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里見八ニャン伝  作者: ワタベミキヤ
猫剣士立志編
7/37

第7話 礼の巻

『礼の玉』を持つ八ニャン士のニャン子。

里見村3番地にある老舗旅館に住んでいる。


金使いと性格が少々荒く、気に入らないと飛び蹴りをするクセがある。

遊郭の花魁おいらんに憧ていて、いつも嘘くさい江戸弁で話す。


左胸に星の模様がある。

この平和な里見村で、毎年開催されるビッグイベントがあった。それは『里見村ニャン姫コンテスト』である。


今年で56年目となるこのビッグイベントは、村で1番美しい女猫を決めるというコンテストで、優勝者には1年間『ニャン姫』という称号が与えられた。大したことないと思われがちだが、プライドの高い女猫たちにとってこのニャン姫というのは憧れの名前なのである。


八ニャン士であるセクシーニャン子は、今までヘアメイク・ネイル・ファッション・エステなど究極の美を手に入れてきた。このニャン姫コンテストで優勝する為に、雨の日も風の日も日々努力をしてきたのだ。

そしてニャン子はこのコンテストの日が来るのを、1年間ずっと待ち続けていた。


「ホーッホッホ! 今日は何だかいい天気だね〜。 今年もこのニャン姫コンテストがやって来たよ〜」


ニャン子は満を持してコンテスト会場に現れ、高笑いしながら立っていた。自信にあふれるその姿は、まるでコンテストに優勝したかのようにも見える。そこへ、いやらしい顔と声を出しながらニャン助がやって来た。

ちなみにこの忍び猫のニャン助は、村ではかなりスケべで有名な猫である。


「ニャン子、俺も毎年このニャン姫コンテストが楽しみなんだよん。 シッシッシ!」

「おい、ニャンスケベ。 お前さんはスケベなんだから、このコンテストに来るんじゃないよ!」

「いいじゃねぇかよん。 俺たちの清き1票で優勝が決まるんだぜ〜ん、シッシッシ!」

「お前さんのそのスケベの1票が、いつも微妙なんだよ〜。 この村には色男猫がいないのかね〜」


このニャン姫コンテストの審査は、自分の好きな女猫の出場者に票を入れるだけのシンプルなコンテストである。老若男女問わず村民の誰もが投票できる為、当然スケベのニャン助にも票は持っていた。


「今年のニャン子はなんだか余裕なんだねん。 なんか秘策でもあるのかなん?」

「当たり前じゃないか〜。 あたいがこのニャン姫コンテストの為に、どれだけ美にお金を費やしたと思ってんだい! それと里見村の人たちには、いつもいつもアピールしながらこれまで生きてきたんだよ」

「アピール? 何の為のん?」


ニャン子は愛用の長いキセルを持ち、華やかな花魁のポーズを決めた。


「このあたいこそが、1番ニャン姫の名にふさわしい女猫だってね〜。 今日からあたいはセクシーニャン子じゃなく、ビューティーニャン姫様な〜の〜さぁ〜!」


ちなみに花魁に憧れているニャン子は、このキセルで吸ったことは1度もない。


すると、今度はあのニャン斗が多くの女猫ちゃんを引き連れてヘラヘラと笑いながらやって来た。


「やぁやぁ、八ニャン士の君たちぃ! 今日は待ちに待ったニャン姫コンテストだねぇ」

「チッ! またあのクセが強くて面倒臭いヤツがここへやって来たよ。 あいつを見るとイライラする」

「確かにセクシーニャン子ちゃんも可愛いけどさぁ、出場者には僕のファンクラブ会員である女猫ちゃんたちもいるから、今年も優勝するのは難しいねぇ」


自称イケメンのニャン斗にはファンクラブがあり、なぜかいつも多くの女猫ちゃんたちに囲まれていた。


「ニャン斗、大きなお世話だよ。 あたいだってね、このコンテストに命かけてんだよ!」

「去年のコンテストはうちの女猫ちゃんが2位を取ったからねぇ。 あれぇ? ニャン子ちゃんは去年のコンテスト何位だったのかなぁ?」

「うっ・・・去年は13位です」

「ええっ、13位? ハハハハ!」

「ニャン子先輩、13位ですかぁ? か〜わいい!」


ニャン斗とファンクラブの女猫ちゃんからバカにされると、ニャン子は怒りに震えていた。


「ちょいとあんたたち、いい加減にしなっ! それ以上笑うと飛び蹴りするよ。 今年のあたいはね、いつもとはひと味違うんだよ!」

「それは楽しみだねぇ。 まぁ、当然僕はファンクラブの女猫ちゃんに1票を入れるけどねぇ」

「ちっ、べらぼうめ。 おととい来やがれ! 今年の優勝はあたいのもんだよ」


すると、ニャン斗からバカにされイライラしているニャン子の目の前に、あのキューティーニャン蜜が腕を組んでドヤ顔しながら現れた。


「優勝? ニャン子ちゃん、そうはいかないにゃん。 なんせ今年のニャン姫コンテストには、このキューティーニャン蜜ちゃんが参加するからにゃ!」

「おやおや、珍しいねぇ? 今年はニャン蜜ちゃんもこのコンテストに出るのか〜い?」

「前からニャン姫コンテストがあるのは知っていたけど、なんかいつも自信がなかったにゃ。 でも私も優勝する為に毎日歌とかダンスとか頑張ってきたから、いつも以上に気合いが入ってるにゃ!」


