23話 身長差を見せつけられると誰でも萎えるものだ
ラクサスは巨大な岩場の前に立っていた。
「ここが……鍛冶屋のある街ですか？」
ラクサスは辺りを見渡しながら言う。そこには多くの巨石が乱雑に置かれていた。岩場は山になっておりあちこちにごつごつした石が出ている。どうやらこの巨山の上に件の街があるらしい。
すると、背後のアルフレッドが声をかける。
「ここが鍛冶屋のある街なんだが…気を付けろよな。」
そう言ってアルフレッドはラクサスを見下ろす。
「この街はな…」
ズドーン！と、言う地響きが鳴り響く。
「な……何事です！？」
ラクサスは辺りを見渡すと、アルフレッドは笑いながら
「まぁ、見てろって。」
そう言ってアルフレッドは近くの岩場に腰をかける。すると、その岩場の後ろから巨大な影が現れる。
「な……あれは！」
ズドン！ズドン！とんでもない足音を立てそこに現れたのは褐色肌の女性だった。ラクサスは彼女に一瞬で圧倒されて後ろに飛びのく。
「何だこの女デカくないっすか？」
ラクサスは別に背が高いわけではないので自分より背が高い女性は珍しくもないが、目の前に現れた女性は自分の背丈の5倍はあった。
「この街はな…鬼族による女尊男卑の厳しい街なんだな。一番強いのが大鬼族だ。だからお前みたいなチビが行くと…」
「く、喰われるんすか？！」
「バカ野郎。漫画じゃねぇんだから。」
すかさずツッコミが入る。
すると、大鬼族の女性はラクサスに近づいてくる。
「ふぅん。アンタがアルフレッドの知り合いかい？」
そう言ってラクサスの前に座る。ラクサスは大鬼族の女性の顔を見上げる。アルフレッドはラクサスの肩を叩くと。
「あぁこいつがラクサス。ドリアの倅なんだ。知ってんだろ？」
「あぁ、まぁねぇ。」
そう言って大鬼族の女性はラクサスを見る。ラクサスは委縮しながら言う。
（こいつ魔族なんだよな…ある程度知能がある者には俺の魔術が効かない……）
「何よ？アタシの顔に何かついてる？」
「い、いやぁ何でもないっす。」
ラクサスはそう言って目をそらす。
「ったくシャキッとしな！」
そう言うとラクサスを担ぎ上げ肩車する。
「うわぁ！」
ラクサスは突然担がれたので、思わず叫んでしまう。
「ったく軽いねぇ。アタシの名前はスカーレット。鍛冶屋の店主さ。」
彼女はラクサスを肩に担いだまま自己紹介をする。
「ど、どうも…ラクサスって言う者です。」
（でけぇ……）
ラクサスは彼女の肩の上でそう考える。すると、彼女は巨大な足音を鳴り響かせながら街へと入って行く。道の両側にはいくつかの大鬼サイズの建物が立っており、ところどころリコールのような小鬼族も見受けられる。
「あ、あの……俺どこに連れてかれるんですか？もしかして‥‥地獄？」
ラクサスは肩の上でそう聞く。スカーレットは石畳で舗装された道を歩きながら答える。
「何言ってんだい？アタシの店さ！そこでアンタに武器を作ってやる。」
「え……でも俺お金は持ってないっすよ？」
そうラクサスが言うとスカーレットは笑いながら言う。
「ドリアの倅ってことは、バレンタイン家の人間なんだろう？だったらアンタの家はウチ等の恩人だ。お金なんて取れないよ。」
「え……じゃあなんで……」
ラクサスが聞くと、後ろについてきていたアルフレッドは笑いながら答える。
「バレンタイン家ってのは、てめぇ自身の想像している5倍は悪魔の名家だと聞くがな。まぁ俺様みたいなノータリンにゃ詳しい話はわからねぇけど……。ともかく、バレンタイン家ってのは今現在陛下の軍門にいる方が不思議がられるらしい…俺様には分からんがな！」
そう言ってアルフレッドはガハハと笑う。
そしてとある巨大な建物に着いた。
「ここがアタシの工房さ！武器はここで作るんだよ。」
「は、はぁ…」
（やっぱり図体がでけぇと建物もでけぇな…）
ラクサスは心の奥で委縮しつつ建物を見上げる。そこには貧相な看板もかかっている。
「ガハハ！じゃあな！俺様はここまでだ。これから得意先に行かにゃならんでな。」
「あ、そうなんですか？」
「じゃあな。ガハハ！」
そう言ってアルフレッドは大笑いして道を折れて去って行く。
ラクサスは頭を下げると彼女はラクサスを肩に乗せて店に入っていく。
アルフレッドが街を歩いていると彼と同じくらいの陰がある。そこには身長2mほどの大男がいた。それは仮面をかぶり巨大なフード付きの外套を羽織っていた。
「な、なんだぁ…」
アルフレッドがそう驚いているが男は無言のままだ。
「‥‥‥」
大男はアルフレッドに会釈をすると進んでいった。
「アイツ…来てたんか…」
アルフレッドは一言呟くと道を歩いて行った。
