表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
里見八ニャン伝  作者: ワタベミキヤ
風神雷神編
30/37

第9話 電の巻

雷ニャン神によるパワー強化の修業は、いよいよ大詰めを迎えようとしていた。


雷ニャン神の猛獣との稽古で、少しは自信がついたような気がする八ニャン士。


そしてパワー強化の最後の修業は、雷ニャン神奥義の必殺技だった。


猫のパワースポットであるニャイアガラの滝の前で、雷ニャン神は八ニャン士を横一列に整列させた。そして雷ニャン神はこれから行う稽古について説明した。


「これよりパワー強化の最後の修業は、雷ニャン神奥義『雷電(らいでん)』をお前たちに伝授する」

「雷ニャン神奥義の雷電?」


雷ニャン神からいきなり技を聞かされ、訳が分からない八ニャン士は戸惑う。


「な、なんすか? その雷電とやらは?」

「雷ニャン神様ぁ、またいつもの悪魔の呟きとかドッキリとかじゃないだろうね〜?」

「もう、ガオーとかパオーンとかイヤだよん」

「やれやれ、僕のイケメンが下がっていくよ」

「ハッハッハ、今度は真面目だ。 雷電とは地球のあらゆる電気のパワーを自分の体に取り込む究極の奥義だ。 これから各自別々で稽古を行い、この雷電の技を取得する。 皆んな、分かったか!」

