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里見八ニャン伝  作者: ワタベミキヤ
猫剣士立志編
3/43

第3話 仁の巻

『仁の玉』を持つ八ニャン士のニャン太郎。

里見村1番地にある村長の大屋敷に住んでいる。


性格は爽やか熱血系で、ヒーローや正義が大好き。

TVでやっているライダーや戦隊シリーズにかなり影響されている。


脇腹に星の模様がある。


里見村の村長である似星連太郎(にぼしれんたろう)は、大きな屋敷の中をバタバタと走りながらニャン太郎を探していた。


「ニャン太郎、ニャン太郎! どこにいる?」


いろいろな部屋の戸や押入れ、そしてトイレの便座を開いてもなかなかニャン太郎の姿が見つからない。

ちなみに連太郎の家がいつもバタバタしていることは、里見村の中では有名なことである。


「はいはい、ダンナ様。 またいつものようにバタバタして、何かご用ですか?」

「ニャン太郎、そんな冷めた声で言うんじゃない。 最近のお前は、この俺にメチャクチャ冷たいぞ?」

「ダンナ様がいつも意味なくバタバタしてるからですよ。 そんなことより今度はどうしたんですか?」

「あ、思い出した。 実は伏夜が、俺の大事な伏夜が家を出て行ってしまったんだよ!」

「ええっ! 伏夜様が家出をしたんですか?」

「テーブルの上にこんな手紙があったんだ」


2人が言っているその伏夜(ふせよ)とは、連太郎が大切にしている最愛の1人娘のことである。とは言え学校はとっくに卒業している大人の女性であり、習い事をしながら家事手伝いをしている箱入り娘だ。

ニャン太郎はその伏夜の手紙を恐る恐る開く。


『わたしは 家でします 伏夜』


伏夜の手紙を読んだニャン太郎は、まるで歌舞伎役者のように大げさに驚いた。


「げげっ! これは〜、ど〜ゆ〜ことですかぁ?」

「お、ニャン太郎ナイスリアクション!」

「ダンナ様ぁ、親指を立ててナイスリアクションなんて言っている場合ですかぁ! 伏夜様が家出するなんて、何か心当たりがあるんですか?」

「いや、俺にも分からん。 たまに伏夜の箸でご飯食べるとか? たまに伏夜が入っているお風呂に間違って一緒に入っちゃうとか?」


それを聞いてドン引きしたニャン太郎は、軽蔑した眼差しで連太郎を見つめる。


「(独り言)何やってんだよ、このおっさん。 それじゃ伏夜様が嫌になって家を出ていくよ」

「とにかく、今からお前が伏夜を探して欲しいんだ。 頼むぞ、ニャン太郎!」

「頼むぞって言われても、ダンナ様はこれからどうするんですか?」

「俺はこれからママと大事なデートなんだよぉ」

「娘が家出しているのにママとデートって。 はいはい、いってらっしゃいませぇ」



ダンナ様と奥様を玄関で見送ったニャン太郎は、家を出てしまった伏夜をどうやって探すかをしばらく悩んでいた。家の中をウロウロと歩きながら考えていると、あることをひらめく。


「そうだ、八ニャン士の皆んなに協力してもらおう! 今こそ八ニャン士の硬い結束が必要だよ」


ずいぶん勝手なことを言うニャン太郎は、首につけている仁の玉を握りなから叫んだ。


「皆んなぁ! ムニュ!」


説明しよう。

首についている仁義八行の玉をムニュっと握ると、八ニャン士同士が通信が出来る。 1人の名前だけ言えば1人だけ、皆んなと言えば全員と通信することができる便利な玉なのだ。


