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里見八ニャン伝  作者: ワタベミキヤ
風神雷神編
31/43

第10話 拐の巻

猫剣士育成トレーナーの風ニャン神と雷ニャン神による1週間の修業が無事終了し、里見神社に帰ってきた八ニャン士。

修業のおかげで少しは強くなった八ニャン士に安堵した猫上様だが・・・


村長が住んでいる似星家に、大変な事件が起きてしまった。

風ニャン神と雷ニャン神の修業を終えた八ニャン士は、里見山から降りて里見神社に集合していた。神社には白装束の猫上様が、修業を終えた八ニャン士を見て高らかに笑った。


「ホーッホッホ! 八ニャン士よ、無事に修業が終わってよかったよかった!」


1週間の修業を終えた八ニャン士は、修業前に比べるとなぜか清々しい顔をしている。


「猫上様、ありがとうございました。 僕たちは前よりかなり強くなったと思います!」

「そんなことないだろん、ニャン太郎。 1週間の稽古でん、本当に強くなったっていうのかねん?」

「ヘッ、ニャン助、稽古の成果は暴れてみないと分からねぇからな。 俺は早くケンカがしてぇぜ!」

「どうせマルのことだから、稽古なんかサボって昼寝でもしてたっすな? ああ腹減った!」

「ちょっとぉ、ニャン子ちゃん。 あんた、イケメンの雷ニャン神様に手を出さにゃかったでしょうにゃあ?」

「ふん! あんたこそイケメンの風ニャン神様に手を出したら、このあたいが承知しないよ!」

「ねぇ、皆んなぁ。 もう修業が終わったんだからさぁ、ケンカなんかしてないでさぁ、早く帰ってシャワーでも浴びようよ」

「あ、早く帰ろ帰ろ。 僕は早く家に帰ってDVDが見たい」


またいつものようにガヤガヤと騒ぎ出すと、修業前と全く成長していない八ニャン士に猫上様はイライラした。


「いちいちうるさぁい、このバカどもぉ! 全く成長しとらんじゃないかぁ!」


八ニャン士 シュンとする。



すると、里見村村長の似星連太郎が大声を上げながら慌てて神社にやって来た。


「大変だぁ、ニャン太郎。 大変だぁ!」


ちなみに里見村村長の連太郎がドタバタするのは毎度のことである。


「ダンナ様、どうしたんですか? 奥様がトイレに入っているのに、またトイレの扉を開けたんですか?」

「ニャン太郎、冗談言っている場合じゃない! 俺が家に帰ったら誰もいなくて、伏夜が変なヤツに拐われてしまったんだぁ!」

「ええっ! 伏夜様が拐われたって一体どういうことですかぁ?」


連太郎は家に置いてあった手紙を猫上様に渡し、それを広げて皆んなに見せた。


『お前の娘は預かった。 娘を返して欲しければ、猫上が持っている猫水晶を里見山の洞窟へ来い。 ペ』


伏夜を心配するニャン太郎。


「どうしましょう、猫上様。 この『ぺ』って書いてあるのは、あの大トカゲのペロンチョのことですか?」

「ニャン太郎、たぶんそういうことじゃな。 この世で猫水晶が欲しいと言っている『ぺ』って、大トカゲのあいつくらいしかおらんじゃろ」

「チッ、カミオどうすんだよ? 伏夜様がペロンチョに拐われて食べられたりしたらヤバいじゃねぇか!」

「そうじゃのう。 ここはお前たちが猫水晶を持って、伏夜様を助けに洞窟へ行くしかなかろう」

「そうにゃん! またあの2人の師匠たちに村へ来てもらって、伏夜様を助けてもらうのはどうかにゃ?」

「おお! ニャン蜜ちゃん、それはナイスアイデアん」


しかし猫上様は険しい顔をして、長いヒゲを触りながら首を横に振った。

ちなみに月に一回メンテナンスしている猫上様の長いヒゲは、昨日整えたばかりなのでサラサラである。


「ダメじゃダメじゃ。 風ニャン神と雷ニャン神はお前たちの修業が終わった後、また別の所へ行って猫剣士の稽古をしているのじゃ」

「にゃにゃ、イケメンの師匠たちは意外と忙しい人たちにゃのね?」

「じぁあ、どうするのさぁ? 拐われた伏夜様はお金で解決できないのかぁい?」

「な、なんか怖いよう。 僕はチビりそうです」

「おやおや。 修業から帰って来て早々、なんだかえらいことになっちまったね〜」


拐われた伏夜のことで八ニャン士がザワザワすると、急にニャン丸が声を張り上げた。


