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3話 現実

 ハインドゴーン領主 アルマー邸


 屋敷内は格式のある場所とは思えぬほど混乱した状況であった。領主であるハルバード・アルマーは周囲の騎士団員たちに情報を求め続けていた。


 「おい!状況はどうなっている!南西区画が壊滅しているというのは本当なのか!おい、お前!状況を伝えろ!」と走り回る騎士を捕まえる。


 甲冑やその雰囲気から、上級階級の騎士であることが察せられた男は、アルマーに声をかけられて彼の方へ向き直り口を開く。「アルマー様、申し訳ありません。騎士団内の者も全貌を把握できておりません。ただ一つ、間違いないのは襲撃は始まっているという事だけです」


 アルマーは激高し、机をたたく。「そんな事は私も知っている!進展はないのかと聞いているのだ!」


 「はい。依然として進展はありません。騎士団は小隊を作り、斥候を放ちましたがただ一つも戻っていません。南西区画は赤黒い霧と炎が見えるのみです。この状況から察するに、件の星の民の進行である可能性が高いと思われます」と静かに答える。


 アルマーはその言葉を聞き、唸る。「そうであろうなッ!だが、私の前で推測を話すなッ!次そのような発言をしたら、貴様から南西区画に送ってやるからなッ」と騎士を睨む。


 「失礼いたしました。正しい情報が入り次第、直ちにお耳に入るよういたします。」と全く動じない様子で答える。


 アルマーはその様子を睨み、「そうしろッ!行けッ!」と命じる。


 騎士は一礼し、「失礼いたします」と退室する。



 その様子を部屋の隅で見ていた二人がその様子を面白そうに見守っていた。


 騎士が退室したのを見た後、「おい、スレイヴ共ッ!シャルロットはどうしたッ!何故来ないッ!」と二人を睨む。


 「申し訳ございません、マスター。2人は中央街の巡回に出ております。緊急招集をなさいますか?」と丁寧な口調で尋ねる。


 アルマーは不機嫌そうに鼻を鳴らし、「二人なんぞ言っておらんわ。図に乗るなよ、スレイヴ。私はシャルロットは何処だと聞いただけだ。クソッ!こんな時に何をしておるのだッ!こんな事であれば、あんな許可などしなければ…」とブツブツと呟いている。



 直後、2人は何かを察したようにアルマーの側に展開する。アルマーがその動きに驚く間もなく、目の前の扉が切り刻まれて砕ける。そこには、フードを被って赤黒いハルバードを握った人物が立っていた。


 「お、おいッ!このアルマーの屋敷に何をしているのだッ!」とアルマーが吠える。


 フードの人物は不敵に笑い、「あらあら、その名前は聞いたことがあるわ。アルマー家。ハインドゴーンの領主様ね。お目にかかれて光栄だわ、無能なお方?」と呟く。


 アルマーは目を血走らせ、「お前、今何と言ったッ!もう一度言ってみろッ!」と吠える。


 「もう一度聞きたいなんて、そういうのが好みなの?なら、聞こえるように言ってあげるわ」といった途端、姿が消える。 

 直後、大きな金属音と衝撃が轟き、アルマーが吹き飛ぶ。「あら、凄いわね。ここまで適応している人間…いいえ、混ざり者は珍しいわ」と笑いながら飛び退く。


 「な、何が起こった…?」と地面に伏すアルマーが呟く。近くで守りの姿勢をとっていた女性が振り返らずに「襲撃です、マスター。ここはリックに任せて、移動します。どのような力を有しているのかわかりませんので。掴まってください」と言ってアルマーを抱える。そして、背後に飛び退き、ガラスを割って外に飛び出す。アルマーの悲鳴が遠ざかり、彼らが離れていく。


 「あら、逃げられちゃったわ。残念。でもいいわ。貴方が噂に聞くスレイヴ家の人間なのね。会いたかったわ」と笑う。


 「おや、私達を知っているのか。光栄だな」


 「貴方達の事はもちろん知っているわ。星の民と人類の混ざり者。旧世界の失敗作。それが貴方達だものね」

 