「ちょっと何を言ってるのか分かんないですけど、とりあえず分かりましたぁ!」


まずニャン平と雷ニャン神は、向こう側が見えないくらい大きな岩の前に立っていた。


「おいニャン平、まずはこの大きな岩を持ち上げろ」

「い〜わ〜? これ大きな岩っていうか、ほぼ山じゃないっすか? そんなのムリムリ」

「お前はいちいちムリムリうるせえんだよ。 つべこべ言わないで、さっさと持ち上げろ!」

「またぁそんなこと言ってぇ。 本当は師匠も持ち上げることなんてじゃないんですかぁ?」

「あ〜ん? てめぇ、俺をナメんなよ!」


ニャン平に疑われた雷ニャン神は、イラっとしらながら大きな岩の前に両手を合わせて構えた。


「雷電・雷電・・・うぉりやー!」

「げげっ! 師匠の両足から火花が出てきた」


雷電によって両足から火花が出て全身に電気が走ると、雷ニャン神は大きな岩を持ち上げた。


「師匠の足から火花が出てきて岩を持ち上げた!」

「まぁ、こんなもんかな。 さっさとやれ!」

「この大きな岩を上げるなんて、俺は絶対無理だと思っていました。 やっぱり師匠には敵わねえよ」

「始める前から上げるのは無理だと思っているから、お前は上げられないんだよ! 何でもやる前から諦めるんじゃねぇ!」


続いてニャン助と雷ニャン神は、遠くに山が見える丘に移動していた。


「ニャン助、あの遠くに見える山に高い木があるだろ? その上に置いてある風船を石を投げて割れ!」

「高い木の上に置いてある風船って、あんなに小さいんですよん! で、何で俺は石を投げるんですかん?」

「お前は忍術でいろんな煙玉を投げるだろうから、その玉を投げる距離と命中率を強化するんだ」

「あんなに風船が遠いのに、石なんか届かないよん」


ブツブツ言いながらとりあえずニャン助は石を投げたが、命中どころかぜんぜん届かない。


「ほらん、だから言ったじゃないですかん!」

「お前もいちいちランとかカンとかうるせぇなぁ。 じゃあ、風船よりあの岩の方が見えやすいだろ? あのもっと奥の山にある大きい岩に当ててみろ!」

「風船より岩の方がもっと遠いじゃないですかん?」

「最初は遠いところから練習するんだよ。 そうすると、手前の風船が大きく見えてくるだろ?」

「まぁ理屈はそうだけどん。 またそんなこと言って、師匠は当てることなんてできるんですか~ん?」

「フッ、こんなの簡単だぜ。 見てろ!」


ニャン助に疑われた雷ニャン神は両手を合わせると、雷電によって両腕から火花が出てくる。


「雷電・雷電・・・うぉりやー!」

「にゃにゃ、両腕からから火花が出てきたよん!」


雷電によって両腕から火花が出てきて石を投げると、投げた石は遠い岩に当たり粉々になった。


「まぁこんなもんだろう。 さっさとやれ!」

「ううん、煙トンの術でここから逃げたいよん」


続いてニャン子と雷ニャン神は、ニャイアガラの滝の前に立っていた。


「お前は飛び蹴りが得意だよな? そのお前の飛び蹴りで滝の水の流れを切れ!」

「はぁ? あたいには雷ニャン神様の言っていることがサッパリ分からないよ〜。 飛び蹴りで滝の水を切るなんて、そんなことお前さんにできるのか~い?」


ニャン子に疑われた雷ニャン神は、イラっとしながら両手を合わせ地面を強く踏んだ。


「雷電・雷電・・・うぉりやー!」

「おやおや、雷ニャン神様の足から火花が出てきたよ~」


雷電によって両足から火花が出てくると、雷ニャン神は飛び蹴りして滝の水を切った。


「こんな感じだ。 さっさとやれ!」

「あたいは()()()乙女だから、そんな荒っぽいことなんて出来ないんだよ〜!」


なかなか稽古を始めないニャン子にイライラする雷ニャン神は、服の中から『ニャン姫』のブロマイド写真を出した。そしてその写真にキスをしながら言った。


「そう言えば、里見村にニャン姫ちゃんっていう可愛い女猫ちゃんがいるよねぇ?」

「ピクッ! ニャン姫! イラッ!」


説明しよう。

ニャン姫とは、里見村で開催されている『ニャン姫コンテスト』の優勝者である。前回そのコンテストでニャン子は派手なパフォーマンスを披露したが、見事に落選した。


「俺はさぁ、この引き締まったニャン姫ちゃんのこの足がたまらなく好きなんだよねぇ。 今度里見村で見たら声をかけてみようっと」

「ちょいとあんたっ! このセクシーなあたいがあんな小娘に負けるとでもいうのかい?」

「セクシーニャン子、よく言った! ならば、滝の水を飛び蹴りで切ってみようかぁ」

「ニャン姫め! あたいをナメんじゃないよ〜!」


続いてニャン斗と雷ニャン神は、滝の隣りにある洞窟にやってきた。


「目を長時間光らす事が出来るニャン斗は、この洞窟の暗闇を最大に明るくするぞ!」

「僕はお師匠さんの言っている意味がよく分かりませんが? こんな暗闇の中を僕の目の光りで明るくなんて、出来る訳ないじゃないですかぁ?」

「あ、そ。 超イケメンの俺には暗闇を光らせるなんて余裕だけど、お前にはそれが出来ないんだな」

「ええ? だったらお師匠さんは、どれくらい光りが出るんですかぁ?」


ニャン斗に疑わた雷ニャン神は、またイラっとしながら腕を組んだ。


「雷電・雷電・・・うぉりやああ!」

「ありゃあ、お師匠さんの体が光ったよぉ!」


雷電によって雷ニャン神の全身から火花が出てくると、洞窟の中で光り輝いた。


「俺はお前より超イケメンだから、これくらいは簡単に出来るけどな! ニャン斗はキモくてブサイクだから出来ないんだよ」

「おい、コラ! 誰がキモくてブサイクなんじゃい」


豹変したニャン斗は目を最大に光らせた。


「おおニャン斗、やればできるじゃん! でもまだまだ光が足りないから、その調子でがんばりな」

「はぁ、僕は疲れることが1番嫌いなんだよなぁ」



それから八ニャン士の稽古が毎日続いたが、与えられた課題はなかなかクリアすることが出来ず、とうとう最終日になってしまった。雷ニャン神は改めて八ニャン士を横一列に並べた。


「よぉし! 毎日腕立てや腹筋してパワーもついてきたようだし、そろそろお前たちに雷電を伝授する」

「え、今さら? だったら初めから雷電を教えてくれれば、早く終わったのに。 ああ腹減った!」

「ばぁか。 基礎体力もないお前たちが、急に雷電が出来る訳ないだろ? まぁお前たちが与えられた課題が出来ないなんて、最初から分かっていたがな」

「あたいの体がムキムキセクシーになっちまったじゃないかあ〜。 ああ早くエステに行きたいよ〜」

「よしこれから雷電をやるから、皆んな俺がやることと同じようにやってみろ!」

「へ〜い」


雷ニャン神は八ニャン士の前で構えた。


「まず両足を地面につけ、両手を合わせて目を閉じる」


八ニャン士は言われた通りに両足を地面につけ、両手を合わせ目を閉じた。


「そして深呼吸しながら気持ちを集中させ、次に自分の体の中にある鼓動を感じるんだ」

「鼓動・鼓動・鼓動・・・」

「そして自分の鼓動を感じたら、その鼓動に合わせて『雷電・雷電』と心の中で何回も唱える」

「雷電・雷電・雷電・・・」


すると、不思議なことに八ニャン士の足から火花がパチパチッと散った。


「おおお、足から火花が出た!」

「地面から雷電を感じることが出来たら体の中に地球の雷電パワーを吸い込み、それを一気にスパークさせるんだ! この雷電パワーを使って、それぞれ与えられた課題をやってみろ!」


