69話 vsアイアンゴリラ
「ネオン!絶対逃がすなよ!追い込め!」
フリージアから遠く離れた巨大森林の中でラクサスがそう命ずるのはメイド服を着たネオンだ。しかしやはりラクサスの頭の中ではメイドは戦闘職。片腕には細剣が仕込まれている。
「ウホウホォォォ!」
ラクサスとネオンが追いかけるのは白銀に輝くゴリラだ。しかしただのゴリラではないことは明らかだ。彼が現世にいた時の数倍の巨体を誇るだけでなく拳は鋼鉄になっている。
『アイアンゴリラ』
これがこの怪物の通称だった。
「その図体で随分とふもとの村を荒らしたみてぇだな!だがド田舎だからと慢心したな俺が来たんだ。お前の儚い天下も終わりだ!」
ラクサスは滑空しながら追い詰める。しかし相手も一筋縄ではいかないその巨大な手で近くの岩をむんずと掴むと「ウホォ!」とラクサスに向かって岩を投げて来た。
「おっと危ねぇ!」
豪速球の速度でひらりと避けて見せるが、岩は後ろの木々にぶつかりボーリングのピンのように薙ぎ倒される。アイアンゴリラは誇るようにドラミングを響かせる。
「ちっ…危険だが面白い怪物だな。やれネオン!」
「了解しました。ご主人様」
ネオンは服をひるがえすとその中からたわわな双丘が見える。
「行きなさい。青の幽霊!」
右側の膨らみから青いゴーストが現れ、ゴリラに憑りついてしまう。ネオンはゴーレムである。すなわち身体に臓器が存在しない代わりに大量の武器を仕込める。ネオンの早急もその一つだ。ラクサスはネオンの胸にゴーストの封印されている宝玉を仕込んでいた。ラクサス曰く決して巨乳にしたいからという下世話な理由ではない(と言う主張である。)ネオンはこのゴーストを操って戦う。しかしゴリラ自体には痛みを与えることはない。
「ウホォ!」
アイアンゴリラが腕を振るってネオンを薙ぎ払おうとしたところでこの怪物は異変に気が付いた。いつも通りの力が出ないのだ。
「ウホ?」
「かかったな!デカブツ!これでも食らえ!」
ラクサスは全速力でアイアンゴリラの額に魔力を込めた槍を打ち込む。
「俺に従えぇぇ!デカブツゥ!」
「ウホォォォォ!!」
「と言う訳で魔物討伐依頼は完了!」
「お疲れ様でした。ご主人様」
『すごいです。ラクサスさん!!!』
『神です!』
『いよっ大統領!』
ラクサスはネオンと数体の太鼓持ちマンドラゴラに祝福される。背後には先ほど従魔にしたアイアンゴリラが控えている。
ラクサスは紐で束ねた手配書の一つにペンでバツを付ける。
「さて、ここから近いのは向こうの古代文明跡か」
「ご主人様。このデカブツはどうしましょうか?」
するとラクサスは筒を取り出すと。
「この前の超虫入れてた魔道具まだ余ってるんだよ。この中にでも入って来てくれ」
ラクサスが筒を開けるとポンと言う音と共にアイアンゴリラは消え去った。




