第5話 雷の巻
八ニャン士を修業させる為にやって来た、猫剣士育成トレーナーの風ニャン神と雷ニャン神。
雷ニャン神グループのメンバーは、ニャン子とニャン助とニャン平とニャン斗だった。
そしてこのグループはパワー強化の修業をする為に、里見山の山奥にある滝のそばに集まっていた。
里見山の山奥には『ニャイアガラの滝』という聖なる滝があり、里見村の猫にとって大切なパワースポットとなっていた。雷ニャン神は腕を組みながら、激しく水が落ちるニャイアガラの滝をジッと眺め笑っていた。
「へへへ、この滝はいつ来ても気持ちいいなぁ。 風ニャンと一緒に稽古したことを思いだすぜ!」
風ニャン神と雷ニャン神はお互いに『風ニャン・雷ニャン』と呼んでおり、2人はかつてこの滝で猫剣士になる為の修業をしていたことがある。そんな昔を思い出しながら滝を眺めている雷ニャン神の後ろで、八ニャン士は気が抜けた顔をしながら並んでいた。
「あのぉ、何で俺たちがこんな滝で修業をやらなくちゃいけないんすか? ああ腹減った!」
「ああ、やだやだ。 猫剣士の修業だなんて、この華麗で美しいあたいの体が台無しだよ〜。 チャチャッと終わらせて、早くエステに行きたいね〜」
ずっと愚痴をこぼしているニャン平とニャン子に向かって、雷ニャン神は後ろを振り向きジロリと睨む。
「おい、ニャン平とニャン子。 いつまで愚痴ってるんじゃねえ! お前たちは猫上のとっつぁんの話しを聞いていたろ? もう忘れたのか?」
「カミオの話しってん、あのペロンチョのことん?」
「だからさぁ、ペロンチョが出てきたことでさぁ、何で僕たちが稽古をやらなくてはいけないのさぁ?」
「ニャン助とニャン斗。 お前らは八ニャン士として、里見村と伏夜さんを守る役目があるんだろ?」
いつまでもダラダラしている八ニャン士に、雷ニャン神は段々とイライラしてきた。
「ああ、いちいち面倒くせぇ奴らだな。 ハッキリ言って今のお前たちはメチャクチャ弱いから、忙しい俺たちがわざわざ里見村まで来てやったんだよ!」
いきなり怒鳴られたニャン平は、イライラしている雷ニャン神に向かって噛みついた。
「おい、雷ニャン神! ハッキリ言って八ニャン士の中では俺だけが強いっす。 この俺様をナメんなっす!」
「ニャン平、お前はあのニャン丸と同じで口の利き方がなってないな。 そんなに強えなら、この俺と腕相撲で勝負するか?」
「ガッハッハ、そんなヘナチョコの腕をしている貴様がこの俺様と腕相撲っすか? 笑わせるなっす!」
そう言ってニャン平は笑いながら服を脱ぐと、自慢のムキムキマッチョの体を披露した。しかし雷ニャン神は余裕の笑みを浮かべながら、太くて引き締まった片腕を出して岩の上に肘を置いた。
「余計な屁理屈はいいから早く来いよ、デカイの!」
「里見村1番の怪力の俺様をナメるなっすよぉ!」
こうして雷ニャン神とニャン平の腕相撲が始まった。
「レディー、ゴー!」
ドーン!
腕相撲が始まったその時、瞬殺でニャン平は地面の奥底まで埋まった。それを見ていたニャン子とニャン助とニャン斗の空いた口が塞がらない。地面の奥底で気を失っているニャン平を、雷ニャン神は片手でヒョイとつまみ上げた。
「おいニャン平、まぁだ俺と腕相撲やる気か?」
「いいえ、すみませんっすです。 僕ちゃん、修業しますっす」
雷ニャン神は八ニャン士を横一列に並べ、パワー強化の修業について説明した。
「ええ、今からお前たちはパワー強化の稽古をする。 それは大きい敵と戦う時に、場合によってはいろいろなパワーが必要になるからだ!」
「師匠? 力のあるニャン平はともかくん、何で忍び猫の俺がパワー強化なのん?」
「ニャン助はパワーというより、お前の特技である逃げる為の忍術のパワー強化だな。 まぁ、逃げるは恥だが役に立つだろ!」
どこかで聞いたことのあるセリフである。そしてニャン助の忍術は特技というよりは、ただの趣味である。
「だからさ〜、何でこのあたいがパワー強化なんだよ〜? あたいはセクシーな乙女なんだよ〜?」
「ニャン子、確かお前は飛び蹴りが得意だよな? そのお前の飛び蹴りのパワーを強化するんだよ」
「あら、やだよ~。 逆にあたいが雷ニャン神様から飛び蹴りされたいじゃないか~」
「へへへ。 じゃあお望み通り、俺の飛び蹴りでニャン子をいじめてみようかなぁ」
「おや、雷ニャン神様はあっちの方もそうとうお好きみたいだね~♡ このあたいと試してみるか〜い♡」
