11話 遺跡の最深部到達! そして‥‥
ラクサスが遺跡の廊下の両側にあるものを注意深く見ているとある部屋に倒れている人間を見つけた。
「マサムネさん!あそこに倒れている人間たちが!先ほどの剣にやられたようですね。」
「何?!今行く…」
倒れている人間は先ほどの町長が言っていた探査隊だろうか…
脈拍を図ってみるとまだ息がある様子だ。
「ラクサス…グリフォンの背中にこいつらを乗せられるか?」
「無論です!」
そう言ってラクサスは一瞬でグリフォンの背中に人々を乗せ始めた。
「マサムネさん。これは魔物に襲われたんでしょうか。」
エリスが神妙な顔で質問する。するとマサムネは
「静かか…静かすぎるな…」
そう神妙な顔で口を開く。
「静かすぎるってことですか?」
そう尋ねたエリスにマサムネは
「通常ウン千年放置された建物だぞ?魔物が棲みつき、独自の生態系を構築しているのが必定。だが、この遺跡に来て今までゴーストの一体も見かけていないのだ…」
と答えた。考えれば久しく開いていない遺跡の門はそんな簡単に開くものだろうか…
「まさかこの遺跡はごく最近入ったものがいる…」
マサムネはそう呟いた。三人はより慎重になって進んでいく。そうして遺跡の最奥にたどり着いた。遺跡は大きな扉があって剣を持った悪魔の紋章が彫られている。マサムネは紋章に触れると
「やはり、巧妙に偽装されているが直近に侵入者がいるな…」
「じゃ、じゃあその侵入者があの人たちを?」
エリスがマサムネに尋ねる。
「その可能性も否定できない……ラクサス!結界を解くぞ。」
「は、はい!」
マサムネが呪文を唱え始めると大きな扉の紋章が光り出し、門が重い音を立ててゆっくりと間から光を出しながら開いていく。
「開いたわね。じゃ、行きましょうか。」
そう言ってエリスが門の中に入っていく。
門をくぐりかけたところで突然ラクサスが
「伏せろ!」
と言ってエリスを突き飛ばした。
「えぇぇぇぇ!アンタ何を?!」
ラクサスはその言葉を聞くことなく矛を構えると何かを受けた。金属音が鳴って火花が散る。
「やっぱり居やがったか…」
石室は無人ではなかった。突然剣士が襲い掛かって来たのだ。
「何もんだ!野盗の一味か!それとも単独の墓荒らしか!」
ラクサスの問いに剣士は答えない。ただ
「うぐぐぐ!」
と唸り声をあげてラクサスに再び切りかかる。
「少しはしゃべれよ!」
そう叫びながら矛で受けるが、力がやけに強い…
「これじゃあただの魔物と差がないじゃねーか!」
すると、エリスが
「仕方ないわね。援護するわ!」
と言って、剣を抜き放って斬りかかる。
「ぬぅぅ……」
剣士はうめき声をあげたが、エリスの剣と火花を散らす。
「つ、強い‥‥」
エリスはそう漏らした。ラクサスも加勢するが、剣士は身の丈ほどもある大剣を振り回しながら襲い来るので苦戦する。
「何でこんなことを!」
エリスが叫ぶと、剣士は一瞬手を止めるがまた剣を構える。
「ちょこまかと動きやがって……」
すると、後ろから
「ラクサス‥‥エリス…下がっていろ…」
マサムネが居合い切りの体勢に入った。
「マサムネさん?」
ラクサスが思わず口に出すと、マサムネは剣を鞘から一気に引き抜く。
『大業物 闇鴉!』
そう唱えて剣を袈裟に構える。黒い影が刃の軌跡を描いて剣士に向かって行った。
「あ……」
とエリスが言う頃には剣士に影の刃が届く。しかし剣士はそれを両手剣で撫で切った。
マサムネはそれを確認する前に影を伝った瞬間移動で剣士の前に出現し、即座に剣戟を打ち込み続ける。
ラクサスはそれを茫然と見ていることしかできなかった。その隣にエリスが立って
「しっかり見なさい。あれがアタシたちの魔王軍四天王。『影武者』マサムネの本気よ。」
「あれがか…流石魔王軍最強の剣士…」
ラクサスは息をのんで見つめる。すると、暗い石室に他にも人物がいることが分かる。
ラクサスより背が低そうだ。しかし、その手にあるものを見逃してはいけない。少し光っているものそれはナイフだ…
その人物は無言でマサムネに飛びかかってナイフを突き刺した…と思ったところでマサムネの姿が消え、影に代わる。
「お嬢…突然何か用ですか?」
そのまま背後に立ったかと思うと峰うちする。
「?!」
「おりゃあああ!」
「エマ!」
それに混乱した剣士の隙を突いたラクサスは矛で頭を打ちすえる。
剣士は不意を突かれるが、剣で斬り返してきた。それでラクサスは吹き飛ばされて、遺跡の壁に打ち付けられる。
「くそっ!これじゃあ魔物と大差ないじゃないか!」
ラクサスは矛を剣士に投げつける。
ラクサスは剣を矛先で受けるとてこの原理で剣を弾き飛ばす。
「一体何なんだよ…」
剣を飛ばされた剣士が剣に気を取られている隙にエリスが背中から首筋に噛みつく。
「相手を眠らせるのは吸血鬼の専門よ!」
エリスはそう言うと剣士の首に噛みついた。
「うぐぐ…」
血を吸われた剣士は抵抗する力を失い倒れ込んだ。
「あ~美味しかった♪」
エリスは口元を舌で拭うとそう妖艶にほほ笑んだ。
一方のマサムネは後輩の活躍に応えるようにナイフを持っていた方を縛り上げた。
「お主たちが健闘している間に小生がもう一人の方も縛っておいた…巧みな連携に感謝する…眠らせておいてくれ。」
言われてラクサスはマサムネの方に振り返る。
「これで一応全て回ったんすかね?」
「うむ、実際この遺跡の部屋はこれで最後だが…確認しておくことがある。」
そう言ってマサムネは二人を連れて奥の台を見る。その上には何もなかった。
「秘宝が奪われたか…」
マサムネはそう残念そうにつぶやく。
「本来ここには神話の時代の武器があった…この神殿に元々祀られていた神に関係するものだ…小生がラクサスの父君のドリア殿から伝え聞いた話だが…」
「野盗ですかね?でもこの二人は持っていませんでしたけれど。」
そう聞くエリスに
「う~む、とりあえず小生たちだけでどうもできない。とりあえず当初の目的は果たしたわけだ。戻って街で骨を休めよう。」
とマサムネは二人を諭した。ラクサスもエリスもその意見に賛同したのだった。
ラクサス達は町民から泣いて感謝された。
「ありがとうございます!愚弟の命を救っていただいて!」
先ほどの町長が顔からあらゆる液体を垂らして喜んでいる。ラクサスはそのせいで腕をぶんぶん振られる。どうらら町長の弟が無謀にも探索隊の大将に立候補したらしい…
「い、いえ‥‥それほどでも…あるかもしれませんね!」
「一体何を調子に乗っているの。止めを刺したのはアタシでしょうが!」
ラクサスとエリスは相変わらず揉めている。
「お主たちは休んでいて構わない。小生はあのお方に報告を行うからあ。それで終わったら贄でも戴くとするか。」
「え?贄?どういうことですか?」
ラクサスが頭に?を浮かべるとエリスが耳打ちする。
「あの人はね。ああ見えて重度の厨二病患者なのよ…」
「は、はぁ…」
こうして3人の遺跡探索はとある疑問を残して終わったのだった。




