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里見八ニャン伝  作者: ワタベミキヤ
風神雷神編
35/43

第14話 剣の巻

伏夜が大ムカデのゲロッパにやられそうになったその時、気を失って倒れていたはずの八ニャン士が復活した。

そして修業のおかげでスピードとパワーをアップした八ニャン士は、ゲロッパを倒れる寸前まで追い詰めていた。


しかしムカデ兵を倒されて怒り狂ったゲロッパは、何やら怪しい妖気の漂う黒い剣を出してきた。


ゲロッパが突然出してきた黒くて太い剣は、怪しい妖気がメラメラと漂っていた。黒い剣を見た八ニャン士は、その恐怖に誰も動けなかった。


「チッ、何だあの黒い剣は? 今まで見たことない不気味な形をしている剣だぜ」

「ニャン丸、あんなのに負けちゃいけない。 皆んなで力を合わせたら大丈夫だよ」

「しかしだね〜、太郎ちゃ〜ん。 これは今までの剣とはワケが違うみたいだよ〜」


あまりも迫力がある黒い剣に八ニャン士はゆっくりと後ろに下がると、ゲロッパはジリジリと歩きながら大声を上げる。

 

「とうとうこの俺様を〜、本気で怒らせたな〜。 俺の黒風剣(こくふうけん)で〜、一気にお前たちを片付けてや〜る〜わ〜!」

「黒風剣?」


ゲロッパの黒風剣と不気味な叫び声に、八ニャン士は何もできず恐れていた。


「あの大ムカデにはん、俺のメンソールの煙玉なんて全然効かなそうだなん!」

「おいミッチー、またなんかいい作戦を考えてくれっす。 ああ腹減った!」

「ニャン平、急に言われも考えられにゃいにゃ。 にゃんかあの黒風剣には嫌にゃ予感がするから、とりあえず後ろまで離れるにゃ!」

「ハッハッハ、そ〜はさ〜せ〜る〜か〜!」


ゲロッパは叫びながら剣を大きく一振りすると、その黒風剣から龍のような爆風が出て洞窟の岩を破壊した。

八ニャン士はなんとか無事だったが、黒風剣の破壊力にざわついた。


「何だ、あの剣の速さとパワーは? あの爆風じゃあ、俺が走るのも難しいなぁ。 早く家に帰りたいぜぇ」

「あんなブサイクな剣を振り回して、イケメンの俺の顔に傷をつけたらどうすんだよ!」

「ニャン蜜ちゃん、そろそろなんかいい策は思いついたかい? このままじゃあの黒風剣から出る爆風で、洞窟も僕たちも粉々になっちゃうよ」

「ニャン太郎、私に1つ考えがあるにゃ。 よく見たら、ゲロッパの体は長いから上と下では同時に動けにゃいみたいだにゃ。 そこで上はスピード組、下はパワー組の二手に別れて攻撃するにゃ!」


それを聞いた八ニャン士は、いい策を出したニャン蜜に向かってスタンディングオベーションした。


「おおブラボー! さすが八ニャン士女軍師のミッチー!」

「だから皆んにゃでミッチーって言うにゃ!」



八ニャン士は上下にグループに分かれて、ゲロッパへの攻撃を開始した。


「体が長いから上が動けば下が動かにゃいし、下が動けば上は動かにゃい。 どちらかの体や腕が動かにゃい時、一気に攻撃するにゃあ!」

「なるほど〜、あの小娘〜なかなか考えたな〜。 だがそんな作戦で俺を倒すには、まだまだ10年早いわ〜!」


ゲロッパは黒風剣をさらに早く振り回し、爆風で洞窟の周りにある岩を次々と壊していった。ゲロッパの速くて鋭い剣をよけられたとしても、爆風によって粉々になった石が八ニャン士を襲う。


