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里見八ニャン伝  作者: ワタベミキヤ
東野郡大戦争編
38/43

第1話 友の巻

江戸時代後期、曲亭馬琴(きょくていばきん)によって描かれた長編伝奇小説


南総里見八犬伝なんそうさとみはっけんでん


室町時代に里見家の伏姫ふせひめと八犬士たちが、あらゆる敵と戦う痛快娯楽の物語。

仁義礼智(じんぎれいち)忠信考悌(ちゅうしんこうてい)の8つの徳目をもった八犬士の活躍は、今もなお映画や舞台で表現され、多くの人々がこの物語を知っていることであろう。


いや、知っている人だけ知っている有名な物語である。


しかしここに描かれている『里見八ニャン伝』とは、山里外れた里見村を守る為に8人の猫剣士があらゆる敵と戦うスペクタル・アドベンチャー・ストーリー!


と言いたいところだが、どうやらそうではないらしい。


村長の娘の伏夜が、猫の守護神の大猫神様を助けたことによって作られた猫剣士の里見八ニャン士。


いつもダラダラと生きている八ニャン士は、猫剣士トレーナーの風ニャン神と雷ニャン神からあらゆる厳しい訓練に耐えて無事に修業を終える。

そして大トカゲのペロンチョと大ムカデのゲロッパを見事に退治し、誘拐された伏夜を守ることが出来た。


はたしてこれからも八ニャン士は、里見村と伏夜を守ることが出来るであろうか?


『里見八ニャン伝』は、そんな8人の猫たちのドタバタハチャメチャな物語である。

日本の山奥のさらにまた奥に、小さな村の集落『東野郡とうのぐん』があった。その東野郡には4つの村があり、村にはそれぞれ多くの村民と生物が共存して暮らしていた。


猫が多い村の『里見村さとみむら

狸が多い村の『大和田村おおわだむら

鳥が多い村の『由美村ゆみむら

蛙が多い村の『中谷村なかたにむら


特に里見村の猫と大和田村の狸の仲が悪いというのは、今さらここで言うまでもない。そしてこの山奥にある平和な東野郡で、4つの村を巻き込む大戦争が勃発した。

それは・・・


『東野郡大戦争(TOUNO WARS)』



ある日のこと、里見村1番地にある村長の家に、1人の若い女性が訪ねて来た。その若い女性は、少し緊張した顔をしながら似星家のインターホンを押した。


「はぁい、どなたですか?」

「伏ちゃん、私よ!」


『伏ちゃん』と言うのは、連太郎の1人娘である伏夜ふせよのことである。そして玄関の前にいた若い女性とは、伏夜の高校時代の同級生だった春花はるかだった。


「ああ、春ちゃん! 久しぶりだねぇ!」


伏夜と春花が会ったのは卒業以来で、久しぶりに会った2人は喜びながら抱き合った。


「伏ちゃん、久しぶりだね。 何年ぶりかなぁ?」

「高校卒業以来だから、もう何年ぶりだなんて分かんなくなっちゃったよ」

「ハハハハ、お互い歳とったねぇ」


歳をとったといっても、この2人はまだ20歳である。


伏夜は里見村1番地、そして春花は大和田村1番地に住んでいる。伏夜と春花は違う村に住んでいるが、2人とも『東野郡女子高校』で同じクラスメイトの親友だった。里見村の猫と大和田村の狸は仲悪いことで有名だが、この2人はそんな揉め事に関係なく仲が良かった。


