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50.調整練習

昼食はムイと二人で食べた。

その席で、私は変化のデュナミスを自分に何度も重ねがけしていることを打ち明けた。


ウイはチターナ、メイ、リーネと出かけているらしい。


食後、ムイの前で実際にデュナミスをかけてみせる。

四回目あたりで息が荒くなった。


「なるほど。同じ変化を重ねて、相殺からの防御をしているのか」


「はい。特に“部分的な相殺”をされていると、調整が難しいんです」


私は脇を上げ、そこにも同じ数字が書いてあるのを見せた。


「デュナミスをコピーしたらだめかな?」


「それも考えました。でも、このデュナメイオンでは特定条件でしかコピーが発動しないよう細工があるそうです。

 それに、コピーが発動したらスコアが変わる。ウイなら気づいて教えてくれるはずです」


そう、コピーは発動していないのだろう。


「それより今日は、ハクレイへの投資を赤誠側でも進めたいです。

 合意書のせいで、ハクレイは“こちらから投資させる”以外できなくなっています。

 もしランキングが逆転したら厄介です」


「あの黒風への投資を勧めるのか。本当に感情抜きで動けるんだな……尊敬するよ」


私たちは早速棟内の赤誠チームに、投資の説得をして回った。

赤誠の者たちは、私たちの実績だけでこの話を飲もうとした。


しかし私は説明を重ねた。

投資価値のプラスボーナスについて――私たちは80デューンの投資で、初日に+64がついている。

デューン交換より効率が良い、と。


八チーム目への説明を終えたところで、話を聞いていた者が提案してきた。


「ムイさんの行動力には感服しました。

 他の色は代表を立てて連帯を強めています。

 よかったら、俺たちがムイさんを赤誠の代表として取りまとめましょうか」


意外だった。

ムイが注目されるのは分かる。だが、チームアテラがここまで評価されているとは。


「ナルタタ、代表はアテラで頼むよ。俺の動きは全部アテラが考えたことなんだ」


ムイがそう言うと、ナルタタは驚きながらも納得し、私の頭を撫でた。



部屋に戻ると、私はまた自分にデュナミスをかける。


「ムイ、朝みたいに気絶するかもしれません。そのときは気にしないでください」


「わかった」


五回連続でかけると、息が切れる。

『134』。


500回は遠いよ、メイラ先生……。


私が眠っている間に先生たちがやっていた重ねがけは、12日で720回。

メイラ先生によると、ノアは先生の半分もできないらしい。


仮に一日60回を先生・ノアで、45回・15回に分ける。

私は、デュナミス総量でもメイラ先生相当かそれ以上と言われた。

ならば、40〜50回はできてもおかしくない。


それなのに、朝から13回で、もう夕暮れが近い。

メイラ先生は、私が寝ている数時間の間に45回。

何かコツがあるのだろうか。


「なぁアテラ、こういうの作ってみたんだけど」


ムイが一枚の紙を差し出した。


合意書


下記に名を記す者は1日間、デュナミス量の共有を行うことができる。

共有は、一方のデュナミス量が減ると、その減少率分のみ他方のデュナミス量から分け与え、

全員が等しい減少率となるよう分配されることで成される。


・厶イ・マダラオ


「こんなことができるんですか」


「ああ。コストは結構かかったけど、多分アテラに分けられる量の方が多いはずだ」


私は合意書に名前を書いた。

そしてすぐ、デュナミスを試す。


「アテラの総量がどんなものか、実験だな」


1回……2回……3回……


息が切れた。


「はぁはぁ……アテラにクールダウン回復が少しあるとして、俺の共有分は二回ぶんくらい……かな」


共有により同じ状態になったムイは、息を整えてそう言った。


「ムイ、知っていたら教えてください。

 デュナミス発動の“投入コスト”って、どうやって調整するんですか」


コストにうるさそうなムイなら調整できるのでは、と思った。


「アテラ、知らねーの?

 自分の身体の部位で“できるだけ小さいところ”から発動するイメージにすれば、極小になるだろ?

 もっと繊細な調整が必要ってことか?」


「し、知りませんでした……。いつも全力でやってました」


メイラ先生……教えてくれなかったな。


「でも変化は細部まで作り込むだろ。下手に削るとバレるかもな」


「そうですね。気をつけます」


メイラ先生の45回……いや40回を基準に考えよう。

経験上、クールダウンが二時間程度だとすると、二セット。

一セット20回――つまり投入コストを1/4にできている可能性がある。


「……これでどうですか?」


私は“1/4の感覚”を探る。

人体の体積、頭8、腕8・8、胴46、脚15・15――その配分のうち、片腕片脚だけで発動するイメージ。


発動すると、白いモヤがすぐに晴れる。


「いいじゃん……あー、でも、なんか……」


体感としては、ちゃんと六歳の男の子だ。視線も変わっていない。


「あ、わかった。髪がほんの少し長いのと、目が少しだけ女の子っぽい。

 いや、目は気のせいかも」


そんな差が分かるのか。

髪はまだしも、目まで……。


私はムイに顔をチェックしてもらいながら、投入コストの調整練習を続けた。

夢中になって20回ほど繰り返したところで――案の定、気絶してしまった。

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