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20.ベロ出し法

「デュナミス・コアを知りたいと言っていたな。

 調べる方法はいくつかあるよ。30年ほど前の話だから、ノアはもう忘れているかな」


「ほ、本当ですか」


ノアテラは、はっきり嬉しそうな顔をした。

私も、その気持ちに引きずられるように、期待の笑みを浮かべる。


「では……『ベロ出し法』で詰めていこうか。

 まず、前方斜め上を向いて、舌を出してごらん」


……ベロ出し法。

子供向けにもほどがあるネーミングだ。


私は言われた通り、舌を出した。


「よし。

 次に、舌を自在に回したり、捻ったり、縮めたり、畳んだり、伸ばしたり……

 舌でできる限りの動きを試して、“自由”を表現してみて」


私は素直に舌を動かす。


前世の私は、舌だけは異様に器用だった。

百八十度ひっくり返すことも、蛇のようにZ字に折ることも、筒状に丸めることもできた。


……が、今の身体では思うように動かない。


「わあ……器用……」


それでも、ノアテラの感嘆の声が聞こえる。

……やりすぎたかもしれない。


"気持ち悪い"と言われないだけ、正常範囲だと思うことにする。


「ふむ。

 では、その動きを続けながら、

 頭の中で『檻から放たれて、自我を持った舌』をイメージしてみて」


……檻から放たれた舌。

ペットか何かだろうか。


私は、前世で"気持ち悪い"と言われ続けた自分の舌が、

キモいついでにそう言った連中を襲うイメージをした。


「ひっ……」


小さく、ノアテラが息をのむ声が聞こえる。


……今、私の舌はどうなっているんだろう。


数分は経っただろうか。

メイラは、何も言わない。


舌が疲れてきて、口角から下が少しひんやりする。

多分、よだれも垂れている。


……でも中身が一歳なら、自然だ。うん。


「よし、やめていい」


私は舌をしまった。

思った以上に、口の周りがよだれだらけだった。


……恥ずかしい。


「アテラ、顔が赤くなっていますが。

 これはどのようなデュナミスですか?」


「いや、赤いのは恥ずかしかっただけじゃないかな。

 多分、舌をずっと見られて」


「あら、かわいい」


……ふざけるな。

はやく結果を教えてください。


「9割方、包含属と見ている。

 法定属なら、もう少し秩序だった舌の動きだったはずだ。

 異形なら偽証、包含……

 だが、あそこまで巨大化するなら、偽証属は考えにくい」


……巨大化?


自分では、そんな感覚は一切なかった。

せいぜい、折ったり丸めたりしていた程度だと思うのだが。


「包含属は、その後の特定が難しいな」


「ええ。

 危害を加えないように、慎重に探らないと」


……危害?

私、そんな危険人物なの?


「あてら、だいじょうぶ」


私は拙い一言で、そう自己弁護した。


「アテラ、大丈夫じゃないんだ。残念だが」


……メイラめ。


「アテラは話すのが苦手ですが、

 説明すれば理解できます。

 ぜひ、理由を教えてあげてください」


「ノア。お前が説明しろ」


「……はい」


……結局荒っぽい先生だったなあ。残念なことに。


「アテラ。

 私たちが使うデュナミスは『三目』といって、三つに分かれるの」


「うん」


「オルト三属、パラ三属、メタ三属。

 オルトは直接的な力、

 パラは間接的な力、

 メタは力を俯瞰して活用するイメージね」


「うん」


一歳児に分かるはずのない説明だが、

ノアテラは私がこういう時、

多少なりとも難語を理解することを知っている。


「……概念としては少し違うが、まあ良しとしよう」


メイラが口を挟む。


「私の変身はメタ。

 アテラのデュナミス・コアもメタ。

 その中でも、

 偽証属、包含属、法定属があるの」


「うん。わかったー」


「……本当に分かっているのか?」


……メイラうるさいなあ。



「私の使うような偽証属なら、

 相手にかけても危害が少ないし、解除もできる。


 法定属は、小さな法則を作るタイプで、

 すぐに効果は出なくても、何らかの形で影響が伝わる。


 でも、包含属は違うの。

 かけた相手やアテラ自身が“元に戻らない”可能性がある。

 だから危ないのよ」


「うん。わかったー」


……これは、本当によく分かった。


「猫族四半獣の一歳が理解していたら、まさに天才だな」


はい、天才ですみません。



「アテラ。

 包含属の強い使い手には、

 相手の身体と融合する者や、

 五感や臓器を共有してしまう者がいるの。


 いずれも、元に戻らなかったと言われているわ」


……こわ。


「だから、その時が来るまで、

 デュナミス・コアは使わないでいようね」


「うん。わかったー」


……正直、かなり残念だ。


「さて。

 推薦要素はどうするかな。

 デュナミス・コアを開示できないとなると、

 その『天才』を前面に出すしかない。


 まぁ頭脳を売りにして、

 猛勉強でもさせてペーパーテストだなぁ」


メイラは、けだるそうに言った。


……そっちがその態度なら、

ペーパーテスト上等だ。


受けて立とうじゃないか。

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