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第31話 活動再開

 中間テストが終わった五月下旬、再建活動を再開。


 土曜日の朝、俺は早めに来てくれた夏鈴と二人で作業を始めていた。

 テスト期間中も悠香と買い物に出掛けたり、夏鈴と一緒にテスト勉強をしたり、莉乃さんに誘われて猫の集会にお邪魔したりしたけど全員揃うのは二週間ぶり。

 再開を祝福するような晴天で絶好の片付け日和だった。


「ねぇねぇ、りっくん」

「ん? どうかしたか?」

「なんか、妙に店内が片付いてない?」

「悠香がテスト期間中も片付けてくれてたんだよ」

「悠香が一人で?」


 夏鈴は驚いた様子で声を上げる。


「悠香……頑張ってるよね。私と違って真面目で一生懸命だし、作業中もサボらないし文句の一つも言わない。しかもテスト期間中までやってくれてるなんてさ」

「確かに悠香は頑張ってる。でも夏鈴だって頑張ってるだろ」

「そうかな……?」

「もちろん。夏鈴は明るく前向きで、俺たちを引っ張ってくれるムードメーカー的に頑張ってくれてる。それに、みんなで協力してやってるんだから、誰か一人だけが頑張ってるなんてことはない。それぞれができることをやっていけばいいと思う」

「ムードメーカー……うん。そうだよね!」


 夏鈴は胸の前で小さくガッツポーズ。

 やる気が湧いた様子でなにより。


「おはよう!」

「おはようございます」


 そんな話をしていると悠香と莉乃さんが一緒に到着。


「二人共ずいぶん早いね」

「そう言う悠香たちも早いだろ」


 集合時間は十時なのにまだ九時半。

 人のことは言えないとはいえ早すぎる。


「遠足前の子供みたいで恥ずかしいんだけど、早く目が覚めちゃって」

「わたしも、久しぶりの集まりだと思うとじっとしていられませんでした」


 みんな再開を楽しみにしていたのは同じらしい。


「よし。少し早いけど始めよう」


 そんなわけで引き続き片付けを進める俺たち。

 概ね店内の片付けは終わり、今日から庭と物置小屋の片付けに着手。

 広い庭の落ち葉を集めるのは意外と重労働だと思うから俺がやるとして、もう一人サポートしてくれる人を決めようとしたんだけど……やっぱり問題が勃発する。


「りっくん、あたしが一緒に作業してあげる♪」

「ちょっと待って!」


 案の定、申し出る夏鈴に悠香が割って入った。


「悠香は店内で一緒に作業したんだから譲ってよ」

「前回は前回、今回は今回。公平に決めるべきだと思う」

「じゃあ、りっくんに決めてもらえばいいんじゃない?」

「確かに、それなら公平だね」

「お、俺が決めるのか?」


 まさかの飛び火。


「「どっちと作業したい?」」


 二人の圧が強すぎて思わず目を逸らす。


「そうだな。間を取って莉乃さんと——」


 なんて言い掛けた瞬間、二人の瞳に怒りの色が浮かんだ。

 助けを求めて莉乃さんに視線を向けると、応援するように胸の前でガッツポーズをしていた。気持ちは嬉しいし仕草も可愛いんだけど応援はいいから助けてほしい。

 どちらを選んでも角が立つ状況に思わず頭を抱える。

 とはいえ決めないことには始まらない。


「じゃあ、悠香にお願いするよ」

「そ、そんな……」


 絶望のあまり膝から崩れ落ちる夏鈴。

 夏鈴には悪いけど好き嫌いで決めた訳じゃなくて理由がある。


「今日から片付けを始められるのは、悠香が作業をしてくれてたから。ずるいと思うかもしれないけど、ここは悠香の頑張りに免じて譲ってくれないか?」


 夏鈴も悠香の頑張りは認めてくれていたから納得してくれるはず。


「わかった。今回だけは譲ってあげる」

「ありがとうな」


 それともう一つ、俺がフォローできるよう傍で作業をさせたかったのも理由。

 病気が治ったとはいえ、思い返せば再会して以来、悠香が苦しそうにしている姿を何度か目にしていた。日帰り温泉施設の帰りや掃除用品を買いに行った時もそう。

 悠香自身も『もう少し体力をつけないと』と言っていた。


「じゃあ、さっそく作業を——」

「その前に、お伝えしたいことがあります」


 莉乃さんが控えめに手を上げて待ったをかける。


「実はテスト期間中、わたしの両親が猫まみれの電気や水道、ガスの契約を済ませておいてくれたんです。今後はお湯もお手洗いも使えるのでご自由にどうぞ」

「本当ですか!?」

「めっちゃ助かります!」


 悠香と夏鈴が小躍りする勢いで喜びの声を上げた。

 今まではお手洗いの度に近くのコンビニまで行かなくちゃいけなかったし、片付けで汚れた手を洗うことすらままならなかったからマジで助かる。

 俄然モチベーションが上がる俺たち。


「改めて、今日から頑張ろう」

「「「はーい!」」」


 こうして二手に分かれて店外の片付けがスタート。

 俺と悠香は軍手をはめると竹箒を手にして庭に向かう。

 庭の惨状を前にした瞬間、さっきまでの前向きな気持ちが霧散した。


「わかってはいたことだけど……」

「こうして見ると酷いね……」


 そう漏らしてしまうほどに荒れ放題。

 新緑の時期を迎えたせいか雑草は膝の上まで生い茂り、庭木の枝は塀を超えて隣の家まで伸びている。外から投げ込まれたのか、古いペットボトルや缶も落ちていた。

 至るとこに落ち葉が散乱していて集めるだけで大変そう。


「一筋縄ではいかないって言葉はこういう時に使うんだね」


 悠香の漏らした言葉に激しく同意。

 初めて言葉の意味を正しく理解した気がする。


「今日で終わらせなくちゃいけないわけじゃない。無理せずやろう」

「そうだね。急いで怪我でもしたら大変だから慌てず進めよ」


 悠香と相談して今後の手順を決める。


 まずは庭に散乱する大量の落ち葉とゴミを集める作業から。

 草むしりや枝の剪定は掃除の時にやるとして、庭を埋め尽くす落ち葉を片付けないと作業にならない。排水溝や集水桝、雨どいの詰まりも忘れずしたいところ。

 花壇や家庭菜園も後々整備するから綺麗にしておきたい。

 それが終わったら掃除に取り掛かる段取り。


「庭が広くて大変だけど頑張ろうな」

「うん。まかせておいて!」


 さっそく竹箒を手に大量の落ち葉と向かい合う俺たち。

 ところが、いざ始めてみると作業は想像以上に困難を極めた。

 というのも、冬を超えて残った落ち葉は半ば腐っているというか腐葉土化しているというか、水を吸って重くなっているから掃くには力が必要で軽く筋トレ気分。

 しかも背の高い雑草が邪魔をして掃きにくいことこの上なし。

 場所によっては手で拾い集めた方が早いまである。


 黙々と作業を進め、気づけばお昼を過ぎていた。

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