第6話 翔の巻
風ニャン神によってスピード強化の修業をしているニャン太郎とニャン丸とニャン蜜とニャン吉。
その中でニャン吉が豹変すると走るスピードが速くなるということが分かり、それは修業のおかげでさらにパワーアップすることが出来た。
鬼ごっこの修業を終えた次の日、風ニャン神のグループは場所を森の中へと移動した。
里見山の森の中には背の高い木がたくさん立ち並び、その下には様々な植物が生息している。風ニャン神はその高い木の上から長い縄に縛られて、ブラブラとぶら下りながら遠くに見える景色を優雅に眺めていた。
「ここから眺める里見村の景色は綺麗だねぇ。 ねぇ、皆んなも見てごらんよ!」
「あのぉ、お師匠さん?」
「何で僕たちは?」
「高い木の上から?」
「ぶら下がっているのかにゃん?」
八ニャン士も大きい木の上から長い縄で縛られて、ブラブラと空中にぶら下がっていた。
「フフフ、決して意地悪なんかじゃないよ。 今日の修業は、この高い木を使って空中戦ブランコをやるんだ」
「師匠、これは誰が見ても意地悪だと思います」
「ニャン太郎くん、戦いの場では走るのが早いだけじゃなく空中で飛び回ることも重要なんだよ。 だから次の稽古は空中戦での剣術を行うよ」
「ヘッ、俺たちをこんな所にぶら下げて、それからどんな修業をするんだよ?」
「ルールはさっきの鬼ごっこと同じで、僕の体を触ったら今日の修業は終了だよ。 だからいつも元気なニャン丸くんも頑張ってね」
すると、昨日の稽古でご褒美が貰えなかったニャン蜜とニャン吉が言いにくそうにモジモジしていた。
「あのぉ、風ニャン神様ぁ? 私が風ニャン神様を触ったら、何かご褒美はあるのかにゃあ?」
「フフフ、もちろんあるよ。 僕の体に触れたら、ニャン蜜ちゃんのほっぺにチューしてあげよう!」
「やったぁ♡ ご褒美貰うまでがんばるにゃん♡」
「あのぉ、僕の猫アイドルのDVDは?」
「もちろんニャン吉くんにはDVDをあげるよ。 だからニャン吉くんは早く豹変しちゃいなよ」
「うおおお! 今度こそやってやるぜぇ」
ニャン吉とニャン蜜 がぜんやる気が出る。
すると1羽の大きなカラスが突然八ニャン士を襲い、空中戦ブランコの稽古の邪魔をしてきた。
「ガーッ! ガーッ!」
「な、なんだぁ? 何でこんな大きなカラスが里見山のいるの? こんなの初めて見たよ!」
それは里見山しか観測されていない『カッテデショオオカラス』だった。その大きなカラスに襲われた八ニャン士は、縄に縛られながらバタバタと騒いでいた。
「チッ、大声でガーガーと鳴きやがってうるせぇカラスだなあ!」
「ニャ、ニャン丸くん、たぶんカラスが鳴くのはカラスの勝手なんでしょ? 僕は家に帰りたい」
「怖いにゃ、怖いにゃ! あっち行けにゃあ!」
カッテデショオオカラスに怖がる八ニャン士を見て溜息をつく風ニャン神。
「まったく、しょうがないなぁ」
そして風ニャン神はゆっくりと風ニャン剣を抜いて構えると、剣先から無数の鋭い風が出てきた。
「風ニャン剣奥義 裂葉風!」
説明しよう
風ニャン神は風を操ることができる猫剣士である。裂葉風とは、葉を切り裂くほどの鋭い風のことを意味する。
風ニャン神は空高く飛んで剣を振り回すと、その剣から出た鋭い風で大きなカラスを弾き飛ばした。カッテデショオオカラスは八ニャン士を襲うのを諦め、何処か遠くへ飛んで行った。
そして風ニャン神は剣を鞘におさめ、カラスに怖がっている八ニャン士に向かって言った。
「あのカラスめ、僕たちの稽古の邪魔をしないでほしいな。 ねぇ皆んな、大丈夫だったかな?」
先ほどの風ニャン神の剣技を見た八ニャン士は、口を開けたまま目が点になる。
「風ニャン剣のパワーって、もの凄いっすね。 もう師匠には逆らいませ〜ん」
そしてスピード強化の修業が始まると、風ニャン神は声高らかに叫んだ。
「ではぁ、八ニャン士空中戦ブランコ始めっ!」
バキ! バキ!
