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38.リーネバースト

「しゅじゅ……? 何を言ってるんだ?」


メイが首を傾げた。


「主従リンクを張られている、と言いたいのでしょうか。

 それに加えて――口止めされていて喋れない、と」


そう予想を述べてみる。


「全員が主従リンク……だとしたら尋常じゃないな」


黒風に何が起きている?

そもそも、主従リンクで“長時間の命令維持”はできないと思っていた。


「ねえチターナ。主従リンクの命令って、どれくらい持つの?」


「経験は少ないけど、一時的のはず。

 いまは“演技”の可能性も疑ってるところだよ」


やはりそうだ。

主従リンクとは無関係に、演技で誤魔化している可能性が高い。


リーネが不意に手をあげる。


「えと、デュナミスで言わされてたみたいです。

 私の干渉で相殺が起きました」


「やるじゃん、リーネ」


――そういうことか。

下手な嘘で誤魔化したのは、相手の知恵が足りないからか。

それとも、こちらの力量を測っているのか。


メイが蛇女を見下ろす。


「じゃあ聞くよ。黒風は結託してるの?」


「……」


返事はない。

この女は伝令役、あるいは“喋れないようにされている”だけかもしれない。


「わからせるか」


メイが蛇女の頬を鷲掴みにする。

……完全に私たちが悪役だ。


止めるべきか。だが情報がないと、ルレウのチームの危険度が読めない。

背中のクモが大人しいうちは大丈夫なはず――そう信じたいけれど…。


「待って、メイさん」


止めたのはリーネだった。


そして次の瞬間、蛇女の口がぎこちなく動き出す。


「ぐグ……ハクレイ……ヲ……ヒットウ……ト……スル……サン……チーム……」


カタコトの自白。

言い終えた蛇女は息を乱し、リーネも同じように肩で呼吸していた。


「リーネ、デュナミス使いすぎだね。ありがとう」


チターナが短くねぎらう。

つまり、リーネが“言わせた”のか。


……本音を吐かせる干渉。

私が恐れていた類の、凶悪デュナミスだ。

まさか、味方にいるなんて。


「三チームか。『ハクレイ』って人名か?」


「この蛇女を通じて、こっちの位置と状況が伝わったはず。

 残り二チームも連携して来ると見た方がいいね」


「はい、軍師様の次の手をききたいな。」


メイ、チターナ、リーネ。

そして私の方へ会話のボールが移っていく。


ルレウが安全と言えない以上、戻る選択肢はない。

ならば――残り二チームの撃破を前提に組み立てるしかない。


私は蛇女たちに聞かれない距離までウイに近づき服をつつく。


「む、何ですか?」


(ウイの観測って、どれくらい届く? 1kmくらい?)


(厳しいですね。400m程度までです)