「八ニャン士の皆んなに頼みがあるんだ。 一緒に住んでいる村長の娘の伏夜様が、突然家出をしてしまったんだよ。 だから誰か僕と一緒に探してくれないか?」


ニャン太郎の玉から通信を受けた八ニャン士は、それぞれの首のもとで玉が光り出す。 そしてしばらくすると、八ニャン士からニャン太郎への返信が来た。


「ヘッ、俺はいいぜぇ!」

「私は無理だにゃん」

「僕もいいよぉ」

「あ、僕は行けません」


それから1時間後。伏夜を探すためにニャン太郎の家に集まって来てくれたのは、ニャン子とニャン丸とニャン斗の3人だった。


「ケッ、ったく結局八ニャン士で来たのは3人だけかよ。 しかもクセの強いヤツらばかりだぜぇ」

「あ〜らニャン丸、それはこっちのセリフだよ〜。 あたいは太郎ちゃんのことが、ちょいと気の毒だと思ったんだよ〜。 ね~ニャン斗」

「大丈夫さぁ。 このイケメンのニャン斗さんが来たんだからぁ、皆んな安心しておくれよぉ」


ニャン太郎とニャン丸とニャン子 目が点になる。


「ニャン斗は絶対クセが強い猫だな」


自分の為に来てくれた3人に、ニャン太郎は手を握りながら感謝した。


「来てくれてありがとう。 来てくれてありがとう!」

「いいんだよ〜、太郎ちゃん。 これもお互い様じゃないか〜」

「で、これからどうしよ?」

「へ? どうしよって、ひょっとしてお前は伏夜さんを探すのにノープランか?」

「うん、僕はまったくのノープランです!」


ニャン子とニャン丸とニャン斗 コケる。


「あのなぁ、ニャン太郎! ノープランで俺たちを呼ぶんじゃねぇ!」

「ニャン丸くんは本当に気が短いんだねぇ。 イケメンのこの僕みたいにもっと穏やかにいこうよぉ」

「まったく太郎ちゃんは仕方がない子だね〜。 よ〜し、セクシーニャン子ちゃんのこの鋭い嗅覚で伏夜さんを探そうじゃないか〜」


嘘くさい江戸弁を話すニャン子は、やや鼻がきく女猫である。そのドヤ顔して自慢しているニャン子に、ニャン丸とニャン斗は近寄った。


「おいニャン子、お前本当に鼻がいいのか?」

「おやおや、お前さん。 このあたいのお鼻をナメてもらっちゃあ困るね〜」

「ええっ! セクシーニャン子ちゃんのその可愛いお鼻をさぁ、僕がナメてもいいのかぁい?」

「んなワケねぇだろ、この変態猫ヤロウ! バキッ!」


ニャン子に飛び蹴りされたニャン斗は、どこか遠くへ飛んで行ってしまった。

ちなみにニャン子は飛び蹴りが得意な女猫である。


「それじゃあ、鼻がきくニャン子ちゃんにお願いしようかな? これは伏夜様が置いていった手紙なんだけど、これで何か匂うかな?」

「クンクン、おやいい匂いだ~ね~。 皆んなこっちだよ〜。 このあたいについて来な!」

「ヘッ、ニャン子、もう分かったのか。 なんか意外と早く伏夜さんを探せるかもな」



早速伏夜を探しに出かけた八ニャン士は、ダラダラと歩きながら話しをする。


「ところでニャン太郎くんさぁ。 村長の娘である伏夜さんってさぁ、一体どんな子なんだぁい?」

「伏夜様はとっても可愛い女の子だよ、ニャン斗。 僕は里見村で一番美人だと思うよ」

「伏夜さんはそんなに可愛いのかぁい? それはイケメンの僕はほっけないなぁ」

「ケッ、なんだニャン斗。 お前は女好きなのか?」

「いやぁニャン丸くん、逆に女の子たちが僕を好きになってしまうのさぁ。 なんせ僕は、村1番のお金持ちでイケメンのニャン斗さんだからねぇ」


ニャン太郎とニャン子とニャン丸 絶句する。


「絶対こいつは村1番危険な猫だな。 間違いにゃい」


八ニャン士はまたしばらくダラダラと歩くと、暇を持て余していたニャン丸は、猫上様から貰った八ニャン剣をシュンシュンと音を立てながら振り回していた。


「チッ、早くこの八ニャン剣で暴れてみてぇなぁ! 体がなまってしょうがねぇ」

「ちょいとお前さん、あんまり八ニャン剣を適当に振り回すんじゃないよ。 危ないじゃないか」

「僕はケンカは嫌いだなぁ。 ケンカなんてお金で解決すればいいんだよぉ」


ニャン太郎もニャン丸のマネをして、一緒に八ニャン剣をシュンシュンと振り始める。


「僕もニャン丸と同じ八ニャン剣を使って、早く里見村を守りたいなぁ。 テレビでやっている正義のヒーローみたいにさ!」

「ニャン太郎くんはそんなにヒーローが好きなのかぁい?」

「うん、特にライダーや戦隊ヒーローが大好きなんだ。 僕はいつか里見村のヒーローになるのが夢なんだよ!」


ニャン太郎がキラキラした目でドヤ顔すると、それを見てイラッとしたニャン丸がケンカを売った。


「ヘッ、俺が前に里見神社で言ったろ? 俺はそのキラキラした目をしたヤツが1番大っ嫌いなんだよ!」

「あ、思い出した! あの時ニャン丸は、やけに僕にケンカをふっかけてきたよね?」

「俺は極悪非道の暴れ猫ニャン丸様だ。 お前みたいに正義とかヒーローとか言うやつを見ると、無性にイライラしてくるんだよ!」

「ははぁ、分かったぞ! さてはお前、悪の手下『毒グモ猫男』だな? この平和な里見村をムチャクチャにするつもりだろ!」

「そんなことするかぁ! しかも誰が悪の手下の毒グモ猫男じゃあ! ニャン太郎、この俺と八ニャン剣で勝負だ」


伏夜を探しに行ったはずの八ニャン士だが、なぜかニャン太郎とニャン丸の決闘が始まってしまう。ニャン太郎とニャン丸はハチマキにタスキ掛けをして睨み合い、八ニャン剣の剣先を向かい合わせていた。