ニャン蜜はコンテストに出場するのは初めてだが、里見村の中では可愛い女猫として結構人気があった。

ちなみに女猫であるこのニャン子とニャン蜜は、八ニャン士結成の時からライバルである。


ニャン子は可愛いニャン蜜の姿に、思わず息をのむ。


「(独り言)ヤ、ヤバい。 こいつは面倒な敵が現れたねぇ。 いつもクソ生意気な小娘は、あたいから見ても超可愛い女猫じゃないか」


突然のニャン蜜の参加で、あのスケベのニャン助はさらに興奮していた。


「今回はキューティーニャン蜜ちゃんも出るのか〜いん。 こりゃ楽しみだな〜ん。 シッシッシ!」

「あ、そうそうニャン蜜ちゃん。 このニャン助はスケベ猫だから、十分お気をつけあそばせ」

「ええ、ニャン助はスケベかにゃ。 じゃあ、この可愛いニャン蜜ちゃんに1票入れてにゃん♡」


ニャン蜜はパチンとウィンクをすると、ニャン助は鼻の下を伸ばしてデレデレになった。そのなんとも情けないニャン助の顔を見たニャン子は呆れて溜め息をつきながら頭を抱えた。


「はあ〜。 ダメだ、こりゃ」

「イヤ〜ン。 俺はニャン蜜ちゃんに1票入れよ〜ん!」


それを見たニャン斗はニャン助に叫ぶ。


「ちょっとちょっとぉ、ニャン助く〜ん! コンテストの投票は僕のファンクラブの女猫ちゃんに決まっているじゃないかぁ!」

「ニャン斗、それはコンテストの内容次第だねん。 コンテストは公平にしないとねん」

「ニャン助さ〜ん! 私たちニャン斗ファンクラブの女猫ちゃんにも1票入れてねぇ♡」

「はいは〜い。 ニャン助さんはニャン斗ファンクラブの女猫ちゃんに決めてるよ〜ん!」


ニャン子とニャン蜜とニャン斗 コケる。



ニャン子は愛用の長いキセルでコンテスト会場を指しながら大声で叫んだ。


「お前ら、今年のあたいをナ〜メ〜んじゃないよ! さっきからガチャガチャ言ってないで、あの会場で白黒つけようじゃないか〜」


すると、コンテスト会場からアナウンスが流れた。


「さあ、今年も『第56回 里見村ニャン姫コンテスト』が始まりま〜す! 里見村の皆さん、元気ですかぁ!」

「おおおお!」

「ではコンテストが始まる前に、前回の優勝者である55代目ニャン姫ちゃんから大会宣言をしていただきます。 ではニャン姫ちゃん、どうぞ!」


すると会場のステージの中央にスポットライトがあたり、可愛い猫アイドルのニャン姫が手を振りながら登場した。ニャン姫が華やかに登場すると、会場にいる観客が興奮して大歓声を上げた。


「はぁい皆さ〜ん、こんにちはぁ! 里見村No.1猫アイドルのニャン姫で〜す♡」

「おお! ニャン姫ちゃ〜ん!」

「私と一緒にぃ、今年も楽しくコンテストしましょうねぇ。 ニャン!ニャン!ニャン!」


それを見ていたニャン助とニャン斗も、ステージのニャン姫に合わせて興奮する。


「ニャン!ニャン!ニャン!」

「もう一回だよぉ♡ ニャン!ニャン!ニャ〜ン!」

「ニャン!ニャン!ニャ〜ン!」

「おい、てめ〜ら。 いつまでもニャンニャンニャンニャンってうるさいんだよ!」


イライラしたニャン子は得意の飛び蹴りすると、ニャン助とニャン斗はどこか遠くへ飛んで行った。


一緒に見ていたニャン蜜は、ステージに出てきたニャン姫にずっと見とれていた。なぜならニャン蜜は猫アイドルオタクで、ニャン姫という存在は永遠の憧れだからである。


「ニャン姫ちゃんは、まるで花束みたいに美しくて可愛いにゃあ。 私もあんな猫アイドルになりたいにゃあ」

「ふん、花束がなんだい! 花っていうのはだねぇ、花は野に咲くからこそ美しいもんなんだよ!」

「あらニャン子ちゃん、なかなか粋なこと言うにゃ」

「あたりきしゃりきのこんこんきちだよ〜。 このあたいを誰だと思ってんだい!」


ニャン子は客席に笑顔で手を振っているニャン姫を見て、鋭い目でジロリと睨んだ。


「どうやら今年は、アレをやるしかないようだね〜!」


ニャン子の目がキラリと光った。

おっと、今年のニャン姫コンテストはキューティーニャン蜜ちゃんも参加することになりました。


去年のコンテストで13位だったセクシーニャン子ちゃんは、何かとっておきの秘策があるみたいですよ。


さて今年のコンテストは誰が優勝して、あの輝かしい『ニャン姫』の称号を手にするのでしょうか?


次回「華の巻」をお送りします。

セクシーニャン子がコンテストで見せたとんでもないパフォーマンスとは?


お楽しみニャン!

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