「ところで伏ちゃん、ちょっと話しがあるんだけど今時間ある?」

「いいよ、久しぶりに東野川の河原へ行こうよ!」


こうして伏夜と春花は、里見村と大和田村の間に流れている東野川へ出かけた。


一方、街から買い物して帰っている里見村村長の似星(にぼし)連太郎が、八ニャン士のニャン太郎を連れて歩いていた。


「おい、ニャン太郎。 ダラダラしてないで早く歩きなさい」

「ダンナ様、ちょっと待って下さいよぉ。 いくら何でも、ちょっと多く買い物しすぎじゃないですか?」

「そんなことはない、これでも減らした方だ」

「減らした方? いくら安いからといって、トイレットペーパーを6袋と洗剤6本を買うことないでしょ?」


いつも騒がしいことで有名なこの似星連太郎は、何でも多くストックしてしまう『ストック癖』があった。しかし本人はまるで自覚がない。


「ニャン太郎、もしトイレットペーパーが無くなったらどうする? 洗剤が無くなったらどうする?」

「どうするどうするって、そりゃあ困りますけど」

「だろ? だからそれを考えただけでもワシは夜も眠れんのだよ」


ニャン太郎 細い目をする。


「(独り言)ったく、よく言うよ。 いつもうるさいくらいガーガーと寝てるくせに」

「そして私は早く家に帰って、お母さんとイチャイチャニャンニャンをしなくてはいかんのだ。 だからダラダラしてないで、さっさと歩きなさい!」

「へぇい。 本当にダンナ様は奥様とイチャイチャニャンニャンをすることが大好きなんですね」


ここで勘違いされても困るが、『イチャイチャニャンニャン』とはお茶漬けを食べることである。

ニャン太郎と連太郎がそんなくだらない話をしていると、2人は遠くで歩いている伏夜と春花の姿を見かける。


「あ、伏夜様だ。 となりの女の人は誰だろう?」

「ん? ああ、あれは春花ちゃんだよ。 伏夜の高校時代の友達だ」

「その春花さんっていう方は里見村の方ですか?」

「いや、春ちゃんは確か大和田村の女の子だよ」

「ええ! 春花さんっていう方は、あの大和田村の人なんですかぁ?」

「東野郡の4つの村にある学校は小さくて少ないから、村が違くても高校が一緒になることがある。 何も里見村と大和田村に住んでいる皆んなが、お前たちみたいに争っているわけではないんだぞ」


それを聞いて納得いかないニャン太郎。


「(独り言)だけど、僕は大和田村の狸からボコボコにされましたけどね」

「特に春ちゃんは東野郡女子高校で勉強や運動もできる人気者だったからなぁ。 春ちゃんはこの東野郡でもかなり有名な女の子だよ」

「ああ、だから春花さんはあんなに可愛いんですね」


それを聞いた連太郎はニャン太郎を殴る。


「バカモーン、ワシの伏夜の方が東野郡で1番可愛いに決まってるだろ! ニャン太郎、バカなことを言ってないで早く帰るぞ!」

「ダンナ様、何も殴ることないじゃないですかぁ! DV反対だぁ!」


知っての通り、1人娘を激愛する連太郎はバカ親なのである。

それからニャン太郎と連太郎は、そんなバカなやり取りをしながら家へと帰って行った。



ここは東野川の河原。

伏夜と春花は河川敷にあるベンチに座りながら、一緒に昔話をしながら笑っていた。


「ハハハ、そうそう。 伏ちゃんはマイク無しでも学校中に響き渡るくらい大声なんだよねぇ」

「私の大声は里見村でも大問題になっているみたい、フフフ。 ところで春ちゃん、話しって何?」

「あ、そうだった。 ウワサでは、里見村には『八ニャン士』っていう猫の剣士がいるって聞いたんだけど」


春花から予想外のことを聞かれて戸惑う伏夜。


「八ニャン士? まぁいることはいるけど、それがどうかしたの?」

「ふぅん。 で、その猫剣士の八ニャン士って強いの?」

「そうねぇ、強いような弱いような? 春ちゃん、何でいきなりそんなことを聞くの?」


春花はベンチから立ち上がり、意外なことを口にした。


「あのね・・・実は私、大和田村で狸剣士を結成しようと思っているの」

「ええ! 大和田村の狸剣士ぃ?」


伏夜は響き渡るくらい大声で叫ぶと、そのあまりにも大きい声の音量で東野川にいた鳥が一斉に飛んで行った。


「そう! その名も『大和田八ポン士』だよ!」

「大和田・・・八ポン士?」

「そこで伏ちゃんにお願いがあって、八ニャン士がどんな剣士だか見てみたいの」

「そ、そうなんだ。 でも、何で春ちゃんが狸剣士を結成しなきゃいけないの?」

「それはまぁ、今度話しするね。 ねぇ伏ちゃん、お願いだから八ニャン士に会わせてくれない?」

「う、うん。 また今度紹介するね」


何か嫌な予感をした伏夜は、春花に八ニャン士を紹介することを少し嫌がる。


「ありがとう、伏ちゃん。 それじゃあ、また連絡するね!」

「春ちゃん、今度はゆっくり食事でもしながら恋の話でもしようよ」

「分かった、じゃあ私は村に帰るね。 バイバイ、伏ちゃん!」

「う、うん。 バイバイ、春ちゃん!」


こうして春花は里見村と大和田村の間に架かる東野橋を渡って帰って行った。伏夜は春花の姿が見えなくなるまで笑顔で手を振ると、手を下ろしながらそっと呟く。


「大和田八ポン士か・・・何か嫌な予感がするなぁ」


伏夜は何かモヤモヤな気持ちになりながら、自分の家へ帰って行った。


そしてゆっくりと東野橋を渡る春花は、怪しい目を光らせながら不気味な笑みを浮かべていた。


「フッフッフ、里見八ニャン士ねぇ。 伏夜、これからが楽しみだよ!」


東野川に吹く風で前髪が揺れると、春花の額には何かキラリと光る怪しい文字が浮かび上がっていた。

はい、こうして始まりました『里見八ニャン伝 東野郡大戦争』。

伏夜さんの同級生の春花ちゃんとは、一体何者なんでしょうか?

そして大和田八ポン士とは、はたしてどんな狸剣士なのでしょうか?


次回「覇の巻」をお送りします。

ついに大和田村の狸剣士である八ポン士が登場!


お楽しみニャン!

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