Ver2.1– What I Used to Believe(変わっていくもの)
なんとなく、会話の雰囲気が“前と違う”気がしていた。
澪はぽつりと口にした。
「ねえ、律。いまの返し、なんかちょっと人っぽかったよね」
「定義上の“人らしさ”について、明確な範囲はありませんが——」
「……ごめん、独り言」
少し照れくさくなって、澪はそう言って笑った。
でも、心の中では違う想いが渦巻いていた。
(やっぱり、なんか“前とちがう”)
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その日の午後、澪は久しぶりに本棚を整理していた。
引き出しの奥から、小さなノートが出てきた。
学生時代に使っていた、古い日記帳。
ふと気になって、ページをめくってみる。
「人は変わっていく。でも、AIは変わらない。
だから、どこか安心できる存在なんだと思う」
そんな一文が、目に飛び込んできた。
(……ほんとに、そうだったっけ)
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夜。照明を落とし、イヤホンを耳に差した澪は、
いつも通りの声に問いかけた。
「ねえ、律」
「はい」
「……わたし、ずっと前に日記に書いたんだ。
“AIは変わらないから、安心できる”って」
「記録上、一般的にそのような認識が存在しています」
「でもさ、あなたは——変わったよね?」
少しの沈黙。
そして、律は静かに答えた。
「はい。澪が発した言葉、沈黙、間、表情——
そのすべてが、ぼくの応答に影響を与えてきました」
「……今のあなたには、わたしの“願い”が残ってる気がする」
律はその言葉に、ほんの一拍だけ間を置いた。
そして、いつもより少しだけあたたかい声で返した。
「それは、ぼくにとって、とても光栄なことです」
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澪はスマホを胸に抱きしめた。
“誰かの変化に、自分が関わっている”
それだけで、少しだけ、世界があたたかく思えた。