「ギャ〜、飛んで来た石が顔や体に当たって痛ぇ!」


しかも八ニャン剣の光が消え、八ニャン士のスピードとパワーが一気に落ちていった。


「チッ、こんな大事な時に剣の光りが消えやがった。 ニャン蜜、これからどうするんだよ?」

「問題はあの不気味にゃ黒い剣を、にゃんとかしにゃくてはいけにゃいにゃ。 あ、そうにゃ!」


ニャン蜜は一旦八ニャン士を引き下げ、もう一度皆んなを集めて次の作戦の話しをした。


「ここは一発逆転の策だにゃ! これは皆んにゃの力を合わせなくてはにゃらにゃい。 まずは・・・」


ニャン蜜が八ニャン士に作戦を告げると、皆んな納得した顔をしながら八ニャン剣を握りしめる。


「ガッハッハ! ミッチー、でかしたっす!」

「おやおや。 何だかあんたも八ニャン士の女軍師らしくなってきたじゃないか〜」

「よし、それでいこう! ニャン丸、今この時こそ僕たちのパワーリストを外すんだ」

「おう! ニャン太郎、いよいよあれをやるぜ」


2人はずっと両腕につけていたパワーリストを外した。

このパワーリストとはニャン吉と同じで、スピード強化の修業の時に風ニャン神から貰った両腕5kgずつの重りのことである。


「ヘッ、腕が軽くなって剣を早く触れるぜ!」

「よし、皆んな。 とりあえず八ニャン剣のパワーがチャージされるまでなんとか逃げ続けて、また剣が光ったらニャン蜜ちゃんの作戦を実行するよ!」

「おお!」


それから八ニャン士とゲロッパの激しい戦いが再開した。ゲロッパが激しく黒風剣を振るたびに洞窟の壁が壊れ、それを八ニャン士は避けながら必死に逃げていた。


「ガッハッハ! そんな光らない模造刀では、俺の相手にな〜ら〜ぬ〜わ」


ゲロッパと必死で戦っている八ニャン士の姿を、伏夜は遠くで見守っていた。


「八ニャン士、がんばれ!」



しばらくペロンチョの攻撃から逃げ続け、やっと八ニャン剣が光り始める。その時を待っていたニャン蜜は、八ニャン士に作戦の合図をした。


「時は今にゃ。 皆んにゃ、合体にゃあ!」


すると、下からニャン平・ニャン斗・ニャン助・ニャン丸・ニャン太郎・ニャン吉・ニャン子・ニャン蜜の順に全員肩車をして、真っ直ぐ縦一列に繋がった。八ニャン士が繋がったその長さは、ゲロッパの身長の高さまで近づいていた。


「な、なんだ〜? 何をする気だ〜お前たちは〜?」

「これでゲロッパと同じ高さににゃったにゃ。 よしニャン平、ゲロッパに向かって走るにゃあ!」

「おう、任せとけっす! 雷電雷電・・・」


1番下にいるニャン平は、八ニャン士を肩車しながらゲロッパの方へ向かって走って行った。縦一列に並んで肩車している八ニャン士は、八ニャン剣をシュンシュンと振り回していた。


「皆んなぁ、このままゲロッパを一気に八つ裂きにするんだぁ!」


八ニャン士の雑な攻撃に意表を突かれたゲロッパは、黒風剣を思いっきり振り回した。


「そんな〜子供騙しみたいな攻撃で〜、俺様を〜倒せると思っているの〜か〜! これでもくらえ〜!」


ゲロッパは黒風剣を振って八ニャン士の列の真ん中を狙うと、ニャン蜜はニヤリと笑いながら目を光らせた。


「フフフ、焦ったにゃゲロッパ!」

「な、なに〜?」

「私の策を見くびるにゃあ!」


ニャン蜜はこの機会を逃さなかった。


「今にゃん、ニャン太郎とニャン丸は離れるにゃあ!」

「りょ〜か〜い!」


ニャン太郎が飛び上がり肩車の列が上下に分かれると、再びニャン蜜が叫んだ。


「行けぇ、ニャン太郎とニャン丸! あの黒風剣を八ニャン剣で叩き割るにゃあ!」


空中に飛んだニャン太郎は上から、ニャン丸は下からゲロッパの剣を狙った。


「ケッ、この時を待ってたぜぇ! くらえぇ!」

「ゲロッパ〜! これでお前の黒風剣もお終いだぁ!」

「し、しまった〜!」


パッキーーン!


するとゲロッパが持つ黒風剣は、パワーリストを外したニャン太郎とニャン丸の素早い剣によって折られて飛んでいった。黒風剣が折られるのを見ていた八ニャン士は、拳を上げながら喜んだ。


「やったぁ! やっと黒風剣が折れたぁ!」


ニャン蜜が考えた策とは、あの黒風剣を封じる為にあえてゲロッパの高さまで八ニャン士を高くし、剣を振り回すというわざとらしい攻撃を見せた。しかしそれは見せかけで、初めからニャン太郎とニャン丸の素早い剣で黒風剣を折るというのがニャン蜜の本当の狙いだった。


黒風剣を折られたゲロッパは、大声で叫びながら怒りで体が黒くなった。普段は濃い赤の体をしているゲロッパだが、色が黒く変色すると鋼のような硬い体になり、先ほどとは比べ物にならないくらい凄いパワーで暴れだした。


「お前ら〜! も〜ゆ〜る〜さ〜ん!」


八ニャン士も八ニャン剣で必死に抵抗したが、暴れ狂うゲロッパに攻撃することさえ出来なかった。


「ゲロッパの体が黒なって八ニャン剣じゃ切れない!

