66話 依頼開始
「私の名前はネオンです。よろしくお願いします」
ネオンはラクサスに頭を下げてくる。ラクサスは頭をかいて
「アハハ。ご主人様だって!遂に俺にもメイドが誕生したぞ!ゴーレムだけど…」
ラクサスの足元からトテトテと走って来たマンドラゴラが小さなプラカードを出す。
『ぼくはまんどらごら19ごう!先輩だからよろしくな!けいごつかえよ!!!』
ネオンは無言で19号の頭の葉っぱをむんずと掴むと
「ご主人様。昼食はバカマンドラゴラの煮付けでいいですか?」
『ギャァァァァァァ!』
ビビった19号は叫び出す。マンドラゴラは元々大声で叫び散らして鼓膜を破壊する魔物なのでうるさくて仕方がない。
「とりあえず騒いでる19号は落ち着け!近所迷惑だろ」
『ぐすっ…ごめんなさいらくさすさん。さんきゅーらくさすさん。ふぉーえばーらくさすさん…』
「一体お前はいつどこでそのネタを覚えたんだよ…」
ラクサスはマンドラゴラが言い出した昔懐かしいネタに突っ込みつつネオンに向き直る。
「まぁ俺はこれから貯めこんでたギルド依頼を果たさないとならない。小口の依頼ばっかだけどね。だから牧場の留守番を頼みたくてー」
「嫌です。私がご主人様と離れるなど考えられませんので」
ネオンはラクサスの服をぎゅっと掴んで来る。ちなみに中肉中背とは言ったがラクサスの背が小さいので身長は同じくらいだ。マンドラゴラも捉まって来る。
『ずるいです!らくさすさん!ぼくらもつれていってくださいよ!』
ラクサスは困惑する。しかしこうも考えた。
(待て…俺のメイドを世間一般に発表するいい機会かもしれない!ネロとかあたりは羨ましがるだろうな)
そうニヤつくとグリフォン車を呼びつけた。
「仕方ないな…今回だけだぞ!」
そう言ってラクサス、ネオン、そうして数匹のマンドラゴラを始めとした魔物たちはグリフォン車に乗り込む。行きより魔物が増えて帰りがとんでもないことになるとは思わずに…
「と言う訳で俺に合うクエスト依頼を教えてくれよ」
ラクサスはギルドの受付でそう述べた。受付嬢は苦笑いする。
「あのラクサス子爵…これはどういうことです?」
周囲の冒険者たちも困惑する。
ラクサスの右腕には黄髪ツインテールのメイドがぴったりと抱き着き、反対側の肩にはマンドラゴラが抱き着いている。更にコートの中では大量の魔剣が蠢き、周囲にはゴーストが漂っている。これを奇怪と言わずに何と表現しようか…
「気にしないでくれ。これはすぐに収まるからさ」
「気にしないでいられませんよぉぉぉ!!!」
ギルドには受付嬢の叫び声が響き渡った。
結果ラクサス達は紆余曲折ありながらもギルドから数個の依頼を取り付けた。(力で取ったともいう)
彼は数個の依頼書を眺める。
「魔物討伐が多いな…ほとんどがド田舎とは言えどれだけ暴れまわってるんだ…」
ラクサスの拠点があるフリージアはアルファ帝国でも有数の都会である。人が多く住むだけ整備も行き届いているのだが…逆に田舎にはほとんど何の設備もなく狂暴な魔獣が闊歩する世紀末状態なことはアルファ帝国の幹部なら皆知っていた。それでたまにギルドに依頼がくることがある。ラクサスはこのことをよく理解し、ギルドの依頼を達成することにしたのだった。




