13話 魔女の薬は信用できない
遺跡探査から少し経ったある日、ラクサスは街に買い物に出ていた。
(しかし、何度見ても魔王領っていう割に街が発展してるんだなぁ…もっと荒廃した荒野かと思ってた。)
ラクサスは街を見てそんな感想をもらす。
魔王領は魔王領と言う名前を取っているがそれ自体は非常に緩やかな王国である。皇帝こそ魔王であるが普通に人間も大勢いる。とはいえ、別に魔族が人間を奴隷にしているわけではない。逆もまたしかり。魔王領は人間と魔族が共存して暮らしている場所なのだ。
特にこの都市はその傾向が強く、人間に対して魔族も友好的な者が多い。
ラクサスはグリフォンに跨りながら街を歩く。
「しかしまぁ…このグリフォンの食い物にあんなに金がかかるとはな……。」
ラクサスはグリフォンに跨りながら、そうぼやく。
「クケェー」
「ん?何だ?腹が減ったのか?しっかしなぁ……グリフォンに食わすのは高いしな……。まぁ仕方ないか……。」
ラクサスはグリフォンから降りて、近くの果物屋に赴く。
「おっちゃん!何かないか?」
ラクサスがのれんをくぐった。すると、そこに見た顔がある
「あら?ドリアの息子じゃない。」
「あ、アンジェラさん!」
ラクサスが驚いた声を出す。アンジェラは相変わらず胸元の開いた露出の多い服に相変わらずの美貌である。手には竹籠を持っていた。
「ど、どうしてここに?」
「あら?どうしたもこうしたも魔法の試薬作りの材料集めだけれど?」
ラクサスが尋ねるとアンジェラはそう答える。
ラクサスはああそうかと感じた。彼女の事は父から聞いていた。とんでもない魔女であると……。
アンジェラはラクサスに近づいていく。
彼女はラクサスの頬に手を当てた。
そして、その額に自分の額を当てる。身長はアンジェラと同じくらいである。
ラクサスは突然の行動に顔を真っ赤にしてしまった。
「ねぇ、そこのグリフォンの毛でも爪でも素材として提供してくれないかしら?報酬は出すわよ?」
アンジェラは突然にそんなことを言った。
「いや、無理でしょうよ。そりゃあさすがに。」
「じゃ、じゃあ先っぽだけでもいいから。」
アンジェラはそう言ってラクサスの腕を引っ張る。
「嫌ですよ!一体何で魔女の研究に俺のペットを利用する必要があるんですか!」
ラクサスがそう言って腕を振り払う。
「あら?いいじゃないの?可愛いし。」
「ダメです!大体グリフォンの爪なんて何に使うんですか?」
「あなた知らないの?グリフォンの爪には特殊な薬効がいろいろあってね、何だっけ…あぁそうよ!媚薬…」
「お断りします!何が悲しくて媚薬の材料を提供するんですか!」
ラクサスがアンジェラの話を遮ってそう言った。
「あら?良いじゃない。特にあなたの隣にいる吸血鬼ちゃんなんかイチコロよ?」
ラクサスは両手をアンジェラの肩に置くと
「アンジェラさん…」
「二度とそんな意味の分からないことを言わないでください‥‥ありませんから!1億パーセントありませんから!」
「まったく最近の悪魔男子は…まぁいいわ。今私はそんなところで油を売ってる場合じゃないのよ。早く材料を調達しないと…」
どうやらアンジェラは何かの薬を作りたいらしい、まぁラクサスはそんなものに興味はないが。これでも魔王軍の四天王なのか?ラクサスは壮大な疑問を持って空を見上げる。アンジェラはその考えを見透かしたのか
「あなたまさか私のことを信用してないわね?」
「い、いえ信用してますとも!これでも同じ方に仕える同士ですから!」
ラクサスはそう両手を振って取り繕おうとする。一応これでも上官なので失礼のないようにしなければならない。
アンジェラはその様子を知ってか知らずか。
「まぁいいわ。信用しているならグリフォンに乗せなさい。荷物が重いのよ。」
ラクサスは気づかなかったが彼女の両手には買い物袋が下がっている。ラクサスはおもむろにいやそうな顔をして。
「あの‥‥俺をアッシー君だと思ってません?」
「あら?レディーの自宅にご招待出来るだけマシじゃない?お嫌い?」
アンジェラがニヤ付きながらそう言うのでラクサスは呆れ半分で後ろに案内する。
「落ちないでくださいよ…拾うの非常に面倒なので。」
「あら?これでもいつも箒に乗ってるからバランス感覚はいいはずだけど。」
「ふむ、じゃあ行くぞ!ポチ!」
「クケェ~。」
グリフォンはラクサスとアンジェラを乗せて空に旅立った。