「チッ、なんだなんだお前ら。 師匠たちに稽古してもらって、ちょっとは強くなったんだろ?」


ニャン丸の声でザワザワしていた八ニャン士がピタリと止まる。


「伏夜様をお守りするのが、俺たち里見八ニャン士だろ! 俺1人でも伏夜様を助けに行くぜ!」


ニャン丸のその力強い言葉に、ニャン太郎は泣きながら抱きついた。皆んなの前で抱きつかれたニャン丸は、顔を赤くして頭をポリポリとかいた。

ちなみにニャン丸はケンカしたくて、ただウズウズしていただけである。


「ニャン丸、ありがとう。 やっぱりお前は頼りになる暴れ猫だよ!」

「ヘッ、ニャン太郎、よせよ。 て、照れるじゃねぇか」


八ニャン士と猫上様 目を細くする。


「あのぉ、お2人はボーイズ・ラブ?」



すると猫上様が長い杖を前に出し、自分が作った八ニャン剣について語る。


「そうじゃそうじゃ、お前たちにその八ニャン剣ついて話しておこう」

「猫上様、八ニャン剣がどうかしましたか?」

「前は8本の剣先を重ねると、八ニャン剣が光り出してパワーが出たじゃろ? しかしお前たちは修業したおかげで少しはパワーが増えたから、おそらく自分の力で剣が光るハズじゃ」

「そうなんですかぁ!」

「ホーホッホッホ! 八ニャン剣の柄を両手で力強く握ってみんしゃい!」


八ニャン士はそれぞれの剣を出して、柄の部分をギュッと力を入れてみた。するとそれぞれの八ニャン剣が光りを放ち、スピードとパワーが出た。


「やったぁ! 僕たちの八ニャン剣が光ったぁ!」


説明しよう。

八ニャン士が持つこの八ニャン剣は、猫上様が作った模造刀である。しかし八ニャン剣が光り出すと、そのスピードやパワーが82(ハチニャン)倍になるのだった。


「これでお互いの剣先を合わせなくても、別々で光ることができるじゃろ。 しかし前にも話したがパワーが使えるのは8分2秒で、次のチャージするまでも8分2秒じゃ。 それを忘れるでないぞ!」

「それは良かったにゃん! いちいち皆んにゃで剣先合わせるのが面倒たからにゃん」

「ホーッホッホ! 八ニャン剣もバージョンアップせんと、この物語もいまいち盛り上がらんじゃろ! 演出が大事じや」

「チッ、だから何の物語だよカミオ!」


光り輝く八ニャン剣を見ながら、伏夜様を助けに八ニャン士は燃えていた。


「やったぁ。 光る八ニャン剣を自由に使えて、これで本当にヒーローになったみたい。 皆んな、早く伏夜様を助けに行こう!」

「ヘッ、俺の八ニャン剣で大暴れしてやるぜぇ!」

「ガッハッハ、俺様はパワー全開でペロンチョをやってやるっす! ああ腹減った!」

「伏夜様を誘拐した大トカゲのペロンチョめ。 私の策を見くびるにゃよ」

「シッシッシ。 俺は今から忍び古屋に戻ってん、いろいろな忍術の道具を持って行こん」

「おやおや、何だかちょいとワクワクしてきたじゃないか〜。 あたいをナメるんじゃないよ〜」

「やれやれ。 ペロンチョはお金で解決出来ないならさぁ、大切な伏夜様をお助けしますかぁ」

「あ、僕は早く家に帰って『NyajuUニャジュー』のDVDを見たいけど、伏夜様も心配です」


やっとやる気が出てきた八ニャン士に、里見村村長の連太郎は目をウルウルさせながら感動していた。


「ありがとう八ニャン士。 娘を、伏夜を頼んだぞ!」

「ダンナ様、安心して下さい。 僕たちが必ず伏夜様を助けて、一緒に里見村へ帰ってきます!」

「頼りにしてるぞ、ニャン太郎。 それじゃあ俺はこれからママと温泉で楽しんでくるから、皆んながんばれよ!」


八ニャン士と猫上様 コケる。


そして猫上様はニャン太郎に猫水晶を渡すと、ニャン太郎はそれを両手で大事に受け取った。


「猫世界で大事なこの猫水晶をニャン太郎に預ける。 伏夜さんのことを頼んだぞ!」

「はい分かりました、猫上様!」


神社の屋根に登った猫上様は長い杖を高く掲げ、八ニャン士に向かって大声を上げた。


「さあ、里見八ニャン士よ。 大トカゲのペロンチョを倒し、伏夜様を助るのじゃあ!」

「おお!」



里見山の山奥には、石灰岩地帯の『あぶねこ鍾乳洞(しょうにゅうどう)』という深くて大きい洞窟がある。あぶねこ鍾乳洞は『猫の悪魔が宿る』という言い伝えがあり、里見村の猫たちは誰一人近寄らなかった。

