力で代表となったのならば、ルレウを頭首として認めてはいけない気がする。

今日は何もせず帰ろう。


「そろそろメンバーが来てしまうので戻ってもよいでしょうか。」

「えっと、アテラもなにかを話しに来たんでしょ?」

随分冷静になっている。これなら話せなくもないけれど時間切れだろう。

なによりルレウのことが分かっただけですごく満足してしまった。


「はい、でも今日はもっと大事なことがルレウとできたので帰ります。」

「えー、私といちゃいちゃしに来たわけじゃないでしょ?」

「こんな小さな女の子がルレウといちゃいちゃしたいって言ったらどう思う?」

私は小さな自分のまた半分くらいの身長を手で表現した。


「…いじわるだなぁ。」



バタン!


「大丈夫か、アテラ!?」

メイが入り込んでくる。


「ルレウは安全です。大丈夫。」

咄嗟にそう話す。

「時間切れだー。あとちょっとでアテラおとせたのにー。」

ルレウは意味もなく冗談を飛ばしている。


「そうか、延長する?」

「しない。」

メイの問いにルレウがそう答えた。


「ルレウ、連絡のクモくれませんか?」

「んー」

「エサちゃんとあげますから、お願いっ。」

私は柄でもなくお願いの愛嬌をぶつけた。


「…。じゃーこれ。」

ルレウは私の手にハナムグリを乗せる。


「これは…ルレウの好きな虫?」

「ううん、アテラに似てる虫。」

「ルレウ、ぼくを小さく鈍重な草食だと思ったら大間違いですよ。」

「…また変なこと言う。」

「ぼくに似ている虫はこれです。」

コオロギとバッタの中間のような大きい虫を指す。

この虫は前世でクラスの男子が最強昆虫とかいって持ってきた虫に似ている。


「ふふふ、これがアテラ…クククク」

笑いをこらえるルレウ。なめてる。


「またね、ルレウ」

「うん。」

「ルレウさえよければ、また繭になります。温かかったです。」

「うん。」

「じゃーね」

「ばいばい」


私はルレウが見えなくなるまで手を振った。

繭はトラウマになりそうな恐怖だったが、生きている心地があって、ルレウの心も落ち着くならそれでいい気がした。


「相変わらず仲いいね。プライベートルームにまで招待されて。」

「実は合意書サインの話できなくて。」

「意外だなぁ。何かあった?」

「ルレウの過去の話です。詳しくはルレウ本人からしかお伝えできないことですが。」

勢いよく言ってしまったが、かなり繊細な内容だ。

口が裂けてもみんなには離せない。


「あの子もいろいろあるんだね。」

「はい、もし何かあったらこちらを頼ってくださいと伝えました。」

「そうか。その時はリーネが黙っちゃいないかもね。」

まだみんなには話せないが、これまでかけ続けたチャームの反動は計り知れない。

その時のルレウの受ける仕打ちは誰だって心配になると思う。

リーネだって子供じゃないんだからわかってくれるはず。


「シーケウスとの話し合いはうまくいきましたか。」

「そうだなあ、やっぱり黄昏の代表はルレウ、ルレウに一任という感じだったよ。

 一息ついたらまた来るとして、白刃はどうする?」

「今から行きましょう。」

直感的に今が大事と思った。

そして行動派のムイならそういうだろう。


私はそのまま1Fのみんなのいるところに合流した。


「腹減ったから今からはむり」

…ムイの発言だった…。

まだ昼食には早い。ムイは空腹に弱いことがよーくわかった。


「そう言われてみれば、小腹がすく頃ね。

 …間食とするか、昼食とするか、この二択を誤ると身体に不可逆な影響を与えかねないのであります。」

「なんですかそれは。」

「アテラみたいに言ってみた。ほら、お腹を空かせてたくさん食べたら増えちゃうじゃん。」

チターナはお腹を叩きながらいった。

私の言い方は本当にそんな風になってますか…。


「黄昏棟の配給所にいこう。」

「アテラいなかったけど昨日のお昼寄ったよ。いろいろあった。」

メイとリーネが話す。

メイラ先生の言う通りに、各棟にそれぞれ食料があるようだ。

昼食は基本的にどこでも食べられるようになっていた。


私たちは立方体のパンやソーセージのようなもの、いろいろな野菜の入ったスープをそこで食べた。


食事を済ませると、白刃の棟へ向かう。

私は例の如くメイに担いでもらい、みんなは足腰の増強で進み始めた。


まだ通ったことのない道。

赤誠棟から黄昏棟は林道や少し獣道のような、木々に囲まれた道が多かったのに対して、黄昏棟から白刃棟は下って上る感じで途中に湿地や池があり、どちらにしても容易な道ではなかった。


白刃棟は、赤誠棟から黄昏棟の距離に比べるとやや近く感じた。

遠くに棟が見えた時、そこに見張りのような者が立っているのがわかった。


「なんだあれ、顔が二つある化け物がいるぞ…」

先頭のムイがそう言った。

隣を歩いていたリーネがあわわといった口になって歩みを遅くする。


「二つ顔の種族って何だったかなぁ。蛇族あたりの希少種だったかなぁ。」

少し前方を歩くチターナが頑張って推測している。


「希少種の双頭の蛇か。双頭で見張る門番に死角はない。様になってるねえ。」

「でも前かがみでおばあちゃんみたいにもみえるなあ。」

会話を続けるムイとチターナ。


そしてメイは震えた。

あ、これ笑いをこらえてるやつだ。


「メイ、見えてますよね?」

私はメイにそう言った。

大方普通の人、私のようにおぶられた人が二つ顔にみえたとか。


「ふふ、ちょっとみんな何に見えるか知りたくて待ってしまった。

 ちょうどアタシとアテラみたいな感じだよ。」

「メイよーそれは性格悪いぜー。」

チターナが言う。


「メイはアテラに汚染されているのです。被害者です。」

「ははは。言えてる。」

リーネが言ってメイが同調する。何でそこで私がでてくるんだ。


「あー見えてきた。確かに子供みたいだな。」

「アテラみたいな天才タイプが他にもいるのですね。」

ムイの言葉にウイが反応する。


「天才ねえ、物分かりのいい人たちだといいなぁ。」

「えっと、ミュミテは頭首がおかまみたいなことをいってました。」

チターナの発言に答える。

そういえばおかまってLGBTQが多い世界になるとどう扱われるのだろう。

男に好かれたい男なのは確実として、自称女になるのかな。それとも自称男女になるのかな。


「ミュミテって口の悪いハクレイの取り巻きか。」

「はい、私だったからよかったけれどメイなら殴っている相手です。」

「女は殴らないよアタシは。」

「失礼しました。リーネなら知性の差がありすぎてしどろもどろな相手です。あ、しどろもどろはいつものリーネでした。」

「うざ」

ついに正式に言われてしまった…。さっきの仕返しをしただけなのに。


「おーい」

ムイが大きく手を振る。

「おーい」

相手のおぶられた子供が手を振り返す。


子供は大人から降りる。

小さいがらせんの角から察するに羊のような印象、恐らく四半獣だろう。

大人の方は薄い鱗がチターナに近い。多分魚族の四半魚あたりだろう。


「同類だね。」

羊族の子供がこちらに向かって言った。恐らく私のことだろう。

「そうだねー。アテラより少し年上かな。」

チターナが言う。


「こんにちは、私はニレと言います。この子はオファ。」

「こんにちは、こちらは…」

みんなで簡単に名前を紹介し合う。

白刃棟の方々は挨拶と自己紹介ができる方だ。とても素敵なことだ。

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