40.責任と確認
「そんな、謝ったらだめですよ。私は赦します。」
自己嫌悪に駆られていたのは自分の方だ。それなのにチターナに罪をなすりつけるような格好の自分を許せない。だから私は即座にそう言った。
主従リンクが解けたかは分からない。
しかし、ポリコレスコア次第で主従リンクは他の仲間にもはられただろう。
「私もチターナは悪くないと思ってるよ。」
「チターナは反射でみんなを守ってくれたのですから謝る必要はありませんよ。」
「…私も。あの後周囲に幻聴を浴びせてましたから…。」
メイ、ウイ、リーネが赦すような言葉を言う。
これは落着してとみて良いのかな。
主従リンクのような対等性を損なう状態は避けてほしい。
「チターナ、お姫様抱っこされてる私が『赦します』なんて恥ずかしいじゃないですか。総責任者は私なのだから私のせいでいいんです。」
「メイ、アテラかーして。」
「どーぞ」
チターナはメイから私を抱き上げる。嫌な予感がする。
「ちゅーさせて。」
私はほっぺにキスしようとする。
こいつ、励ますつもりだっただけなのに、全然落ち込んでない!
距離感おかしいこの人!
「チターナさん、アテラにちゅーはだめです。」
リーネがそういうと、チターナはそれをやめた。
「あ、主従リンクつかったなー。」
チターナがそう言った。
…リーネはチターナを赦してない??
「ちゅーは、だめです。」
「はーい。リーネ様の仰せのままに。」
「みなさん仲のよろしいことで。」
…情報量が多い。
ウイは皮肉を言っていて、リーネは私とチターナの距離が近くなるのが嫌で、チターナはそれを私に知らせたくて…こういうこと?
チターナが私に絡まなければよいのに…
だめだ、頭がくらくらする。
「総責任者殿が困ってる、はははは。」
メイが笑う。
メイは分かっていっているのか、今ドロドロしだしてるのに。リーネに嫉妬されないようにメイがリーネにも抱っことかしてあげればよいのに。
「アテラはさ、シーソー板の事故を見に来る途中泣いてたでしょ。」
「泣いてないです。」
「涙の跡が見えたんだよ。そうやって見せないようにするのも全部みんなには伝わったの。責任はそれで区切り。だから後は私だけだったんだよ。」
「チターナは何でもお見通しだな。」
そうか。メイは私が泣きじゃくるのみてたからそっちのことを言っていたか…。
でもチターナ嫌い。
「一応朗報をお伝えしておきます。恐らくルレウさんらしいチームが斜め後ろ方向をついてきています。少なくとも先程のフワッと触角はいるでしょう」
咄嗟の朗報。これで気兼ねなく黄昏に帰ることができる。
無事に黄昏の棟に着くと、ムイや赤誠の者が既に来ていた。
ムイに近づくとこちらに気づく。
他の者たちは後ずさる。恐らく私とメイの返り血だろう。
「おい、やばい音してたが大丈夫なのか?血も…誰か死んでないか?」
「大丈夫です誰も死んでいません。後やばい音はこちらがやりました。その話は後で。」
今はムイよりも黄昏へ報告するのが先だろう。
シーケウスを探す。
棟の可能性が高いため、例のごとく私一人で行くことになった。
シーケウスは棟内の大広間にいると聞き、そこに向かう。
黄昏棟の形状は赤誠棟に似ているようで少し違う。
赤誠の大広間は入って曲がってすぐだったが、黄昏の大広間は入って直進だった。
「おおアテラ殿、その血は…いや、仲間解放の件はありがとう。
無事で何よりだが、ルレウさんの状況は掴めましたかな?」
シーケウスは大広間に入った私の顔をみるやいなや話しかけてきた。
血においては気になるだろうがまだ話さない。
「ルレウは無事です。訳あって先にこなければならなかったのですが、無事を確認しました。きっと戻ってきます。」
無事というのは嘘かもしれない。しかし今はこう言うのが最善と思った。
「安否確認だけでも感謝する。クモの反応がなく黒風棟に到着しているであろう時刻を超えてかなり経つから迷っていた。」
反応がない…?ルレウは私だけに『助けて』を飛ばしたのか?
「そうでしたか。」
とにかくこれ以上は下手なことを言わない。
その後もしばらく情報交換する。
シーケウスが言うには私チーム含む8チーム全員の合意書記名が確認できたそうだ。
赤誠が来ていたように、すでに投資交換を終えたチームも多いらしい。
そして、話を終えチームの元へ戻るとすぐに、ウイがルレウを発見した。
「アテラ、ルレウさんらしきチームがこちらへ向かってきています。先程と同じスコアです。」
ポリコレスコアのデュナミスで特定できてしまうのも便利だ。ウイは他の数値も見えているのだろうか。
「参考に、いくつのなのですか?他のポリコレ値も見えるのでしょうか。」
「-155、-99、-45、-43、-19です。ルレウさんが-155ということがわかっています。他のポリコレ値はコストの都合で見ていません。」
見ることはできる、そういう意味に取れる。気になることを後で色々調べてもらおう。
私達はルレウの位置がわかったところで黄昏の棟の前から歩を進める。
そして林の中、まだ棟が見える範囲にてルレウ達を見つけた。
「ルレウ!」
私は手を振る。
「アテラ!」
ルレウはメイのように高速で走ってくる。
その姿は、戦闘を行った後であるかのように汚れとキズがところどころにあった。




