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あの日の恋(×3)が終わってくれない!~思い出の美少女たちと再会したら、恋の続きが始まりました~  作者: 柚本悠斗@小説家
二章 一色夏鈴

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第14話 思い出の洋菓子店

「こうしてパンケーキを食べてると、アンデスのケーキを思い出すね」

「アンデスか……また懐かしい名前が出てきたな」


 アンデスとは猫まみれから徒歩十分の場所にある地元唯一の洋菓子屋。

 俺たちが子供の頃からあり、猫まみれに通っていた子供たちの誕生日になるとおばあちゃんがアンデスのケーキを買ってきてお誕生日会をしていたのを思い出す。

 子供でも買える低価格で、よく俺も買いに行っていた。


「アンデスってまだやってるのかな?」

「ううん。数年前に閉店したんだって」

「そっか……残念だな」


 猫まみれのある美里町は花崎市内でも典型的な過疎地域。

 年々お客さんが減って洋菓子店を続けるのは難しかったんだろう。もしかしたら子供でも気軽に買えるような低価格設定も閉店に拍車を掛けたのかもしれない。


「アンデスのケーキを食べるのも、この街に帰ってきた理由だったんだけどな……」


 夏鈴は一瞬寂しそうに視線を流す。


「あー美味しかった♪」


 すると表情を一変、満足そうにお腹をさすりながらソファーに沈む。

 その後、パンケーキが美味しすぎて半分ずつでは物足りずに一皿追加。

 だけどパンケーキが三枚と大量の生クリーム、さらに数時間前には昼食を食べたばかりということもあり、なんとか食べきったものの俺の胃袋は限界突破。


「……調子に乗って食べすぎたな」

「あたしはもう一枚くらい食べられそうだけど」


 お腹を抱えている俺とは対照的に夏鈴はけろっとしていた。


「まぁでも、もうすぐ水着を着るからこのくらいにしておかないとね」


 夏鈴は自分の食欲に言い聞かせるように話ながらアイスティーで口直し。

 マジか……これが女子のいう甘い物は別腹というものらしい。

 いや、超甘党の夏鈴以とっては別腹ですらないのかも。

 なんて驚き半分納得していた時だった。


「今日は付き合ってくれてありがとね」


 夏鈴は改まった感じでお礼の言葉を口にした。


「お礼を言うのは俺の方だよ。夏鈴が誘ってくれなかったら一日だらだら過ごしていたと思う。おかげで水着も買えたし、久しぶりに充実した休みだった」

「あたしもすごく楽しかった。猫まみれの再建活動も楽しいけど、たまにはこういう高校生らしいデートもいいよね……おかげでいい気晴らしになったな」


 夏鈴はいつものはにかんだ笑みを浮かべる。

 だけど次の瞬間、ほんのわずかに表情に影を落とした。

 普段なら気づかないような些細な変化に気づけたのは、直前に夏鈴が口にした意味深な台詞——『気晴らしになった』という言葉が頭の中で引っ掛かったから。


「なにか嫌なことでもあったのか?」

「え——?」


 見間違いだろうか?

 尋ねた直後、夏鈴の表情が一瞬だけ凍りつく。

 でも、そう思った次の瞬間にはいつもの笑みを浮かべていた。


「別になにもないよ。どうしてそう思ったの?」

「いや……ないならいいんだ」


 夏鈴がなにかを誤魔化しているのは明らか。

 だけど、早々に話を切り上げようとするあたり、あまり踏み込んでほしくない話題なんだろう。気になるけど、これ以上聞いたところで答えてくれそうにない。

 今はそっとしておくことにした。


「そろそろ出よっか」

「そうだな。この後はどうする?」

「もう少し見て回りたいかも」

「わかった——夏鈴?」


 そう答えながらソファーから立ち上がった時だった。

 夏鈴は驚いた表情を浮かべながら店外に視線を向けていた。

 いや、驚きよりも気まずさの色の方が強く見える。例えるなら、見つかってはいけない人に出くわしたというか、バレてはいけないところ見られたような焦り方。

 その証拠に夏鈴は俺の陰に隠れるように身をひそめた。


「夏鈴、どうかしたか?」

「あっ……ううん。なんでもない!」


 いやいや、さすがに無理があるだろ。

 とてもじゃにないけどなんでもないようには見えない。


「ちょっと急用を思い出したから今日は解散でいい?」

「わかった……そうしよう」

「本当ごめん。またね!」


 夏鈴は顔の前で手を合わせると小走りで喫茶店を後にする。

 この時の俺は、その背中を見送ることしかなかった。

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