12話 魔王軍最高幹部会議
魔王城の奥、一体何があるかすら一般人には分からないようなところ。そこに明かりがついていた。部屋の中には巨大なソファが一つ。そこには現在3人の人間が座っている。
「先ほどマサムネ殿から報告があった。遺跡の探索は成功したそうだ。」
ソファの左側に座っている男。ドリア・バレンタインはそう二人に告げる。
「ガハハ、そうか!そりゃあ良かったな!」
右に座っているのは大鬼族のアルフレッドである。ドリアの2倍近い身長を誇り身体からは筋肉が盛り上がっている。魔王軍一のパワー系だ。
彼はソファーにどかりと腰掛けて大酒を煽っていた。
「うわっ!酒臭っ!ちょっと!体に匂いがつくじゃない!」
ドリアの対面に座っていた女がアルフレッドに文句を言う。
彼女は魔女のアンジェラ。胸元が大きく開いた丈の短い黒のドレスを着ていた。
「うるせぇなぁ。それしか楽しみがねぇんだ。」
「一体何で樽ごと飲むのかしら。行儀と言う概念を捨てて来たの?」
アルフレッドは酒樽を手で抱えてその中の酒を飲んでいた。それに
「効率化だよ!お前等魔女が三度の飯より愛してるもんだろ?!俺様は酒を注ぐ手間を省いてるんだ。」
「ただの脳筋バカの意見ね。」
アルフレッドの回答に呆れた顔をするアンジェラ。
その会話が終わったのを見計らって影が侵入してくる。
「マサムネ。帰って来たのね。」
「うむ…このマサムネ帰還した。」
黒装束の男マサムネ。それに次いでラクサスとエリスも現れる。
「ドリア様、アルフレッド様、アンジェラ様、初めまして。エリスです。」
そう言って吸血鬼エリスが頭を下げるので、ラクサスもつられて頭を下げる。
「あぁ、片方はドリアのせがれの悪魔な。で、もう片方はあぁあの吸血鬼か。俺が魔王軍四天王の一角にして獣人団、団長のアルフレッドだ。」
「私は魔法学研究会のアンジェラよ。よろしくね。」
ラクサスとエリスにとって初対面になる二人はそう挨拶を返す。
「マサムネよ。愚息が世話になったな。」
「いや、彼もきちんと貢献してくれた。感謝する。」
マサムネは遺跡の探索の進捗を三人に報告する。
「何?剣士が入り込んでいただと?」
アルフレッドは驚愕の表情をしてソファから立ち上がる。アンジェラは座りながら。
「あの王国…懲りないわねぇ…どれだけこちらを刺激すれば満足するのかしら?」
そう言って口にワインを含む。ドリアは何か考え込む。そしてマサムネに問う。
「それで……その剣士の特徴を聞かせてくれ。」
「承知した……」
そう言うとマサムネは影から人間を二人取り出した。
取り出された一人目は銀髪の剣士であった。薄い西洋鎧に腰からはロングソードが刺さっている。そして二人目はローブを被った女性だ。恐らく隣の剣士より若いのは確定だろう。それをみたドリアは少し嫌な予感がする。
「これは…騎士と聖女かね?この剣士は?」
「彼は王国の聖騎士かと、もう片方は恐らくそっちの教会所属の聖女だ…名は小生が誠心誠意調査中だが、小生の能力では…」
つまりどちらも王国の人間と言うことである。しかも聖女とはまさしく魔族の天敵、水と油。ドリアは頭を抑える。アルフレッドはそれを聞いて爆笑する。
「そうかそうか!それで侵入して捕まっちまった訳だ!ガハハハ!バカだ!」
「バカね。何を笑っているの。聖女は教会所属。彼女の生命は我々が握っているわ。それは逆に我が帝国にいつ教会が攻め込んでくるか分からないということ。アンタがバカみたく用を足しているときに攻めてくる恐れがあるの。」
アンジェラが大笑いするアルフレッドを戒める。
「ふん、それでどうすんだ?こいつらが起きるまで待つか?俺はそれでもいいぜ?ドリア。」
「いや今すぐ叩き起こす。それが英断だろうな。」
そうドリアはアンジェラに視線を送る。
「ったく仕方ないわね。」
そう言うとリリアは床に何か書き始めた。剣士と聖女の周りを囲むように複雑な魔法陣を書いていく。エリスはその様子を見ながら
「でも聖女相手に魔術が通じるんですか?教会側の人間でしょう?」
そうドリアに質問した。
それを横で聞いていたアンジェラは手を止めることなく答える。
「この城には本拠地バフが掛かっているから大丈夫よ。勇者軍の側にはこっちはアウェーだしね。」
そういって床に巨大な魔法陣を書き上げた。
アンジェラがそう唱えると魔法陣が薄く光る。
「半径2m以内には近づかないでね。国教会の魔術を応用しているから一瞬で存在が消え去るわ。」