風ニャン神はまたいきなりニャン太郎とニャン丸を足で蹴ると、風ニャン神はブランコのように大きく揺られながら高く飛んで行った。
「イテテ、今度は派手に蹴られたぜ。 ケッ、相変わらず汚ない手を使う師匠だな!」
「何で最初に殴られるのは、いつも僕とニャン丸だけなの?」
八ニャン士はそれぞれ縄で大きく揺られながら、風ニャン神を触ろうと必死で追いかけた。ニャン太郎とニャン丸は八ニャン剣をシュンシュンと振り回したが、風ニャン神の風ニャン剣にあっさりと交わされてしまう。
「ニャン太郎くんとニャン丸くん、もっともっと素早く八ニャン剣を振るんだよ!」
「はい!」
「剣の動きを止めちゃダメなんだ。 まさに風を切るかのように剣を早く振るんだ!」
「風を切るかのように剣を早く振る」
ニャン太郎とニャン丸は必死で剣を振り回しても、風ニャン神に軽く交わされていた。
「君たちは前の方だけ剣を振り回しているから、相手に攻撃を読まれてしまうんだよ。 もっと上下左右に素早く振ってごらん!」
「上下、左右、上下、左右」
「その調子だよ! まだまだ剣の動きを止めないで円を描くように動くんだ!」
「上下、左右、円を描くように・・・もう無理です」
ニャン太郎とニャン丸は剣を振り回しすぎて疲れていると、次に風ニャン神はニャン吉を鍛えた。
「ニャン吉くんは体が小さいから、小回りに早く飛び回るんだ。 やってごらん!」
「うおおおお!」
「スピードや方向を90度に変えて、急に変化させるように動くんだ!」
「うおおお、うおおお!」
「体を前転や後転させながら、時にはダンスのように踊りながら動くんだ!」
「うおおお、うおおお、うおおお・・・もう無理です」
やがて風ニャン神のスピードが益々速くなり姿が見えなくなると、シュンシュンという風の音だけが聞こえていた。
「師匠が風になった。 もう体が見えない!」
すると姿が見えない風ニャン神はいきなり現れ、ニャン太郎の左から出てきて顔を殴る。
「痛ぁい! 師匠のスピードが速すぎて体が見えないのに、どうやって戦ったらいいんだ?」
今度はニャン丸の上から現れ、いきなり顔を蹴った。
「ギャ~、どうやってこの風から逃げたらいいんだぁ。 誰か助けてくれぇ!」
今度はニャン吉の後ろから現れ、DVDの角で頭を叩いた。
「師匠ぉ、何もDVDの角で殴らなくてもいいじゃないですかぁ!」
見えないこのスピードの中で、風ニャン神は笑いながらニャン蜜に向かって叫んだ。
「フフフ。 ニャン蜜ちゃん、いよいよ君の聴力を見せる出番がきたようだね! スピードが早くて見えない僕の姿を、追いかけて見ようとしてはダメなんだよ」
「私の聴力? 見ようとしてはダメにゃん?」
「姿が見えない敵に対しては、それを見ようとしても敵のスピードに追いついていかないんだよ。 だから君の聴力を使って、耳に集中しながら僕の風の音を聞いてごらん」
「耳に集中? 風の音にゃ?」
目をつむり集中すると、風ニャン神の風の音を聞いたニャン蜜の耳がピクリと動いた。
「ニャン太郎、右45°! ニャン丸、左45°!」
「え? ニャン蜜ちゃん、何を言ったの?」
「チッ、ニャン蜜、いい加減なこと言うんじゃねぇ!」
するとニャン太郎の右45°、ニャン丸の左45°から風ニャン神が現れて顔を殴った。
「グエエエエ! もう殴られるの嫌だぁ!」
「ギョエエエ! 俺の体はボロボロだぜ」
風ニャン神は風の中で笑いながら、風の動きを聞き取れるニャン蜜を褒めた。
「フフフ、その調子だよニャン蜜ちゃん。 そのまま風の音を聞いて、皆んなに指示してごらん」
「ニャン吉、上! ニャン太郎、左後ろ45°! ニャン丸、右前45°!」
ニャン蜜は速いスピードで見えない風ニャン神の動きを、聴力で的確に指示をした。するとニャン太郎とニャン丸とニャン吉は、次第にニャン蜜の指示に対応できるように動けるようになった。
「へへへ。 ニャン蜜、お前の的確な指示が当たって助かるぜ。 お前の聴力はなかなかスゲェよ!」
「ニャ、ニャン蜜ちゃん、とてもかっこよくて可愛いよ!」
「さすが八ニャン士女軍師、頼りになるよ!」
