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3話 どんな所にも悪い奴はいる。

さて、その頃ラクサスは野暮用があって街に出ていた。

「全く何がオークションだ。反吐が出る。」

 この前魔族仲間に紹介されて、この街で年に一度の大オークションが開催されていると言うので、彼も連中に勧められるまま仕方なく、物見遊山がてら行ってきたが、はっきり言って意外なところだった。

 と言うのもその市場では普通に人間の商人たちが取引をしていたのだ。ラクサスが生まれた国アルファ王国は人間と魔族が共存している多種族国家でありそれぞれが独自の生活文化を持って生活している。この国で一番多いのは人間族だがその他にエルフや大鬼族など多様な種族が暮らしている。このような国は世界に複数あるらしいがこの国がその中で有力な国の一つでもある。

「なぁ、リコール…」

「何ですかい?旦那?」

「魔王軍って人間もいるのか?」

 すると、リコールは不思議そうな顔をして

「当然でさぁ…魔族は魔族の領分、人間は人間の領分。それぞれ補い合って成立してるんですから…この国は相当平和ですぜ。」

 と笑って言った。


 商品はありきたりの物しかなかったが、まあ、一つだけ特に興味を引いたものとしてはクソデカい石ぐらいか。たぶん一番高値で取引されていたはずだ。せっかくなので彼も買おうとも思ったが実際持ち合わせがなく、買うことができなかった。

「何が生まれるんだろうか。どう考えても恐らくはドラゴンかグリフォンあたりだろうか。」


 彼が適当に買い物を済ませてリコールを連れて歩いていると。

「あ、あの困ります‥‥」

 か細い声だった。

「おいおいぃ?!俺だって悪い話ではないって言ってるだろうが。少しくらい値引いたっていいじゃねぇか!」

「だ、だからってこの鉱石をただ同然の額で売れなんて…」

「ただじゃねぇって言ってんだろうが!銅貨1枚払うんじゃねぇか!」

「この鉱石にいったいどれだけの価値があるとお思いで?!」

 どうやら少女にガラの悪い男が絡んでいるらしい。

(あぁいたなぁ…転生前世界にもこんな奴…どうしよう…)

 ラクサスはなかなかこう面倒くさいことは嫌いなタチだ。

「あぁ…ありゃあ。面倒な連中ですねぇ。治安はどこでも悪いってことですな。」

 そうリコールはあきれ顔で言う。

「やっぱりお前でもそう思うか。」

 リコールの意見に賛同する。

「じゃあ、どうするんで?」

「いや、まあ、見ての通り俺は悪魔だからな……助ける義理は……」

 と言いかけたところで少女がガラの悪い男に突き飛ばされて転ぶ。

「……ないこともないな。」

 そうして謎の正義感のもとでラクサスは話しかける。

「騒ぐな。女性に絡むな。」

「ああん?!」

 男が目を血走らせてこちらを見る。

「何だこのガキ!蹴り殺されたいのか!」

「そりゃあこっちのセリフだ。あんまり人に迷惑をかけるなよ?」

「うるせぇ!ガキ!」

 そう言ってラクサスに殴り掛かってくるのでは鳩尾に一発拳を入れる。

「ぐっ!」

 男はそううめくとそのまま気絶した。

「まあ、こんなところだな。」

「さすがは旦那ですねぇ……」

 そしてラクサスは女の子に目を移す。

「あ、ありがとうございます…」

「そんじゃ、俺はこれで。」

 そう言って立ち去ろうとすると女の子は袖を引っ張る。

「あ、あの……何かお礼を……」

「いや、いいよ別に。俺はお礼されるようなことはしてない。」

「ダメです!人に助けてもらったら何か返しなさいって!両親が言ってました!もう、この世にはいませんけど…」

(えぇ・・・変なこと言わせちまったな‥‥)彼が反応に困っていると

「じゃあせめてこれを受け取ってください!」

 そう言って彼女はラクサスにペンダントを手渡した。

「これは‥‥」

「亡父が仕入れていたペンダントです。でも、使い方が分からなくて・・・」

(分からない?分かんないものを俺に‥‥まぁこれで収まるならそれでもいいか…)

「分かった。受け取るよ。じゃあ、これで俺たちはおさらばだ。」

 はそう言ってこの場を立ち去ろうとするが。

「私の名前はユリカです・・・」

「ああ俺はラクサス・バレンタイン。一応上級悪魔族だ。」

「それではラクサス様!またお会いしましょう!」

 そう言ってユリカは頭を下げた。ラクサスは片手をひらひらさせてその場を去った。

「全く旦那は相変わらずですなぁ……」

 リコールが呆れ顔で言うので、ラクサスも反論する。

「仕方ないじゃん。俺だってこれでもお坊ちゃんだろう?」


 ‥‥‥‥

 ある男が歩いていた。

「ったく、あのガキが…」

 男は先ほどラクサスに腹を殴られた男である。

「ったくもう!今日は腹が立つことだ!」

 そうすると男はあたりの机を蹴り飛ばす。

「あぁ!おっさん!そんな乱暴な!」

 慌てて出てきた店員がいさめるがそんなものを聞く耳など持ち合わせているわけがない。

店員は慌てて商品の石に目を向ける。

「この石は‥‥あ!割れてる!」

石にヒビが入り、中から黒い闇が広がっていた。


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