八ニャン士たちがその洞窟へ向って険しい森を歩いていると、その途中でニャン蜜がヘンな物音に気づいた。


「シッ! 皆んにゃ、近くに誰かいるにゃん」

「ん? ミッチー、全然俺には聞こえないっすよ」

「ニャン平、ミッチーって言うにゃ! それより、にゃにか変にゃヤツに大勢囲まれているにゃん」

「ニャン蜜ちゃんは修業のおかげで前よりさらに聴覚が鋭くなったんだよね」

「ニャン太郎、どうしようかにゃ? 洞窟に行く前に、皆んにゃでここで戦うかにゃ?」

「くっそう! 早く伏夜様の所へ行きたいから、今はそんなヤツにかまってる時間なんてないのに」


するとニャン助が一歩前に出て、ドヤ顔しながら仁王立ちした。


「シッシッシ! 敵から逃げることならん、この忍び猫のニャン助師範代に任せてよぉん!」

「ヘッ、ニャン助! 珍しくお前がやってくれるのか?」

「逃げるは恥だが役に立つ! 俺の忍術で敵を食い止めるからん、皆んなは早く行って伏夜様を助けてよん」

「おやおや。 ニャンスケベのあんたが、たまには珍しいこと言うじゃないか〜。 少し見直したよ〜」

「ニャン助くん、今日の君はすごくカッコいいよぉ。 またニャン助くんに僕のファンクラブの女猫ちゃんを紹介してあげるね」

「ニャン太郎、早く伏夜様の所へ行ってん、無事に助けてあげてねん!」

「ありがとう、ニャン助師範代! じゃあここはニャン助に任せて、皆んな先に進もう!」


八ニャン士はニャン助に任せて、ペロンチョがいる洞窟に向かって前に進んだ。



ニャン助が急いで忍術の準備をしていると、森の中から不穏な空気がしてきた。すると草むらの中から、数十匹の怪しいトカゲ兵がペロペロと赤い舌を出しながらニャン助に近づいて来た。その怪しいトカゲ兵とは、ペロンチョが操っている戦闘部隊のことである。

そして多くのトカゲ兵が一斉に飛びかかってくると、ニャン助は足元にある木箱を開けた。


「今こそん、パワー強化の修業の成果を見せるのだん!」


ニャン助は木箱から爆弾や煙玉などを出して素早く投げると、次々とトカゲ兵に命中させていった。その速さは修業前のニャン助の実力より、遥かに違うパワーであった。


「シッシッシ! 師匠の稽古のおかげでん、煙玉を投げるパワーがついたなん。 忍び猫ニャン助様の爆弾と煙玉をくらえ〜ん!」


次々とやられるトカゲ兵だか、さらに奥から数十匹出てきてニャン助を襲ってきた。


「こんなに大群のトカゲ兵じゃあん、俺1人では間に合わないよん。 そうだん、師匠から伝授してもらった雷ニャン神奥義の雷電をやろうん!」


修業のことを思い出したニャン助は、早速目を閉じて鼓動を感じて自分の手に集中しながら雷電を唱えた。


「雷電雷電・・・うおおおん!」


雷電によってニャン助の手から火花が散って腕のパワーがアップすると、物凄いスピードで爆弾や煙玉を投げてトカゲ兵を倒していった。


「うおおお、忍法『雷電煙玉の術』だん!」


こうしてトカゲ兵士の戦いはしばらく続き、ニャン助は1人で敵を食い止めていた。



一方洞窟の近くまで来たニャン蜜は後ろを振り返り、トカゲ兵と戦っているニャン助を心配していた。


「ニャン太郎、ニャン助1人で大丈夫かにゃあ?」

「ニャン蜜ちゃん、ニャン助の忍術を信用しようよ」


すると遠くの森の中から、1人で戦っているニャン助の叫び声が聞こえてきた。


「ギャ〜ン!」


叫び声がした後でニャン助の爆弾や煙玉の音がおさまり、森の中が静かになった。


「チッ、これってヤバくないか? ひょっとして、ニャン助が何かにやられたのか?」

「そ、そんなぁ。 ニャン助ぇ!」


大声を上げながら力が抜けたニャン太郎を、ニャン丸は肩を強く叩いた。


「ニャン太郎、ニャン助がやられたかどうかなんて今は分かんねぇだろ! とりあえずニャン助を信じて、早く伏夜様を助けに前へ進もうぜ!」

「うん、分かったよ。 ニャン丸、行こう!」


こうして八ニャ士は不安を抱えたまま、伏夜がいる洞窟へ向かった。

伏夜さんが拐われて、大変なことになってきましたよ!

はたして八ニャン士は、ペロンチョから伏夜さんを助けることができるでしょうか?

そして大群のトカゲ兵と戦っているニャン助は、本当に大丈夫なのでしょうか?


次回「洞の巻」をお送りします!

ニャン平が吠えてニャン斗が光る。 そしてついにペロンチョが現れた!


お楽しみニャン!

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