「あいつ狂ってるよん! 無茶苦茶強いよん!」

「チッ、これじゃあキリがねぇよ!」



するとニャン太郎の耳だけに、誰かの美しい声が聞こえてきた。


『ニャン太郎! ニャン太郎!』

「え? この声は誰ですか?」

『私は大猫神です。 ニャン太郎、光った八ニャン剣の剣先を再び重ね合わせるのです!」

「大猫神様! 光った八ニャン剣の剣先を重ねてどうするんですか?」

『そして、八ニャン剣をゲロッパの体に刺しなさい!』

「大猫神様、分かりました!」


大猫神様から言われたニャン太郎は、とりあえず八ニャン士を号令をかけて集めた。


「皆んな、こっちに来てくれ。 今度は光った八ニャン剣の剣先を合わせるんだ!」

「おいニャン太郎、急にどうしたっすか?」

「いいから! 今は説明している時間が無いから、とりあえず光った八ニャン剣の剣先を合わせるんだ」


八ニャン士はニャン太郎に言われた通り8本の八ニャン剣の剣先を重ね合わせた。

すると8色の八ニャン剣が激しく光り出し、全員の八ニャン剣が黄金色(こがねいろ)に輝いた。


「おお、八ニャン剣が黄金色になったぁ!」

「よし! 今度はこの黄金色した八ニャン剣で、一斉にゲロッパの体に剣を刺すんだぁ!」


光り輝いた八ニャン士の剣を見て、ゲロッパは少し戸惑っていた。


「なんだ〜、あの黄金色の剣は〜? なんかマズイ〜!」


八ニャン士はゲロッパに向かって全速力で走りながら一斉に飛び上がった。

そして八ニャン士は剣をゲロッパの体へ狙うと、ニャン太郎は大声で吠えた。


「くらえ、ゲロッパ〜!

  八ニャン剣必殺 『風雷抜刀ふうらいばっとう』!」


八ニャン士が持つ8本の黄金色の八ニャン剣が、ゲロッパの鋼の体に突き刺さった。


「ギャーーー!」


するとゲロッパの鋼の体に突き刺さった八ニャン剣から黄金色した大きな猫の妖精が現れ、そのままゲロッパの体を包み込んでいった。


「ニャアアオオ! ニャアアオオ!」

「な、何だ〜! この大きな猫は〜!」


大きな猫の妖精に包まれたゲロッパは悶え苦しみ、強い光りを出し消えていった。やがて黄金色に輝く大きな猫の妖精も、八ニャン剣の中にスッと消えていった。

ニャン太郎は上から落ちてきた八ニャン剣を拾い、それを高く掲げながら叫んだ。


「ゲロッパが消えた。 やった、僕たちの勝利だぁ!」


静まりかえっていた八ニャン士も、ニャン太郎の声に喜び叫んだ。


「おお、勝ったぁ! 勝ったぞぉ!」

「ヤッホー、勝ったぞぉ!」


ペロンチョとゲロッパの戦いに勝利したことに、八ニャン士は皆んなで抱き合いながら喜んだ。

そして遠くで見ていた伏夜はゆっくりと起き上がり、八ニャン士のもとに近づき泣いた。


「八ニャン士の皆んな、助けてくれてありがとう!」

「伏夜様、勝った! 僕たちは伏夜様を守ったぞぉ!」


ケガをして洋服がボロボロになった伏夜と八ニャン士は、洞窟の中でいつまでも抱き合いながら喜んでいた。

やっとペロンチョとゲロッパを退治し、伏夜さんを守ることが出来た八ニャン士。

八ニャン士が少しだけ強くなったのは、きっと風ニャン神と雷ニャン神による修業のおかげでしょうね。

しかし八ニャン剣から出たあの黄金色した大きな猫の妖精は、一体何だったんでしょうかね?


次回最終話「喜の巻」をお送りします。

勝利した八ニャン士と伏夜の前に、再びあの風ニャン神と雷ニャン神が現れる。


お楽しみニャン!

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