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里見八ニャン伝  作者: ワタベミキヤ
風神雷神編
36/43

最終話 喜の巻

里見山の洞窟で妖怪のペロンチョとゲロッパの壮絶な戦いに勝利した八ニャン士。

伏夜を守った八ニャン士は勝利を喜びながら、里見神社に帰ってきた。


そして神社で待っていた猫上様は、そんな八ニャン士と伏夜を暖かく迎えていた。



八ニャン士と伏夜はあぶねこ鍾乳洞から笑いながら帰ってくると、里見神社には白装束の猫上様が立って待っていた。機嫌の良い猫上様は、長く白いヒゲをゆっくりと触りながら声高く笑っていた。


「ホーホッホッホ! 伏夜さんと八ニャン士よ、よう無事に帰ってきたのぉ」

「猫上様、ただいま無事に戻りましたぁ!」


洞窟の戦いで服がボロボロに汚れてケガもしている八ニャン士と伏夜だが、勝利の喜びで笑顔になっていた。

1人かけることなく全員無事に帰ってきたことに、猫上様は安心していた。


「八ニャン士よ、よくあのペロンチョとゲロッパを退治して伏夜さんを助けてくれた。 実にアッパレアッパレ!」

「猫上様、すみません。 私、猫の世界で大事な猫水晶を爆発させて壊してしまいました」

「伏夜さん、安心しなさい。 実はあれは猫水晶ではなく、単なる普通の爆弾じゃよ。 そんな大事な猫水晶を、ニャン太郎みたいな小僧に託す訳なかろう!」

「爆弾? ハハハ、そうなんですねぇ。 ああ、良かったぁ!」


猫上様と伏夜が2人で笑っていると、猫水晶が爆弾と知ったニャン太郎は顔をひきつりながら苦笑いする。


「爆弾って・・・全然笑えませんよ、伏夜様」


そして伏夜は洞窟で大猫神様の声が聞こえてきたことを猫上様に伝えた。


「そういえば猫上様、ペロンチョの戦いで私は大猫神様の声が聞こえてきました」

「え、伏夜様もですか? 僕はゲロッパの戦いの時に大猫神様の声が聞こえましたよ」 

「うそ? 伏夜様とニャン太郎は、あの猫の守護神である大猫神様の声を聞こえたにゃあ?」

「う、うん」


伏夜とニャン太郎は気まずそうに頷くと、八ニャン士は一斉に叫ぶ。


「ええ、いいなぁ。 大猫神様の声を聞きた〜い!」


猫上様は長い杖で八ニャン士をビシっとさした。


「大猫神様はいつもどこかでお前たちの行動を見ておる。 だから悪いことなど何も出来んぞ!」

「だってよ〜ニャン丸。 あんたはケンカとか盗みとか悪いことばっかりするんじゃないよ〜」

「ヘッ、うるせぇニャン子、オメェもだよ。 機嫌が悪いといつも飛び蹴りするくせに」

「そういえばニャン太郎、最後にやった八ニャン剣のアレは一体何んすか?」

「そうだよぅ、急にニャン太郎くんが八ニャン剣必殺『風雷抜刀ふうらいばっとう』なぁんて叫ぶからさぁ、イケメンの僕もビックリしたよぉ」

「し、しかも八ニャン剣から黄金色の大きい猫の妖精が出てきて、あれは凄かったよねぇ。 僕はチビっちゃって、もうビショビショだよ」

「ニャン太郎、あれは何かの忍術なのん? 今度教えてよん!」


風雷抜刀のことを皆んなに問われたニャン太郎は、頭をかきながら照れる。


「あの技は忍術とかじゃなくて、大猫神様の声を聞いて言われた通りにやっただけだよ」

「あれは大猫神様のお助けだったのかにゃあ」

「うん。 あとやっぱり正義のヒーローって、ギリギリまで追い込まれて最後に必殺技があった方がカッコいいでしょ?」

「ヘッ、やっぱりお前はそういうことが好きなんだな。 くだらねぇ」


戦いの話で盛り上がってくると、伏夜はずっと八ニャン士のことが気になっていた。


「ところで皆んな。 八ニャン士は全員気を失っていたのに、何で急に元気になって出てきたの?」

「ゲッ、実は俺も不思議に思っていたよ。 俺は気を失ってから全く覚えてねぇんだよ」

「そうそう、私もそのことをずっと考えていたにゃ。 にゃんでかにゃあ?」

「ガッハッハ! マルもミッチーも考えすぎっす。 たぶん皆んな腹が減っていて集まったんす!」


ニャン太郎は首の玉を触りながら伏夜に話をした。


「伏夜様、思い出しました。 僕が気を失っていると、首の白い玉が急に濡れたんです。 すると玉が急に熱くなって光り出し、その光りで目が覚めました」

「濡れた白い玉が熱くなって光り出したの?」

「はい。 そして目が覚めて気がついたらあの場所に立っていて、皆んなと横一列に並んでいたんです」

「そうなの? 何だか不思議なことがあるんだねぇ」


伏夜と八ニャン士が首を傾げていると、それを聞いていた猫上様が説明した。


「それはの、伏夜さんの涙がお前たち八ニャン士を目覚めさせてくれたのじゃよ」

「ええ? 私の涙が?」

「元々は伏夜さんが子供の時に持っていたガラス玉で『仁義八行じんぎはちぎょうの玉』が作られ、それから八ニャン士が誕生したのじゃ。 つまり伏夜さんと八ニャン士は一心同体で、お互い気持ちが繋がっている訳じゃよ」

