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あの日の恋(×3)が終わってくれない!~思い出の美少女たちと再会したら、恋の続きが始まりました~  作者: 柚本悠斗@小説家
二章 一色夏鈴

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第25話 莉乃の気持ち

 続いてサザエの下ごしらえに取り掛かる。


「サザエは定番のつぼ焼きにしましょう」


 つぼ焼きは名前の通り、殻をつぼに見立てて殻ごと焼く料理のこと。

 ただ、つぼ焼きには二つの作り方があり、一つはそのまま焼いて調味料を注ぐシンプルなやり方。もう一つは先に身を取り出して細かく切って殻に戻して焼く方法。

 ホタテと同じく砂を吐かせる時間がないから後者で作ることに。

「身を取り出すには、蓋と殻の隙間にナイフの先を差し込み貝柱を切り離す必要があるんですけど、躊躇せず一息でやらないと蓋を固く閉じてしまうんです」

「なるほど。確かにこれは力仕事ですね」


 男手が必要といった理由がよくわかる。

 試しに一つやってみると、案の定サザエは蓋を固く閉じてしまった。

 こうなると時間を置かないことにはどうにもならず、待っている間に別のサザエで再度チャレンジ。今度はアドバイス通り、ひと思いに差し込んで刃先を捻る。

 手応えを感じた瞬間、蓋が外れて中に溜まっていた海水が溢れた。


「さすがでりっちゃん。お上手ですね」

「莉乃さんの教え方が上手なんですよ」


 こうして俺がサザエと格闘している間、莉乃さんは隣で中身を取り出して苦みのある部分は取り除き、身と貝柱と内臓の食べられる部分を細かく切り分ける。

 それらを塩もみしてぬめりを取ってから殻の中に戻して下ごしらえ完了。

 あとはお酒を入れて二十分~三十分くらい加熱。

 味付けはポン酢でさっぱりいただくことに。


 最後は伊勢海老の下ごしらえ。


「それにしても立派ですね」


 体長二十センチを超える大きな伊勢海老


「俺、伊勢海老を食べるのは初めてなんです」

「伊勢海老はどんな料理にしようか悩んでいたんですけど、初めて食べるなら凝った料理よりもホタテやサザエと同じように網焼きがいいと思います。味付けもシンプルに塩と胡椒で食べると伊勢海老の濃厚な旨味を楽しめると思います」

「ぜひ、それでお願いします」


 ちなみに伊勢海老の下ごしらえは簡単で半分に切って背ワタを取るだけ。

 ただ、甲殻類ということもあって殻は固く、サザエの蓋を外した時以上の力仕事。出刃包丁なら比較的楽だろうけど備え付けの包丁だときついだろう。


「伊勢海老はお腹が柔らかいので、裏返してお腹に刃を入れてください。そのまま包丁を下ろして頭側を割り、次に尻尾。二度に分けると上手に割りやすいですよ」

「なるほど。わかりました」


 最初の一匹は莉乃さんの指導を受けながら仕上げ、要領を得たところで二匹目三匹目と半分に切っていく。

 怪我をしないように気を付けながら作業に集中。

 気づけば無言で黙々と伊勢海老を切っていた時だった。


「さきほど、りっちゃんが菫さんに掛けていた言葉……」


 イナダを三枚におろしていた莉乃さんが言葉を漏らす。


「わたし自身に向けられているように思いました」

「莉乃さん自身……?」


 言葉の意図が掴めず手がとまる。

 どの言葉を受けとめて言っているのかわからず、莉乃さんの横顔を見つめながら自分が口にした言葉を思い出す。だけど、どれを指しているのかわからない。

 憂いを帯びた瞳を浮かべているように見えるのは気のせいだろうか?

 莉乃さんの言葉を待ちながら作業を続けようとした時だった。


「痛っ——」


 伸ばした左手に伊勢海老の棘が刺さり反射的に引っ込める。

 痛む指先を見ると、みるみるうちに血が滲みだしてきた。


「りっちゃん、大丈夫ですか——!?」


 いつも穏やかな莉乃さんが血相を変えて俺の手を握る。


「はい。ティッシュで押さえておけば——」


 大丈夫です——。

 そう答えるより早く、莉乃さんが俺の指に唇を添えた。


「ちょ、莉乃さん——!?」


 突然のことに動揺する俺。

 莉乃さんは構わず血を吸い続ける。

 こんな時に不謹慎なのはわかっているけど、初めて女の子の唇が身体に触れる感触に驚きと興奮を覚えずにはいられず、痛みも忘れて指先に意識が集中してしまう。

 くすぐったさと気持ちよさを混ぜ合わせたような不思議な感覚。

 粘膜に包まれる感触に背筋がゾクゾクするのを押えられない。

 少しすると、莉乃さんはハンカチ取り出して傷口を押えた。


「絆創膏を取ってきます。手で押さえて待っていてください」

「は、はい……」


 パタパタと走っていく莉乃さんの背中を見送る。

 興奮冷めやらず痛いくらに高鳴っている心臓を押えていると、落ち着く間もなく莉乃さんが戻ってきて、俺の指に絆創膏を貼ってくれた。


「これで大丈夫だと思います」

「あ、ありがとうございます……」


 安堵にほっと息を吐く莉乃さん。

 その表情は何事もなかったように笑みが満ちていた。

 莉乃さんは俺に変わって残りの伊勢海老の下ごしらえを終わせる。


「りっちゃんは、先にみなさんのところへ戻って焼き始めてください。わたしは鯛のアクアパッツァと海鮮のアヒージョを作ってから戻ります」

「わかりました。よろしくお願いします」


 俺は下ごしらえを終えた食材をトレイに載せてテラスへ戻る。

 するとバーベキューコンロを中心にテーブルや椅子も並べて準備万端。

 悠香は菫さんの晩酌に付き合い、夏鈴は炭の火を大切そうに見守っていた。

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