47.ランキング
ハクレイが去った後、すぐに黄昏の棟の敵勢も後退していった。
私とムイは、ほどよく黒風が退いた後に、黄昏棟へ歩き出した。
「ムイ、メイは本日中には取り返しましょう。」
「ああ、また作戦をたのむぜ…」
ムイは酷い落ち込み様で、ウイを背負うことも忘れてついてくる。
「ムイ、ウイを忘れています。」
「おーい。」
チターナとリーネがこちらに向かってきた。
何と説明するべきか…。
「アテラやったね!百戦百勝じゃん!」
チターナの、みたことないほどのキラキラした笑顔。
一番仕事をしたのはチターナなのに…これはつらい。
「いえ…負けました。」
「うん?」
「メイが…連れていかれました。」
「はぁ?」
急にしかめ顔になり声も変わる。…つらい。
「チターナ、アテラは悪くないんだ。終始冷静に最善を考えてやってくれたんだよ。」
ムイからのフォロー、その冷静さがダメだったんだけれど…。
私とムイはチターナとリーネに状況を説明した。
チターナは感情的な態度になりながらもなんとか黙って聞いていた。
「それで、どうするの?」
「本日中にも救出に行きます。黄昏の危機は去りましたから。」
「どうやって?」
追い詰めるような問いをかけてくるチターナ。これは相当冷静じゃないな。
「まず1つ教えてください。敵は黒風だけでしたか?」
「あ、えーと必死で見ていなかったな…。リーネは?」
「私もです…。」
うん、そうだよね。
「では、撤退してゆく敵の方向は1方向でしたか?それとも…」
「あ、同じ方向に帰っていった…と思う」
「私もそう見えました。」
やはりか。
150人、普通に考えたら黒風以外もいると見えてしまうが、ハクレイが簡単に撤退に応じてそう動いたということは、同盟のような複数の指示系統で動いたものではないのは明らかだ。
ならば黒風が人数を水増ししていたとみるのが自然。
「救出の勝機はこれから日の出までの1時間ほどにあります。」
ハクレイはやはり追い詰められていた。
彼の言う通り、私の闇討ちなどを恐れてメイを連れて行ったに過ぎない。
それならば約束を果たせばメイは帰ってくる。きっと。
「黄昏棟へいきましょう。投資を集めるんです。」
「今から投資を集めてハクレイチームを1番にすればメイは帰ってくる約束…信用できるの?」
「はい、ハクレイは貪欲で臆病なだけでまともな方でした。」
少なくとも躊躇なく人を傷つけた私達よりはまともかもしれない。
私たちは黄昏棟へ行く。
ふと太腿の内側を見てみる。『336』。
私が昨夜重ねがけをした変化枚数のままだ。
つまりハクレイではない可能性が高いということか。
黄昏の棟は合意書効果で無断で入れる。
籠城していた黄昏の人達はホールに全員集まっていたようだ。
「アテラ!もしかしてアテラが助けてくれたの?」
「ええ、条件付きで…。」
「ありがとー!」
ルレウが思いっきり抱き着いてくる。
リーネが多分私の後ろでむすっとしている。ここまでは想定内。
「ルレウ、あんまりベタベタしちゃいけないんだよ。ぼくたち付き合ってないんだから。」
「えー。」
距離感バグり組には断固として対応する。私はそう決めたのだ。
ルレウは私を離して私の目を見た。
「じゃあ、アテラを待ってる。こういうのは男の子からだよ。」
私は好かれていない。好かれていない。お願いします。好かれていない。
「ところでお願いがありまして…。」
「なーに?」
「ハクレイのチームに投資をしてほしいんです。」
「え…」
「ハクレイと撤退の合意ができたのは良かったのですが、代わりの条件として仲間のメイを連れられてしまいました。投資の確認が取れたら返すって。」
「…そっかぁ。黄昏のために迷惑をかけちゃったね。」
「こちらこそ、投資を拒む目的で闘争した部分もあったのに、そこは本末転倒なことを働いてしまいました。」
「ううん、あのまま攻められたらどのような犠牲がでたか…。アテラの判断を信じるよ。」