そして乾いた風が2人の服を揺らし、どこからか西部劇のBGMが流れる。


「ヘッ、お前のヒーローごっこも今日で終わりだニャン太郎! いいかげん目を覚ますんだ」

「黙れ、毒グモ猫男。 極悪非道のお前を倒し、僕が里見村を平和にする!」


こうしてニャン太郎とニャン丸の決闘が始まったが、お互い慣れてない八ニャン剣を振り回している為に剣の技に大差はない。いつまでもダラダラと戦っている2人を、ニャン子とニャン斗はあくびをしながら横になって見ていた。


「は〜あ、あいつらはいつまであんなことやっているのかね〜。 あたいは眠くなってしまうよ〜」

「まったくだよぉ。 早く伏夜さんを見つけにいかないと、日が暮れてしまうよぉ」


いつまでもキリが無いこの戦いに、ニャン太郎はとっておきの必殺技を出す。


「よぉし、戦いはいよいよクライマックスなってきた。 こうなったら必殺の『ニャン太郎ジャンプ』だ。 覚悟しろ、毒グモ猫男!」

「ニャ、ニャン太郎ジャンプだって?」


するとニャン太郎の靴のカカトがカチッと開き、そこから強力なバネが飛び出す。そしてそのバネの力でニャン太郎は空高く飛ぶと、ニャン丸とニャン子とニャン斗が叫んだ。


「とおぅ!」

「おお、ニャン太郎が飛んだぁ!」

「くらえ、必殺ニャン太郎サンダー!」

「おおおお!」


しかし、ニャン丸が立っていた位置とは別の所にニャン太郎は飛んで落ちてしまう。それを見たニャン丸とニャン子とニャン斗は呆れて口を開けた。


「何やってんだ、お前? バカなのか?」

「やれやれ、太郎ちゃんは本当に困った子だよ〜」

「ニャン太郎くん。 バカなことをやってないで、早く伏夜さんを探しに行きましょう」

「う、うん、ごめんね。 皆んな仲良く行こうね」

  


こうして八ニャン士は、またしばらくダラダラしながら歩き続けた。1・2時間歩いても伏夜が見つからず、とうとうニャン丸がイライラして切れてしまう。


「ってかおい、ニャン子! いつまでダラダラ歩くんだよ! お前は本当に分かっているのか?」

「ニャン子ちゃあん、イケメンの僕もさすがに疲れてしまったよぉ」

「ニャン子ちゃん、本当にこっちの方に伏夜様がいるの? 僕も心配になってきた」

「なんだいなんだい! お前さんたち、このあたいの嗅覚をナメんじゃないよ!」


と言いながら、ニャン子はティッシュを取り出して勢いよく鼻をかむ。


「でもさ〜、最近花粉症で鼻がつまって困っているんだよ〜。 ハックション!」


ニャン太郎とニャン丸とニャン斗 コケる。


「チッ、それを早く言え! ずっと歩いてきて、もう里見村の外れまで歩いて来たじゃねぇか」

「ってことはニャン丸くん、これはマズいことになりましたよぉ」

「おやおや、もうここまできっちまったかい。 こりゃえらいことだね~」

「え、何が? 皆んなどうしたの?」


大屋敷に住んで何も知らない世間知らずのニャン太郎は、3人が言っていることに全く理解していない。


「ニャン太郎くん、里見村の隣にある『大和田村(おおわだむら)』にはあの狸たちがいるんだよぉ」

「へ? 大和田村の狸たち?」

「チッ、お前はそんなことも知らないで、よく村長の家に住んでるな? 大和田村の狸と里見村の猫は、昔から仲が悪いんだよ」


里見村と大和田村の間には東野川とうのがわが流れており、そこには1本の東野橋がかかっている。その河川敷はお互いのフリースペースのはずだが、大和田村の狸は里見村の河川敷まで縄張りにしようとしていた。里見村の猫と大和田村の狸が出会うと争いが起きるのは、この辺りでは日常茶飯事のことである。


すると、橋の向こう側から怪しい4人の狸たちがヘラヘラしながら歩いて来た。ニャン士の悪い予感は的中、その怪しい4人の狸は早速八ニャン士に絡んできた。


「おいおい、お前ら里見村の猫じゃね〜か。 ヒッヒッヒ!」

「さっそくお前たちをイジメてやるぜ! ヒッヒッヒ!」

「チッ、ちょっとめんどくせぇ狸どもが里見村にやって来やがったぜぇ」


八ニャン士と4人の狸たちがお互いを睨み合うと、東野橋付近では張り詰めた空気が漂っていた。

村長の娘の伏夜さんを探しをしていた八ニャン士は、なぜか宿敵である大和田村の近くまで来てしまった。

怪しい4人の狸たちに絡まれてしまった八ニャン士は、これから一体どうなるか?

そして家を出て行った伏夜さんは、どこへ行ったのか?


次回「正の巻」をお送りします。

八ニャン士ピンチ! 大和田村の狸との決闘やいかに?


お楽しみニャン!


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