15話 ライドの実を手に入れよう!
ラクサスはしばらく揺れていた。目に明るい光が入って来る。ラクサスは朝が来たのかと思い目を開けた。
「ん?ここは…」
「クケェ~。」
そこは乗り慣れたグリフォンの背中の上であった。
「あぁ…ポチか…。何で‥‥」
「クケェ、クケェ、クケ…「やめい!」」
ラクサスは飛び起きてポチを制する。
「あら?起きた?」
そうラクサスに声をかけてきたのはアンジェラだった。ポチの手綱を持っている。
「ちょ、アンジェラさん!俺を誘拐したんすか!ポチなんかに乗せて!」
「何よ。感謝しなさいよ。ここまで運んだんだから。」
「そう言う問題じゃなくてですねぇ‥‥」
ラクサスは黙り込む。何でこの人に振り回されなければならないのか。こんな人だとは思わなかった。
「だって、一介の女性が一人であんな辺境に行くの大変じゃない。」
「それで俺を?!」
この人は魔術の研究をし過ぎて頭でもいかれたのではないかとさすがのラクサスも心配になった。と言うかよくグリフォンが許したものだ。ラクサスはこのグリフォンが自分以外の命令を聞くとは思わなかった。自分が目覚めた隷属魔術には彼も知らないような効用でもあるのだろうか…。
「まぁいいです…どうせ持って行くまで降ろさないんでしょう。」
ラクサスは呆れ呆れ言う。
「うん、素直でよろしい。じゃ、とりあえず…」
「はい。」
アンジェラは笑顔でこう言うのであった。
「ポチちゃんってどうやって操縦するんだっけ?」と
ラクサスとアンジェラを乗せたポチは実があると言われる丘を見つけた。
「ここにいったい何が……?」
ラクサスは訝しげに丘を見る。その丘には多くの樹が生い茂っていて地肌が見えない。
「ここにライドの実があるのよん。」
丘の頂上には小さな湖があり、その中にまた小さな小島があった。そこには一本の大樹が生えていた。
「これがライドの実…」
「そうね。とりあえずあそこの湖畔に降りましょうか。」
アンジェラがそう言うとグリフォンは湖畔に着地した。
「もう、いいわ。ありがとうね、ポチちゃん。」
「クケッ!クケェ~!」
悲しそうに鳴くポチにラクサスは優しくポチの首筋を撫でる。
「大丈夫だ。すぐに戻るから。」
「で、どうやってあの小島まで行くんですか?泳いでいくんすか?」
湖畔の岸に立ったラクサスは疑問を口にしてアンジェラに向かう。
「あら?そんなことをするわけないじゃない。」
そうアンジェラは言うとそこらの石を手に取ると湖の中に投げ込んだ。
「グえぇ…」
その時池の中が荒れ始めた。
「ひ、ヒィ…」
「この池の中には怪物がわんさかいるのよ。」
ラクサスはこの女について行ったことを今更ながら後悔してしまっていた。
「さぁ、あの魔物に食べられたくなかったら私の後に付いてきなさい。」
アンジェラはラクサスを手招きする。
「む、無理無理!絶対に無理っす!」
「そう?じゃ、食べられるのを待つのね。」
そう言うとアンジェラは先に小島に向かって歩き出した。
「ち、ちょっと待ってくださいよ!」
アンジェラはそのまま湖を歩いていく。このままでは沈んでしまうだろう。
「バカですか!アンタこのまま歩いたら湖に沈むの確定でしょうよ!入水自殺ですかコノヤロー!」
ラクサスは半分やけくそだった。湖に落ちても死なないが、この女と一緒ではまるで意味がないのだ。
「コノヤローはどっちよ。魔術師なら水面を歩けるのは当然よ?」
そう言うとアンジェラは湖面を歩く。水面に波紋が広がりラクサスは慌てる。
「えぇ‥‥歩けるんかい‥‥」
アンジェラの言うように水面を歩けるようだ。何かの加護なのかもしれない。
「早く来なさい。湖面にかけたからあなたも歩けるはずよ。」
アンジェラに急かされラクサスは意を決する。
「…….行きます。」
そう言って不安になりながらも湖面に足を置く。体重は…支えられた…。
そして、そのまま歩くことができたのだ……。
ラクサスはゆっくりと歩みを進めて進んでいく。そして小島に着いた。
島の真ん中にはひときわ高い樹がありその上の方に黄色の実がいくつか下がっていた。
「これが件の実ですか?」
「えぇ…登って取ればいいのよ。」
そう言ってアンジェラはするすると木を登っていく。
「はえぇ…….」
ラクサスも後を追おうとするが木登りなどほとんど経験がなく、アンジェラの真似して木を登ってみようとするが全くダメだった。
「登らなくても大丈夫よ。私が上から落とすから受け止めてちょうだい。」
「はい。」
ラクサスは真剣に返事をした。
「それじゃ落とすわよ~。」
「はい…….」
そう言った瞬間、アンジェラがラクサスの目の前に落ちてきた。そしてキャッチした。
「受け取れた~?」
「えぇ…」
ラクサスは木の上を見上げて言う。そして…
アンジェラのスカートから下着が見えていることに気付いた。
(いやぁ‥‥あの歳で派手下着かぁ……)
「何見てんのよ。」
「いや…….別に……歳の割にキツイ下着だなぁと‥‥」
ラクサスは目をそらす。それが彼女の逆鱗に触れたらしく樹の上から跳び蹴りをかましてくる。
「おりゃああ!」
「ギャース!」
アンジェラの蹴りがラクサスの脳天に激突し、ラクサスは地面を転げまわった。
「全く!レディーに失礼よ!」
「ふ、普通のレディーは人を誘拐してきませんって…」
頭を押さえて起き上がるラクサスにアンジェラは
「まぁいいわ。帰りましょう。」
と言った。




