35話 鉄拳のアルフレッド
(かっ…斬られた!この私がか…おのれ!全て私の注意を引くための方法か…)
「油断しましたね…死神を舐めないでください。」
しかし斬ったのはヴェールのトレンチコートだった。ヴェールに実害はない。しかし…
ヴェールはポケットから手を出さざるを得ないそしてその手には扇が握られていた。
「なるほど…その扇で風の刃を操っていたのですね…」
ティナはそう冷静に言い放つ。
「ご、ご名答です。」
ヴェールは動揺しながら言う。
ヴェールはずっとポケットに手を入れておりその中で少し扇を動かすことで風の刃を起こしていた。
タイミングを常にずらされるので非常にやりにくいことこの上ない。しかしタネさえ明かしてしまえば恐れることなどないのだ。
「これさえ見切れば倒せる!」
そう言ってラクサスはポチに乗って突っ込んでいく。
「これさえ見切れば倒せる…と良かったんですがねぇ!」
『神風尖!(かみふうせん)』
そう言ってヴェールは巨大な竜巻の槍を打ち出す。
「これで散りなさい。永遠にね!」
この槍がラクサスに届く直前でラクサスの中から刃が現れて来た。そしてそれですべて打ち払ってしまった。
「何!?」
ヴェールはラクサスの刃を見て驚く。それもそのはず、彼の懐から大量の剣が出てきたからだ。
「こ、これは霊剣…あの触れたものを八つ裂きにするという霊剣ですか…それをこんな大量に…」
「見つけたんだよ!遺跡の中でな!この剣は俺の隷属魔術で従えている。」
これを聞いてヴェールは焦り出す。
(これでは計画が崩れる。あのグリフォンとラクサスを相手にするだけでも大変だが、これに不規則な動きの霊剣が加わるとなれば…)
「私も忘れないでいただきたいです…」
ティナがそう呟く。ヴェールが見るとティナは大鎌を構えていた。
「おのれ…」
ヴェールが思案していると急に地面が揺れ始めクラーケンの触手がティナを弾き飛ばした。
「‥‥っ」
「ティナ!」
ラクサスが思わず叫ぶ。
「ハッハッハ!これですよ!これ!これが欲しかったんですよ!」
ヴェールはそう言ってクラーケンの触手に乗る。
「この触手はあなた方を狙い続けます。そしてどんどん街を破壊しましょう!」
ヴェールはそう言って高らかに笑う。
「さァ!逆転のお時間です!」
『鉄壁!』
その頃アルフレッドは街の周囲を鉄の壁で覆っていた。
「上の野郎どもはちゃんとやってんだろうな?まぁアイツのことだからな。」
すると後ろにフランとバロンが来る。
「アルフレッド殿。お世話になります。」
「あぁフラン嬢か…隣にいんのはバロンだな。」
「へぃ。アルフレッドの旦那。」
「おう。よろしくな。」
アルフレッドはそう言うと目の前のクラーケンを見る。
「とっとと対応しなければ…」
フランが剣を抜いて構える。バロンも棍棒を出して突き出した。
「やりやしょうぜ旦那!」
三人は勢いよくクラーケンに飛びかかる。
「鉄斧!鉄鋸!食らいやがれ!」
アルフレッドは両腕を武器に変化させて切り込む。その姿は圧倒的で剣を持って触手を切り裂いているフランは感心してしまった。
バロンもマグマを振り回して戦っていく。
「しかし…終わらないっすねぇ。」
バロンがそう呟く。アルフレッドは
「まぁこんなもんで終わるとは思ってねぇがな。」
と返す。
「しかし……このままではジリ貧ですぜ。」
「心配すんな!俺様を誰だと思ってやがる!」
「魔王軍四天王 鉄拳のアルフレッドだぞ!」
そう叫ぶとアルフレッドは鉄を用いてクラーケンの触手を止めてしまう。
「これでしばらくは安心だな。」
フランはそう呟く。
「馬鹿め。これで安心できるか!」
アルフレッドがそう言っていると背後にある女性が近づく。
「何の用だ?一般人は離れていろ。ってアンタは…」
ジャーマは彼女の顔を見て驚く。