 その言葉にリックは口を噤む。


 「あら、知らなかったの?なら教えてあげる。私は旧世界の頃からこの目で見ていたから。旧世界の人類は星の民と出会って、その力に魅了された。旧世界は発展した世界だったけれど、今よりも力が重要視された。文明は頭打ちとなり、人類は革命的な力を求めた。それが、星の力だった。星の民は人類の要求を飲み、彼らに力を与えた。星の民はそれが彼らには過ぎた力であることが分かっていたから。けれど、結果は違った。少数だけど、その力を受け止められたの。星の民はそれを面白がって流星計画という物を始めた。初めは遊びだった。けれど、それが銀河を脅かす能力の研究であることが分かった。私達星の民の中でも特異な存在、例えば私ね。私は自分の力の10%程度しか出せない。これは、この体で許容できる限界だとか色々言われてるけれど、そんな事はどうでもいいの。人類は、そんな私達の使えていない力を受け止めて使うことが出来た。これを研究して、いずれ私達にその力を再譲渡させることができれば、私達は神をも凌駕する圧倒的な力を有することが出来るはずだったの」


 「だが、そうはならなかったんだろ?」


 女は苛立ちを見せ、「そうよ、私達は見誤った。人類という欲望の化身どもの渇望を。奴らは研究の事を何処からか嗅ぎつけ、奪おうとした。それが人類だけでは成し遂げられないと知らずに」


 「哀れだな。全く哀れだ。君達は人類という存在をただの研究の素材としてしか見なかった。だが、私達には君達に似た知性を有し、君達を打倒する力があった。そこまでの知性がありながら、推測されるリスクを考えなかった。君達は驕っていたんだよ。自分達は惑星に囚われた生命体の可能性を」


 「ええ、そうね。私達は人類などという下等生物が星の民に反逆するとは思っていなかった。だから、計画に綻びが生じた。なら、どうしてそんな事が下等生物に出来たのか。第一に、星の民の力を知らなかったから。第二に、立場を分かっていなかったから。なら、することは簡単よね。そう、星の民の威光をこの惑星に知らしめればいいの。彼女はそうした。すると、どうなったと思う?ゴミ共は自らの文明をも滅ぼす兵器を使い、この惑星を終わらせようとした。だから、緊急の手段として作っていた三機の機械生命体を起動した。旧世界は滅び、文明はその辺の下等生物と同等それ以下となった。これが、人類の誰も記録していない、終末戦争の全容よ。自らの住処である惑星をも汚染してまで抵抗するなんて、本当に愚かな生命体」

 「あら、話が逸れたわね。貴方達スレイヴ家は、この研究の遺産。星の民の力を付与された人類との何千、何万も後の子孫。研究は成功していなかった。貴方達は星の民の力を成長させることが出来なかったから。貴方達は人類にとっては脅威となるほどの力を有している。けれど、私達星の民を凌駕するほど力を成長させることは出来なかった。常に変質し、異なる力を顕現させ、一貫性はなく、力の強弱も様々。貴方達にはガッカリだわ」


 リックは武器を再び構え、「そうか。で、そこまで私に聞かせたのは何故だ?その話のように、私を掌握しようとしていたのか?」と尋ねる。


 女はその様子を見て「あら、貴方は自分の事を過大評価しているのね。私は貴方の力などこれっぽっちも興味がないの。わざわざ話したのは、時間がかかるから。この街が地獄になるのがね?」と笑う。


 「ほう。つまり君は、私が何もせずに話を聞いていたと思っていたのか?星の民は、その終末戦争とやらから何も学んでいないようだ。人類は、何処までも卑怯で、貪欲で、意地汚い存在であることを」と言って笑う。


 「虚勢を張ったところで意味はないわよ」


 「虚勢ではないわ。これ、落とし物よ?」といつの間にかアルマーを抱えていた出たはずの女性が戻ってきて、何かを投げる。


 それがフードの女の足元に突き刺さると、直後に火柱を立てる。


 「ばっちりなタイミングだ、イリーゼ。さて、2人でも勝てるかね」と言いつつ、2人で天井を突き破る。直後、アルマーの執務室は切り刻まれ、形を失う。

 屋根に飛び乗り、半壊する屋敷を見守る。「これは凄いわねえ」「全く、星の民ってのはとんでもない」

 

 そう呟いていると、目の前に人影が降り立つ。「調子に乗らないでください。せっかく優しく壊してあげようと思っていたのに。ここからは、手荒に行きます。その為に、まず貴方達を刻みます。」

 人影が消え、赤黒い軌跡が一瞬煌めく。直後、リックとイリーゼは地表まで叩きつけられる。「あら、この速さを受け止めましたか。予想以上に楽しめそうです」と見下しながら呟く。


 イリーゼとリックは直ぐに体勢を整え、降り立つフードの女に向かって地面を蹴る。

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