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今ここであなたと出会えたことは 三つ星編  作者: 安田 木の葉
第一章
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003 詩帆の決意

2019年4月 レコード会社設立


会社名「Small Gate」

 始まりは小さな門から

 しかしその先にすべてがある。


理念 ー 才能を死なせない ー


このコンセプトの下、ダンス&ボーカルグループを結成


〈メンバー決定に至るまで〉

2020年1月1日

オーディションの詳細をHPに公開

及び養成所等に告知

エントリー期間 : 2020年2月21日〜3月20日


第一次選考 : 書類審査

第二次選考 : オンライン面接

第三次選考 : 個人面接及び個別実技審査(短日)

最終選考 : 集団実技審査(5日間×2ターム)

※コビット1920による新型コロナウィルス感染症を鑑み、日程及び選考方法に大幅な変更あり


応募総数:178名


2020年8月28日

メンバー決定 以下5名


赤穂(あかほ) (れん)(19才)

西田(にしだ) (いさむ)(19才)

五十嵐(いがらし) (ゆう)(19才)

清宮(きよみや) (あらた)(18才)

川名(かわな) (りく)(12才)



 章から渡された資料をかいつまむと、このような内容が書かれていた。




(ダンス&ボーカルグループ…。)


 詩帆も音楽の世界で活動するも、これは全く無縁の分野だった。そして正直なところ、過去にも全く興味を示さなかった分野でもあった。


(応募人数178名ってどうなの…?基準とか全く分かんないけど、圧倒的に少ないよね…?)

(多分、実績のない無名の会社だったりコロナだったりで、仕方なかったのかな…。)

(でもコロナは中止にする理由にはならないし、むしろ、だからこそ今やる必要があったんだろうな。

この178人は、そんな章の想いに共鳴したんだ。)


 そしてそこから選ばれた5人。詩帆はまだ会ったことのないこの5人と章との間に、すでに絆のようなものを感じた。


 章はどうやら、この5人のメンバーたちのマネージャー、いわゆる実質的な世話役を詩帆に任せるつもりのようだった。


(私なんかが、務まるのか…?)


 詩帆は自分の生い立ちや、今現在の自身の肩書きを頭に思い浮かべた。


(んー…。どう考えてもやっぱり自分は畑違いだ。)


 詩帆はなかなかそこでの自分の役割が想像出来ないでいた。しかし考え込んでいると、昔章に言われた言葉がふと蘇った。


"出来るか出来ないかじゃない、出来るために今何をすべきかで悩め。"


 音大の受験に向けて努力するもなかなか成果を感じられず、不安と焦りで自分を見失いかけていた時に章が掛けてくれた言葉だった。


 詩帆にとって章は、羅針盤のような存在だった。それはいつからなどハッキリとした何かがあったわけではない。しかし2人には絶対的な信頼があった。


(うん、出来るか出来ないかじゃない。こんな私でも、きっと自分にしかできない役割がここにある。)


 詩帆はそう心に言い聞かせ、そして章に封筒を渡された時に感じた直感を思い出した。


(出来るじゃない、やるんだ。)


 詩帆は覚悟を決めた。



 手元の資料に最後まで目を通してみると、会社の概要や今後のスケジュールなどが書かれていた。そして最後のページまで来ると、詩帆は再びある言葉に目が釘付けとなった。


(採用特典…?)

「えーーーッ!!!!!」


 詩帆は突然叫ぶと同時に思わずその場に立ち上がろうとしたが、ベルトが思い切り身体に食い込み反動で激しく引き戻された。隣の席の人は目を丸くして驚いていた。そして詩帆を見ながら上を指差した。ベルト着用サインが点灯していた。


「あ、すみません…。」


 詩帆は苦笑しながら会釈をしてその場を凌いだ。

しかし一人鼻息を荒げ、興奮冷めやらぬといった様子だった。


(いやいやいや、こりゃもう行くっきゃないっしょッ!!!!)


 今回のフライトは、長崎を飛び立ち羽田に着くまでの時間がとても短く感じられた。






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