やはり。

例えば敵に悟られない距離から何度も狙撃、というのは難しい距離。


それに、ここで作戦を口にするのも危険だ。

ルレウのような遠隔連絡を、敵が持っていない保証はない。


私は話を切り替える。


「チターナ・ボムを受けた黒風のみなさんを、散らせますか?」


「私がやろう。みんなは作戦会議してて」


メイの即答。

一人で片付ける気だ。頼もしい限り。


「あ、メイ。ひとつだけ」


「なーに?」


「どこまで高く飛べますか?」


「瞬発のデュナミスが尽きるまでで、500mくらい」


十分すぎる高さ。

……メイは何でもできちゃうんだなぁ。


メイが黒風の負傷者を“だんご”みたいに集めて運び始める。

あの腕力で、あの速度で、文句も言わずに。


非力なフリをする人もいる。疲れるから手伝ってと言う人もいる。

でも、メイの男気は性別を超えている。私も見習わないと。


さて、話を進めよう。


「決まりました」


「おお、早いね。黒アテラのお告げを聞こうじゃないか」


黒アテラ……。


「今回は、リーネ・バーストです」


「うん、名前はいいから、早く」


チターナは大事な時は切り替るタイプ。

この状況でふざける空気じゃない、といわんとしている。


しかし私はブレない。

なぜなら、この問答の間にもアドリブでアイデアを構築しているのだ。


「まずメイが、偽証増強か引斥で高く飛んで、敵を一望します」


「見つけられなかったら?」


「そこで終わりです。でも見つかります」


根拠はある。鳥族は目がいい――本で読んだ。


「敵がこちらを向いているかどうかで、残り二チームかを判断します」


「なるほど」


「次に、敵の近くに“むき出しの金属”を探します。

 公園の遊具みたいなもの。建物の角を破壊してもいい」


「それで?」


「その金属に、こちらの金属をぶつける。

とにかく“最大の衝突音”を作ることが決定打になります」


「……アテラ、分かりにくい。もっと丁寧に」


チターナが分からないなら、他も分からない。順に噛み砕いていく。


「金属同士の衝突音を、どれだけ大きくできるか。

 推進の力はメイの引斥で足ります。

 でも“回転”が必要です。そこでチターナです」


「私?」


「敵地の手前で反射を使って、金属に回転を入れてください」


チターナが眉を上げる。


「そうか。大音量で相手を無効化……

…さすがに無効化までは、できなそうじゃない?」


上げた眉をひそめてこちらを見た。


……我がチーム裏ボス、チターナの想像力もここまでか。


「ここから先は、リーネさん」


「へ?」


「ほら、軍師様の意を汲んで」


「うざ……あ、幻聴?」


いま、うざって言った…

ま、まあいっか…。


「正解です。幻聴で“音をリピート”させます。

 頭の中で鳴り続ける音に意識を奪えば、集中できない。

 奇襲なら、その間まともにデュナミスも発動できないはずです」


「よくそんなえぐいこと、毎回思いつくね。

 でも人数が多かったら無理じゃない?」


私はリーネを見る。


「……リーネ。できるね?」


「三人……いや四人までなら、かけ続けられます」


あ、だめなのか。

だがそんな時のための、無茶振り案があるのだ。


「そこで、さっきの“偽主従”を逆に利用します。

 干渉で操られている者は、こちらが幻聴をかける必要がありません。

 ウイが観測で優先順位をつけて、干渉を受けていない上位三人を無効化する」


「なるほど。トップが落ちれば崩れる可能性は高い」


「最後は、チターナ・ボムを“威力調整”して順に落とします」


「結局、私頼みじゃん」


そう。結局そこに戻る。

ただ今回は敵が多い。撤退も視野に入れないと。


メイが黒風を散らし終えて戻った。

内容を端折って説明すると、メイは即座に同意して索敵をはじめた。


ウイには、近くの公園のシーソーから“長板だけ”を抜き取ってもらう。

腕力増強があるなら可能だ。


チターナには、私が拾った木枝を槍のように投げ、

それを反射で回転に変える練習をさせる。


この調子なら15分もあれば準備が整う。




――そのとき。


背中のクモが反応した。


感覚だが、これは間違いなく「たすけて」だ。

ルレウが危ない。


同時に、メイの声。


「いたぞ。十人くらい、こっちを向いてる」


時間がない。


「まず、チターナ、ムイ、リーネ。隠密で敵方向へ。急いでください。」


増強を受けた三人が静かに、しかし速く消える。

本当はもっと詰めたい。シミュレートしたい。

でも今は勘だ。


三人が着くまで――雑に一分。


「メイ、それじゃお願いします」


メイはシーソーの長板を担ぐと後方へ走った。

次の瞬間、高く飛ぶ。


――高い。想像以上だ。


遠く小さなメイが、頭から落ちるように降下し、

そこから体躯を起こして滑空へ変える。


翼はない。羽毛だけ。

それでも大きな弧を描き、華麗に飛ぶ。


速度を上げながら、強化された右腕を振りかぶり、

自分自身をウィンドミルのように一回転させた勢いで――


シーソー板を槍のように投げた。


……かっこいい。


あまりに完璧な動きで、初速だけでも十分すぎる。

そこへ引斥が重なり、槍は一瞬で目視できなくなった。


そんな速さなら引斥で“コントロール”を頼むべきだった…


チターナ・ボムの悪い予感がフラッシュバックする。


この速度で人に当たったら――終わりだ。


私の指示が悪い。

もしそこに反射で回転まで入ったらどれだけ――


ガアアーーーーン!!


地響き。轟音。

反射的に耳を塞ぐ。奥が痛い。


音の遅れで、突風のような衝撃波が来た。


私は浮かされ、転んだ。


う…そ……風圧だけで、これ……。


着弾側は、鼓膜も、いや内臓まで、きっと――。


私の頭の中は、真っ白になった。

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