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18.短い旅

「着いたよ。ミアウォート」


「……え、着いた?」


思わず、少し素が出てしまった。


何かをかけられた感覚もなく、

加速するGがかかるわけでもない。

気づいたら、もう到着している。


こんなふうに、

自覚のないまま転送のデュナミスにかかるのか。

……恐ろしい。


ミアウォートの町は、一言で言えば大きい。


転移した場所は町の中だった。

高所ではないため遠くまでは見えないが、

四方八方、地平線まで町が続いているように感じる。


ズクマティのような集約感はない。

その代わり建築様式が凝っていて、

これはこれで高度に発展している街だと分かる。


「先生の家は、あそこ。

 デュナトスになるなら、アテラは私の言ったことに必ず合わせてね。わかった?」


「わかったー」


いつも説明過多なノアテラにしては、

やけに強引な言い方だ。


私は、念のためもう一度自分にデュナミスをかける。


この一か月、ずっと夢見ていたミアウォート。

思っていたより、ずっと近かった。


転移先をパスワードのように指定できるということは、

こうした縦横無尽な移動が日常なのだろう。


輸送や地政学の感覚は、

私の知っている常識では、もう通用しない。


……はあ。

この世界の仕組み、全部知りたい。

はやく"しゃべるデュナミス"が手に入らないと私、急成長しちゃうよ…。



「おうち、いっぱいあるねー」


「うんうん。ここはホムゾフの隣国、エンティミア。

 その中で一番大きな都市だよ。

 ホムゾフは、私とアテラがいた町の国なの」


知っている。

地理の本で頭に入れていた内容だ。


「おばあちゃん、なんでも知ってる。すごい」


「すごいでしょう。アテラには、なんでもお話しするよ」


……本当に、何でも聞きたい。


今は正午ごろだろうか。

出発してから、半日ほどで『先生』のもとへ着いてしまった。


先生の家は、

広い庭や立派な門を持つ周囲の家々とは対照的に、

ほこらのような小さな入口で、地下へと続いていた。


私はノアテラと一緒に馬車を降り、

荷物はそのままにして、本を一冊だけ持って中へ入る。


「ノアテラ・ラシュターナです。

 メイラ先生は、おられますか」


「時間より15分早い。出直してこい」


すぐに返事があった。

……出直してこいって。パワハラ系の先生かな。



「ここで本でも読んで待とうね」


「うん」


私は持ってきた本を開く。

『ポリティカル・コレクトネス・スコア制度Ⅱ

 スコア算定法』


適当にページをめくる。


――スコア算定は、

 総括的に実施される『センスス』、

 調査員が個別にデュナミスを用いて調査する『ペルソニ』、

 人々の主観認識による『ポリコレチェック』によって行われる。


『センスス』は、星系の終わり日に

デューナメース調査団が全世界を対象に実施する。


『ペルソニ』は、センススで不明瞭な個体を直接調査する。


『ポリコレチェック』は、

上記二つの結果をヴェルウィザーラ冴河から取り出し、

直視した相手の情報を加えて算出する。


ヴェルウィザーラ冴河の情報は、

ポリコレチェックによって更新される場合もあるが、

不審なスコア変動は自動遮断される。


……用語が多くて読みづらい。

要するに、“ちゃんと調査してますよ”ということだろう。


別のページを開く。



――ポリコレスコアは

【種族】【年齢】【性別】【身体機能】【精神】【デュナミス】【特殊要素】

の七要素から形成される。


以下は刊行時点の算定表――


【種族】

(略)


【年齢】

0歳 +450

1歳 +400

2歳 +300

3~4歳 +200

5~6歳 +150

7~9歳 +100

10~12歳 +50

13~15歳 +20

16~18歳 +10

19~77歳 +0

78歳~(以下略)


【特殊要素】

・親権者には、子のポリコレスコアの1/4が加算される

・各要素には『マイノリティボーナス』が存在する


……そうか。

私がここまで順調に次へ進めたのは、

この『親権者加算』のおかげだ。


このページは重要だ。

意図せぬ主従リンクを避けるためにも、

暗記――最低でも付箋は必須だろう。


「アテラ、そろそろ時間だよ」


……いけない。

すっかり読み込んでしまっていた。


いよいよ先生との対面だ。

――心を読むのだけは、なしでお願いしたいな。

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