106.理想の姉
翌朝、番号に対応する棟がアナウンスされた。
18番は終齢青月棟で、9番の終齢黒風棟となったメイとルレウが経路上となるため送ってくれることになった。
「泣いても笑ってもこれで最後だね。
今までのアテラとメイの成績なら、すぐに降参しても希望通りの就職ができそう。」
ルレウがそう切り出す。
「それは思うけれど、アタシはできないな。正々堂々一緒に行けるところまで行こう。」
対するメイの答えは、メイらしいものだった。
「アテラは勝算があるんだよね?なかったらすぐに降参しなきゃダメだよ?」
「はい、セシザを倒して綺麗に終わらせて見せますよ。」
いくつかの算段はついている。
私の見立てはこの前のセシザが本気とするならやや強気に五分五分といったところ。
ルレウは『攻城戦』の惨劇に巻き込まれた当事者。きっと不安だろうから、なおさら弱音は吐けないと思った。
「アテラ、終わったらさ…」
「なんでしょうか。」
「アテラの故郷に遊びにいってもいい?」
「もちろん。家族に義理のお姉ちゃんがいますよ。」
「えー。私の弟にはなってくれないのに。」
どういう意味…あ、そうか。
『弟にならない』ルレウの繭にくるまれた時に私が言ったことだった。
「ルレウの弟さんの代わりじゃないなら大丈夫です。」
「じゃーそうする。」
あれからのルレウの行動から、私は彼女を信用することにした。
「わかりました。これで私の姉は二人になりますね。」
そういうとルレウは満足げに笑顔を浮かべた。
「いいね。アテラは危なっかしいからお姉さんがたくさんいた方がいい。」
たくさんって…メイが変なことを言いだした。
「それならメイもお姉ちゃんになってください。」
メイ、一番お姉ちゃんとして理想的なのはメイだよ。
何だかおままごとみたいだなぁ。
「アタシは遠慮しておくよ。もう弟いるし。」
「…そうですか。振られました。」
「よしよし」
メイに頭を撫でられる。
本当は妹って分かっているはずなのに、メイにもルレウにも男扱いされている私…。
「アテラはメイみたいなかっこいい女の人が好きだったりする?」
「はい。恋愛ではなく、人間的に好きです。」
「そっか。それなら私がしっかりしなきゃだね。」
ルレウは焼きもち焼き。みんな変わらないなぁ。
そんな話をしながらあっという間に終齢青月棟につく。
私は二人に礼をいうと棟の中に入った。
大広間まではとても分かりやすく案内表示がされていた。
私は大広間に入って横で座っているセシザを発見する。
「おはようございます。今日はよろしくお願いします。」
口ではそう言いながら心の中では『お前を倒す。絶対に。』と意気込んだ。
「よく来てくれた。お前は20秒あれば十分だ。そして俺は前に進む。」
セシザから改めての宣戦布告が来る。
相変わらずの美しい顔から、20秒という具体的かつ舐めた発言。
私は、こいつの吠え面を絶対に見たいというモチベーションが沸々と全身にたぎるのを感じた。
8時55分になると教官からの注意事項の繰り返しがなされた。
私は情報交換していた同じ18番をもつ初齢の有力者達を確認する。
カルテイン、ラニュヤ、イマルス、ナルタタ、ルンシャク、ニレ、エルイーナ他…そして同盟外でミュミテ。
ラニュヤの観測により敵のデュナミス残量や、敵にかかっているデュナミス重複量が確認できる。
そしてニレによる干渉属の幻聴は、みんなにくっつけておいたカメムシを通じて情報を流せる。
幻聴は、バックアップとして能力は劣るも同様のことができるエルイーナもいる。
情報戦にぬかりはない。
今回こちらには数の暴力がある。レーテ以上の最終兵器もある。
さらに僥倖だったのは、中齢黄昏の有力者であるクェルティナが同じ棟にいることだ。
私は中齢同盟に絡めて彼女と簡易的ではあるが共闘を約束できた。
これで他勢力の邪魔も受けにくい。
『やれる。セシザをこの1回目でしとめる。
そして安全なプログラムとして私達は三層制覇を達成する。』
その決意を繰り返し心で唱えていると、教官の合図がされた。
「…それでは開始です。」