「いや~ん、皆んにゃいっぱい褒めてくれて照れるにゃあ。 これもイケメンの風ニャン神様のおかげだにゃあ♡」
皆んなに褒められたニャン蜜はデレデレしていると、その隙にニャン太郎とニャン吉とニャン丸は風ニャン神に殴られる。
「ギョエ〜! ニャン蜜ちゃん、デレデレしにゃいで今はちょっとだけ稽古に集中してにゃん」
ニャン蜜の聴力が良くなって喜んでいるのも束の間、風ニャン神は次の手を出した。
「フフフ。 ニャン蜜ちゃんの聴力もパワーアップしてきたことだし、そろそろ僕のスピードも上げてみようかな」
風ニャン神は両手を胸にあてると、体の中からキラキラと輝き始める。
「師匠? そろそろスピードを上げようって、今までは上げてなかったんですか?」
「ちっくしょう! この空中戦ブランコはどこまでやれば終われるんだよぉ」
「俺は家に帰りたいけど、あの猫アイドルのDVDを貰うまでは絶対に帰れねぇぜぇ!」
「うぁあ、キラキラしている風ニャン神様も素敵だにゃあ」
そしてさらにスピードを上げて風ニャン神の体が消えると、ニャン蜜もさらに耳に集中して指示をした。
「ニャン吉、左! ニャン丸、後ろ!」
「ギャアア、また始まった!」
「風の音さえ聞こえないのに、姿が見えない師匠を捕まえるにはどうしたらいいんだよ?」
風ニャン神のスピードが速すぎて、ニャン蜜の聴力による指示では3人の対応が遅かったのである。
「皆んにゃ、どうしよ? もう私の聴力じゃあ、風ニャン神様の動きに追いつけにゃいよ」
「そうだニャン蜜ちゃん、もう0.5秒早く支持ができる? そうすれば、僕らも早く対応できるはずだ!」
「ニャン太郎分かったにゃん、やってみるにゃん!」
ニャン蜜はもう一度目をつむり風の音に集中すると、耳がピクリと動いた。
「ニャン太郎、右上45°!」
「よし、そこだぁ! 僕が師匠の剣を食い止めてやる」
パキーン!
風の中から出た風ニャン神の剣を、ニャン太郎は八ニャン剣で受け止めた。
「やったぁ! やっと師匠の見えない剣を、僕の八ニャン剣で食い止めた!」
「フフフ、ニャン太郎くんお見事! ニャン蜜ちゃんの指示も的確ですばらしいよ」
「風ニャン神様ぁ、ありがとうございますにゃん!」
「ヘッ、ニャン蜜の早い指示さえあれば師匠の剣など怖くねぇ。 ニャン吉、俺たちも行くぞ!」
「うおおお、DVDは俺が貰ったぁ!
さらに風ニャン神の激しい攻撃が続いたが、ニャン蜜の的確な指示でニャン丸もニャン吉も攻撃を交わすようになっていた。
こうしてしばらく空中戦ブランコの稽古が続くと、やっとニャン丸が風ニャン神の体に触れることが出来た。
「ヘッ、今度は俺様が師匠の体を触ったぜぇ。 ハッハッハ、ざまぁみろ!」
「よくやったね、ニャン丸くん! 君の八ニャン剣もだいぶ速くなって良くなったよ!」
「ありがとうございます! へへへ、極悪非道のこの俺様でも、やっぱり褒められると嬉しいもんだな」
しかしまたご褒美が貰えないニャン蜜とニャン吉は、風ニャン神の体に触れたニャン丸への怒りにブルブルと震えていた。
「おい、ニャン丸! だから風ニャン神様の体を触るのは、この私だって言ってるにゃあ」
「テメェ、よくも俺のDVDの邪魔をしてくれたなぁ!」
バキッ! バキッ!
ご褒美が貰えなくて怒り狂ったニャン蜜とニャン吉は、ニャン丸を思いっきり殴った。
「ギャ〜、イテ〜! なんか今回の俺は殴られてばっかりだよね?」
空中戦ブランコの稽古をクリアした八ニャン士を、風ニャン神は遠くで眺めながら微笑んでいた。
「フフフ。 さぁて、そろそろスピード強化の修業の最終仕上げに入ろうかな!」
空中戦ブランコの稽古で、八ニャン士女軍師のニャン蜜ちゃんの聴覚がかなりパワーアップしたみたいですね。
風ニャン神のスピードにだんだん慣れてきて、少しずつ八ニャン士の力がついてきたみたいです。
ところで風ニャン神が見せた『風ニャン剣奥義』って、一体いくつあるんですかね?
次回「獣の巻」をお送りします。
ギャー! 雷ニャン神が3匹の猛獣を連れて来た?
お楽しみニャン!