「ハハハ、そうだったんですね。 まぁそういうベタな話の方が、この物語としては盛り上がりますもんね!」

「ホーホッホ、そういうことじゃ!」


猫上様の話を聞いて伏夜はスッキリしていたが、八ニャン士は全員モヤモヤしている。


「相変わらずカミオは何を言っていることが、さっぱり分からない。 だから何の物語が盛り上がってるの?」



すると里見山の方から突然風が吹き雷が鳴ると、あの風ニャン神と雷ニャン神が八ニャン士の前に現れた。


「やぁ皆んな、あの洞窟から無事に帰って来たんだね!」

「おっす! あのペロンチョとゲロッパをやっつけて、皆んなスゴイじゃねぇか」


八ニャン士の前に2人が現れると、ニャン蜜とニャン子の目がハートになった。


「きゃあ♡  風ニャン神様ぁ、 雷ニャン神様ぁ♡」


ニャン太郎は2人にお辞儀をして、修業をしてくれたお礼を言った。


「師匠、ありがとうございます。 師匠たちの修業のおかげで僕たちは2人の妖怪に勝って、伏夜様をお守りすることが出来ました」

「良かったね、ニャン太郎くん!」

「ところで師匠、何で2人の服がボロボロなんですか?」


現れた風ニャン神と雷ニャン神の顔は傷だらけで、派手に装飾されている洋服はボロボロになっていた。


「ハハハ、これね。 君たちの修業が終わった後に北の方へ行ったら、とんでもない妖怪に出会ったんだよ!」

「まぁ俺たちは余裕で勝ったけどな、ハハハ!」


2人は腰に手を当てながら笑っていたが、八ニャン士は細い目をしながら疑っていた。


「綺麗な服がそんなにボロボロでケガもしているのに、余裕で勝ったとは全く見えませんが?」


八ニャン士に問いかける風ニャン神。


「ところで僕のスピード強化の修業は効果あったのかな? 洞窟の戦いで役に立った?」

「はい。 聴力が良くなったニャン蜜ちゃんの指示なんかとても的確で、戦う時はどんなに助かったことか!」

「ヘッ、あと小柄のニャン吉なんて走るのが早くて、俺には何にも見えなかったぜ!」

「でもにゃ、ニャン太郎とニャン丸の剣さばきも、無駄のにゃい動きで良かったにゃ!」

「そうそう、最後のゲロッパの黒風剣をスパッと折った時はカッコよかったなぁ」


すると、雷ニャン神も慌てて八ニャン士に問いかけた。


「おいおい、俺様の修業の方はどうだったんだよ? 俺の稽古も役に立ったんだろ?」

「ガッハッハ! 師匠、雷電バリバリっすよ」

「ヒッヒッヒ。 俺なんか忍法雷電の術でん、トカゲ兵の大群をやっつけたんだぜん!」

「イケメンの僕だって雷電を使って洞窟で頭を光らせてさぁ、大群のトカゲ兵をやっつけたんだよぉ!」

「雷ニャン神様、聞いとくれよ。 あたいなんて雷電飛び蹴りで、ペロンチョのシッポを粉々にしたんだよ〜」


八ニャン士が雷電の話しで盛り上がっている間に、風ニャン神は雷ニャン神にコソコソと話しをしていた。


「おい雷ニャン、雷電って何の話だよ? 俺はそんな技は見たことも聞いたことも無いぞ?」

「シッ、風ニャンだまれ! あいつらに力が出る技だって適当に教えたら、何だか本当にパワーつけやがったんだよ。 まぁ、ここは結果オーライで」

「え? 師匠たち、結果オーライって言いました?」

「いやいや、何も言ってねぇよ。 雷ニャン神必殺奥義の雷電が役に立って良かったじゃねえか、ハハハ!」



