45.月夜の企て
身体の異変で目が覚める。
まだ暗い。身体がもぞもぞする。
すぐに違和感の正体に気づいた。
ルレウがつけたクモが反応している。
それに集中してみると『助けて』の感じがする。
「ムイ、ウイ、起きてくれますか。」
「んんー」
ムイは動いたがウイは微動だにしない。
「ムイ、ウイ」
「あーい…」
二人の身体をゆすると、ムイは返事をして起きそうな動きだ。
ウイは死んだように脱力していて絶望的だった。
そのまま女性部屋へ行く。
「チターナ、メイ、リーネ、起きて。」
3人とも寝ていたが、私の声で少し動く。
「チターナ、黄昏が攻撃されてますよ。」
「んー、なにー?」
チターナをゆすると、チターナは眠そうにだが喋った。
「黄昏が攻撃されています。ルレウのクモが反応しています。」
「…」
「え、やば…」
チターナはゆっくりと起き上がると、目をこすりながらこちらを向いた。
「暗…、今何時?…奇襲?」
「はい、恐らく黒風の奇襲と思います。」
「みんな起きなきゃ。」
チターナはすぐにメイを起こそうとする。
私はそれを見てリーネを起こしにかかる。
「リーネ、起きて。」
「むにゃだ。」
身体をゆすって起こそうとする。
「リーネ、黒風がくるよ、リーネ」
「…だっこ。」
こいつは寝起き甘えたくなるタイプか。
残念ながら私の力では抱っこはできないのでチターナにお願いした。
「チターナお願い、ぼくは男性部屋の出発の準備をしておくから。」
「わかった。リーネしょうがないやつだなあ。」
数分でウイ除く全員が起きた。
ムイが言うにはウイは死ぬくらいの衝撃がないと絶対におきないらしい。
仕方なくムイがウイを背負い、赤誠棟からでて黄昏棟へ向かう。
「意外と明るいじゃん。私化粧してないんだよねえ。」
「チターナは化粧しなくても肌綺麗だよ。綺麗じゃない上に化粧しないアタシが隣にいたらOKだね。」
「それは助かる。あ、リーネがいるからだめだめ」
「リーネと比べたらみんな化粧がいるなぁ」
チターナとメイの会話。この2人は女子だなぁ。
「…アテラには負ける。」
「アテラは視界から外してくれー。あぁ肌質よくなるデュナミスほしーなー」
そのデュナミスあげたいけれど、今はまだあげられない…。
そういえば、電気のない外の世界は殆ど経験していなかったな。
私はメイにおぶられながら、空を見上げる。
外は思いの他しっかりと真っ暗だったが、星が異常に明るい。
黒のインクで大きいパレットいっぱいにして、そこにラメパウダーをちりばめたような星空。
この星空のどこかに、私のもといた世界があるのだろうかと想像を寄せる。
ふと気づいた、月がある。
月があるということは潮汐やそれに関連する何かがあるということ。今満月であることも何かあるのだろうか。
「アテラ、作戦をよろしく」
そうだった。作戦を考えなくては。
ルレウのクモの『助けて』は自分ではどうにもならない危機的状況、つまり黒風が大群で奇襲をしてきたと想定できる。
流石にいままの力技での打破は厳しい。となると交渉の場を作り出すことが重要かもしれない。
今あるデュナミスはムイの増強、メイの増強と引斥、リーネの干渉、チターナの反射。
これらで効果的にやれることとしたら…。
4番棟を通る。黄昏まであと半分。大方の考えはまとまった。
「みなさん大丈夫です。今回も勝ちます。」
取り急ぎ士気の維持のために強気に言っておく。
「頼もしいねえ。惚れ惚れするよ。」
「相手は何人かわかるのか?」
「今回はウイが寝ていて敵の数をあらかじめ知ることができないのが厳しいな。」
盲信気味のチターナ、そしてムイとメイが話している。
数よりも黒風のリーダーと思われるハクレイをいかに早く見つけるかだろう。
銀色長髪の男といっていたな。
「相手の人数はわかりませんが、気にしません。
ハクレイを見つけること、これが第一関門となります。」
私はみんなにそう話す。これに関してはまだ決定的な手がない。そして目視の有能なメイは恐らく…
「私は夜目が効かない。すまない。」
「はい、予想はしていました。そこでリーネ、チターナに頼みがあります。」
「なーに?」
「チターナの反射およびリーネの干渉により、物理と精神両面の防御をできる限り意識してハクレイをさがしてもらえますか。」
「黒風の大群に忍び込めということかな。」
チターナに問われる。
忍び込むのは考えたが、一度やってしまったのと多勢のデュナミスに感知系があるかもしれないから寧ろ危険だろう。
「忍び込む必要はありません。メイの増強で脚の許す限り走り回るんです。
もちろん、陽動としてメイとムイが黄昏棟周辺をランダムに投石などをします。
もし見つけたら、上手に反射をかけてこちら方向へ吹き飛ばしてください。
ハクレイは防御も万全でしょうから、それを貫くだけのデュナミスを集中しなければなりません。
これが第二関門です。」
「わかった。もし見つけられなかったら?」
「素直に囚われてください。戦うよりもその方が安全と思います。」
「アテラ私達をおとりにしようとしてる…。」
チターナが聞くから正直に答えたのにリーネが面倒なことを言う。それなら…。
「リーネが囚われることは私にとっての敗北です。絶対にないですが万が一の時は私も降参してリーネの自由のために自分をささげたいと思います。」
「アテラ言うねえ。」「えらい。」
暗いけれどチターナとメイはニヤついているように見える。
「ハクレイが反射でこちらにこれば間違いなく交渉は望めます。
そこから降伏か撤退するよう指示させるところまでが第三関門ですが
これは私が保証します。」
「すげえよ軍師アテラさん、ばっちり決めてやろうぜ。」
ムイの激励のような言葉がくる。
「今回は血生臭いアイデアじゃなくてよかったね。」
「はい、アテラなら全員殲滅とか言い出すと思っていました。」
チターナとリーネは私を何だと思っているんだ。
「反射でハクレイをこちらに送ることが成功しても、チターナとリーネは逃げ回ってください。
一定の交渉時間が必要なため、お願いします。」
「わかった。がんばってみるよ。」
「ありがとう。あと最後に…」
私のささやかな楽しみである作戦名を発表しよう。
「この作戦名、名付けてメイ・ゲットです。」
「はいはい。」