ニャン平は雷電を始めると両足から前身に火花が散り始め、体全体に物凄いパワーが出てきた。するとニャン平は出来なかった大きな岩を高く持ち上げ、しかもその岩を半分に割った。


「雷電雷電、うおおお! 俺の怪力がものすごくパワーアップしたぜぇ。 ああ腹減った!」


ニャン助は雷電を始めると両腕から火花が散り始め、両手に物凄いパワーが出てきた。そして数個の石を一気に投げると、遠くにあった10個の風船に命中させて割った。


「雷電雷電、おりゃあん! 俺の忍術が進化したよん!」


ニャン子は雷電と叫ぶと両足から火花が散り始め、両足の太ももに物凄いパワーが出てきた。そして滝に飛び蹴りすると滝の水の流れを切り、ついでに数匹の魚も蹴り上げた。


「雷電雷電、アチョ〜! あたいをナメんじゃないよ〜! あら、お魚さんは後で頂こうじゃないか〜」


ニャン斗は雷電と叫ぶと体から火花が散り始め、目から物凄いパワーが出てきた。そして目の光りがさらに大きくなり、しまいにはニャン斗の頭が光った。


「雷電雷電、イッケメ〜ン! これでイケメンの僕の輝きも取り戻したね!」


八ニャン士が雷電を取得して課題をクリアしたのを見て、雷ニャン神は腕を組みなが微笑んだ。


「だから言ったろ? お前らもやればできんじゃん!」



1週間の修業を終えた八ニャン士は、雷ニャン神の前に整列していた。


「1週間よく頑張ったな! この修業でお前らが雷電を習得出来なかったら、どうなるかと思ったぜ」

「ところで師匠? 修業始まる前に俺らに約束してたご褒美は無いんすかね?」

「あ、そうそう。 ニャン平には美味しいものをお腹いっぱい食べさせるんだったな!」

「はい、わたくしはとってもとっても腹が減りました!」

「はい、食いしん坊のニャン平には牛丼チェーン店の回数券。 これはマジで早くて安くてうまいぞぉ!」

「ハ・ハ・ハ、牛丼っすか? ありがとうございます」

「それからニャン助とニャン斗には、1番可愛い子猫ちゃんを紹介するんだったな!」

「はい、私たちは日本で1番可愛い子猫ちゃんが大好きであります! ぜひ紹介して下さい!」

「はい、スナック『梅ちゃん』のサービス券。 ここの80歳のニャン梅ママは元気で可愛いぞぉ!」

「ハ・ハ・ハ。 80歳のニャン梅ママが、日本で1番可愛い女猫ですのん?」

「ハ・ハ・ハ。 今度ニャン助くんと一緒にニャン梅ママのスナック行って合コンしまぁす」

「そしてセクシーニャン子には、特別に俺とチョメチョメをしてあげよぉ!」

「いや〜ん、待ってました〜♡ 雷ニャン神様ぁ、チョメチョメありがとうございま〜す♡」

「セクシーニャン子には、俺が優しくお姫様抱っこしてやる! それ〜!」

「キャ〜♡ 雷ニャン神様に優しくお姫様抱っこされて、セクシーニャン子はとってもうれしい・・・っておい! ニャンで?」



そして雷ニャン神は八ニャン士に最後の言葉を贈った。


「俺がこの修業でお前たちに伝えたかったことは、逃げて言い訳ばかりして出来る出来ないで判断するんじゃない。 大事なのはやるかやらないかなんだ」

「そうだよねん。 俺たちポンコツ八ニャン士なんて言われないようにしないとねん!」

「お前たちはあの大猫神様が作った里見八ニャン士なんだから、元々すごいパワーは持っているんだよ。 だから自分のパワーを信じていれば大丈夫だ!」

「はい、分かりましたぁ」


そして雷ニャン神は華麗な雷ニャン剣を前にかざすと、八ニャン士も八ニャン剣を前にかざしてお互いの剣を重ね合わせた。


「お前たちには期待してるぜ! 健闘を祈る!」

「雷ニャン神師匠、修業ありがとうございましたぁ!」

とりあえず雷ニャン神による1週間のパワー強化の修業は終了しました!


猫剣士として1番大事なのは出来る出来ないではなく、やるかやらないかなんですね!


力をつけた八ニャン士は、きっと奥義の雷電を使えることでしょう。


次回「拐の巻」をお送りします!

ええ? 伏夜様があの大トカゲのペロンチョに拐われた?


お楽しみニャン!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