猫上様は話しを終わらせる為に、長い杖で神社の床をコンコンと叩く。


「さてさて戦いの話しはこの辺にして、皆んなそろそろお開きにしようかの」

「猫上様と風ニャン神と雷ニャン神様。 そして八ニャン士の皆んな、私を助けくれてありがとうございました!」

「師匠、修業をして頂きありがとうございましたぁ!」

「フフフ、またいつかまた修業の続きをしてあげるからね!」

「今度はもっとヘビーな修業してやるから覚悟しとけよ!」


ニャン丸とニャン平は顔を引きつっていたが、ニャン蜜とニャン子は目がハートになっていた。


「いや、マジで修業はいいです。 もう里見村には来ないで下さい」

「いや〜ん♡ 私たちはいつでも待ってま〜す♡」


そして伏夜は爽やかな笑顔で八ニャン士に言った。


「じゃあ八ニャン士の皆んな、里見村に帰ろうか!」

「は〜い。 師匠、さようならぁ!」

「おお、皆んな元気でねぇ!」

「また会おうぜ、八ニャン士!」


伏夜と八ニャン士は笑顔で手を振りながら神社を後にした。

するといきなりニャン平が伏夜の体を持ち上げ、大声で笑いながら肩車をした。


「キャッ! ニャン平、急に何するの?」

「ガッハッハ! この怪力猫の俺様が、大事な伏夜様を里見村まで肩車で運ぶっす! ああ腹減った!」

「ああニャン平、お前だけズルいぞん。 今度は忍び猫の俺がん、大事な伏夜様の肩車をするから交代しろよ〜ん!」

「ちょっと待って。 可愛い伏夜様は、このイケメン猫のニャン斗さんがお姫様抱っこするんだよぉ!」

「は〜。 まったくどいつもこいつも、男っていうのはスケベでバカばっかりだね〜」

「ちょっと、ネコババァ! どっちの師匠を選ぶか、村に帰ってから勝負しようじゃあにゃいの」

「だまれ、この小童こわっぱ! このあたいとサシで勝負しようって〜のかい?」

「ヘッ、ニャン吉! お前の走るスピードのコツを俺に教えろよ。 俺とお前は友達だろ?」

「イ、イヤです。 僕は早く家に帰って『NyajuUニャジュー』のDVDを見るんです。 ケンカ好きなニャン丸くんとは、僕とは一生友達になんかなれないよ」

「チッ、何だテメェ! すぐ猫アイドルのことで豹変して暴れるくせに、まぁだそんなこと言ってるのか?」


またいつものようにケンカを始めた八ニャン士を見て、ニャン太郎は溜息をつく。


「あぁあ。 せっかく修業や洞窟の戦いで皆んなの気持ちが1つになったと思ったのに、またいつもの里見バラバラ八ニャン士に戻ったよ」


するとニャン平に肩車されている伏夜は、ニャン太郎に向かって笑顔で言った。


「ニャン太郎、いいんじゃない! 皆んなバラバラの方が八ニャン士らしくて」

「伏夜様ぁ!」

「私はそんな八ニャン士が大好きだよ!」

「ハハハハ!」


笑いながら村へ帰る伏夜と八ニャン士の後ろ姿を、猫上様と風ニャン神と雷ニャン神は暖かく見守っていた。


平和な里見村にはちょうど陽も落ち、皆んなの笑顔が綺麗な夕陽で赤く染まっていた。



終わり   ・・・じゃない?


引き続き、最終話「喜びの巻 P.S.」をご覧下さい。


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