信じてもらえるのは嬉しいが、黄昏と戦闘したらハクレイだってただでは済まなかっただろう。
結果、無傷で最優勢を得られたのだからハクレイのが上手だったと見るしかない。
「それで、投資経過は朝にでますから日が昇るまでに何とか手続きしないと…。」
「急がないとメイが危ない?」
「はい…。」
「メイのことが大事なんだね。」
「うん、ルレウがそうなったって同じことをするよ。」
「同じかぁ…」
ルレウの顔に陰りを感じる。
全く意図していないのだけれど、ルレウの好意に付け込みながらも金を搾り取るホストのような雰囲気になっているのが悲しい。
黄昏の面々は、危機を脱して明るい雰囲気だったが、ルレウが説明を始めると、怒る者、失望する者、受け入れる者など様々に分かれた。
それでも必死に説得を続けるルレウにシーケウスが同調して何とか投資手続きにこぎつけられたようだ。
そこまでにかなり時間がかかっていた。
「アテラ、悪いが合意できたのは6チーム、そして投資は50デューンとした。」
「多大なご尽力であったと思います。本当にありがとうございます。」
シーケウスと握手する。
ルレウは体調が悪くなったのか、こちらに来ずに棟の奥へ去っていった。
勇ましさと魅力で黄昏棟のリーダー的立ち位置となっていたルレウにとっては厳しい説得だったのかもしれない。
プログラムの成績こそが今回のデュナメイオンに来た者達の主目的。
きっと今回の行動により黄昏の連帯力はそがれてしまうだろう。
「要はハクレイチームが1位になればよいだけだ。後は私達が投資したら十分かな。」
「そうですね6チーム50デューンと私達の80デューン、あとは初期に略奪されたチームの分で400デューンはいきそうですね。」
チターナの言う通り、初日で400デューンを他色から集めるのは至難だ。
戦闘で打ち負かすにしても4チーム分、到底他のどこかができる芸当ではない。
「さぁ、できることはやった。黒風棟へなるべく早く向かおうか。」
ムイがそういうとみんな足早に黄昏棟を出る。
─ランキングが更新されました
5分程歩いた時、どこからか、放送のような声が聞こえた。
周りは明るいがまだ日は登っていない。
「ランキング?どこでみれるのでしょうか。」
遠くに何か出るのだろうか。
「頭の上だ」
そう言ったムイの頭の上を見ると何やら文字が浮かんでいる。
厶イ・マダラオ 被投資スコア 220(+220)デューン 投資スコア 投資価値+64 層順位 3/98
周りをみると、自分含め全員同じ表示がされている。
「98チーム中3位ということね。220デューンで3位ならば、ハクレイチームの1位は期待できる。」
「昨日赤誠で聞いた感じ、赤誠に220も獲得した奴はいなさそうだったな。後は白刃と青月か」
チターナとムイが話している。
ウイはいまだに熟睡中だ。リーネはあくびをしている。
「投資価値というのが投資先の価値が上がった分でしょうか。640デューンで+64みたいな計算なんでしょうか。」
「何チームかの情報を得られればわかりそうだね。」
チターナが答える。ただの加算方式や比例方式ならともかく、指数関数的に価値が上がる場合1度とられた1位を取り返せる可能性もある。
「ハクレイチームには聞くとして…そうだムイ、ウイを起こしておきましょう。ハクレイのデューンを聞き出す時に打てる手が多い方がよいです。」
そう、本音暴露デュナミスを使えるリーネは切り札にしてウイ観測あたりの範囲で駆け引きしたほうが今後の自由が利く。
「起きるかな。」
ムイは背負っているウイをつねる。ウイは眉をしかめる。
「どう?反応ある?」
「あ、眉が動きました。」
「これはいけるな。」
ムイはウイを一旦地に横たわらせ、耳に吐息を吹きかけて何かつぶやいた。
「ひえぁっ!?」
ウイは急に飛び起きた。
「おおー、何を言ったの?」
チターナがムイに聞く。
「ないしょ。」
朝方になったとはいえ、あれだけ無反応だったウイが飛び起きた。
今晩の男部屋で、なにをしたか聞いてみよう。




