29話 ヴェール参上
騎士はデカいダチョウのようなものに乗っていてそのダチョウには羽が生えている。
「この竜騎士ブーロン様が直々にぶち殺しにきてやったぞぉ!!」
「いや何よこの竜!竜と言うかダチョウじゃないの!馬鹿にしてんのかしら?」
そうエリスが嘲笑するとブーロンはブちキレて
「何だとこのクソアマ!俺の愛ダチョウを小馬鹿にすんのか!この絶壁女!
「や、やれるものならやってみなさいよ!行くわよラクサス!」
エリスがそう指示するがラクサスは首を振らない。
「それはお前がやれよ!お前が受けた喧嘩なんだからさぁ!」
そう言ってエリスを前に押し出す。エリスはため息をつくと剣を構えた。
「仕方ないわね。私が相手よ!ラクサスは先に行ってなさい!」
そうしてブロンとエリスが激突する。
帝国軍の本陣の裏である男がワインを飲んでいた。男はメガネをかけた初老の男でありどこか高貴な雰囲気を持て居る。そんな男に報告する者がいる。
「ヴェール様!ノワール様とブーロン様は苦戦しておられるようです。」
「ブーロンにノワール……承知しています。あちら側にも強者がいらっしゃったようだ。特にフランなど恐ろしい存在です。」
「では、ヴェール様…」
「焦ることはありません。こちらの戦力はまだ半分も出ていない。」
「しかし!それでは!」
そう報告している騎士が言いよどむとヴェールはワインを飲み干した。
「神器さえ手に入れられればこちらの勝ちです。後は野となれ山となれとどこかでは言うようですがね。」
「ヴェール様は神器をどうなさるおつもりですか?」
そう騎士が聞くとヴェールは不敵に笑う。
「それはもちろん……知りませんよ。あの国王の考えていることなど。私はただ命令に従うのみ。」
そう言ってヴェールはニヤリと笑う。
その瞬間背後に大きな波が立つ。
ボルケニアは海に面しているがそこに大きな波が立つ。
「どうやら来たようですね。本命君が。」
ヴェールは地面が揺れているのも気にせずワインを嗜むのであった。
ラクサスが操るゴーレムは騎士たちを薙ぎ払い、また市民を肩の上に乗せて保護した。
「ラクサスお兄ちゃん!エリスお姉ちゃん!」
子どもがそう言うとエリスは振り返る。
「ん?どうしたのかしら?」
「こっち!」
そう子どもたちは二人の手を引いて行く。そうして着いた先にあったのは孤児院だった。どうやらここに預けられている子どもたちのようだ。
「悪い騎士さんたちから僕たちを守ってよ!」
とエリスの手を取って言う。エリスは
「はぁ分かったわ。お姉ちゃんに任せなさい!」
そう胸を叩いて言い放った。随分とラクサス相手の時より威勢がいい。
ラクサスが
「おい、お前子ども相手に張り切りすぎだろ……」
と呆れているとエリスは
「いいじゃない!だって子供よ!アンタと違って素直でいい子じゃない!」
と言い返すのでラクサスは
「お前‥‥間違いだけは起こすなよ…」
とため息をついて呆れた。
しかしブーロンは追って来る。
「待てやてめぇ!俺のダチョウから逃げられると思うなよ!」
「しつこいわね!アンタは追い払ったでしょうが!子供と触れ合う時間が無くなるでしょうが!」
「ガキに構ってる暇があるなら俺様を見ろおぉ!オラァ!!」
ブーロンはそう叫びながら突っ込んで来る。エリスは空を飛んで躱しながら。
「ラクサス!アンタはとっとと元凶を叩き潰しに行きなさい!話はそれからよ!」