雷ニャン神とニャン子がイチャイチャしていると、ニャン助とニャン斗とニャン平は目が点になっていた。
「あのぉ、2人ともイチャイチャするのやめてくれませんかね? 稽古する気が無くなるんで」
すると、今度はニャン斗が雷ニャン神に質問した。
「お師匠さん、じゃあ何で僕がパワー強化するのさぁ? ひょっとして、僕のこのイケメンをパワーアップすると言うのかぁい?」
「それは違う。 ニャン斗、お前八ニャン士の皆んなに何か隠していることあるだろ?」
ニャン斗はドキッとした顔をして冷や汗をかきながら、その事を恐る恐る雷ニャン神に聞いた。
「え? お師匠さんは、僕の何を知ってるんですか?」
「とぼけるんじゃねぇよ。 確かお前、長い時間女猫と遊ぶくらいの凄いパワーを持っているんだよな。 しかもお前のその目は真夜中になると、長い時間遠くまで光るらしいじゃねえか」
実はニャン斗は夜な夜な女猫と遊んでいる為、暗闇でも遠くまで目が光る特技を持っている。
「ギクッ! 何でそれを?」
「まぁ元々猫の目というのは暗闇でも光るものだけど、長い時間しかも遠くまで目を光らせることが出来るのは、八ニャン士の中ではニャン斗が1番だろうな」
「え? それ誰から聞いたんですか?」
「バカやろう、俺は全国の女猫を相手にしているんだぜぇ! お前みたいなチンケなイケメンの情報くらいは、す〜ぐ俺の耳に入ってくるんだよ」
ニャン斗 コケる。
猫剣士の雷ニャン神は女猫好きで、全国の女猫を相手にしているイケメンの猫である。中途半端な女猫好きのニャン斗など全く相手にならない。
「だからヒョロヒョロしたお前の体から放つその光りをパワー強化するんだよ。 イケメンなんて最初から俺に敵うわけねぇだろ!」
「イケメン先生! イケメンの方の稽古もお願いしまぁす」
そして、いよいよ雷ニャン神によるパワー強化の修業が始まった。
「今からお前たちをパワー強化する為、まずは基本となる体の筋力を鍛える稽古を始める。 初めに腕立て伏せ1,000回と腹筋1,000回と背筋1,000回、そして次の日からそれぞれ1000回プラスしていく!」
「ええええ!」
「ええええじゃない! お前たちは何かをやるたびに、いちいちうるさいんだよ!」
「腕立て腹筋1000回なんてさぁ、イケメンの僕は死んじゃうよぉ。 ああ、お金で解決したい」
「ニャン斗、何言ってんだよ。 お前は女猫と夜な夜な遊ぶくらいパワーあるくせに」
すると、今度はニャン子が激しく怒り狂う。
「お前ん、ちょいと待ちなっ! あたいのこのセクシーな体がムキムキマッチョになったら、ど~してくれんのさ!」
「おや? 俺は体が引き締まったセクシーニャン子ちゃんの方が大好きだけどなぁ」
それを聞いて耳をピクっとさせたニャン子は、また甘い声を出しながら雷ニャン神の体に擦り寄った。
「もう雷ニャン神様ったら。 あたいをそんなに引き締まったセクシーにして、ど〜するつもりなんだ〜い?」
「それはこの修業が終わった後のお楽しみにしようよぉ。 ニャン子ちゃんは何やってもセクシーだぜぇ」
「あら、あたいをからかうのはおよしよ〜♡ も〜あたいはあんたに惚れっちまうじゃないか〜♡」
雷ニャン神とニャン子がまたイチャイチャすると、ニャン助とニャン斗とニャン平は目が点になっている。
「あのぉ、いい加減イチャイチャするのやめてくれませんかね? 良い子の皆んなもこの物語を見てますし」
最初に雷ニャン神は八ニャン士を腕立て伏せをさせた。
「腕立て伏せ1,000回始め! 1・2・3・・・」
そしてしばらく時が経ち腕立て伏せが続くと、体の大きいニャン平がイライラしてきた。
「・・・551、552っておいっ! 何で俺の体の上に師匠が乗ってんすか? しかもマンガを読みながら」
「お前は里見村1番の怪力猫なんだろ? 他の皆んなより、ちょいとハンデをつけてやらんとな!」
「ちっくしょう、重いっす。 ああ腹減った!」
すると雷ニャン神はニヤリと笑い、苦しがっているニャン平の耳元で呟いた。
「ニャン平、ここだけの話しだけどな。 この修業が終わったら、後で美味いものいっぱい食べさせてやるぞ」
「師匠、マジっすか? うおおお、637、638・・・」
雷ニャン神による悪魔の囁きにニャン平は耳を立てると、大声で叫びながら腕立て伏せを始めた。
「もうダメだよん。 普段から鍛えてないのにん、いきなり1000回なんて無理だよん」
「僕も限界だよ。 今回の1000回でも難しいのに、明日からまた増えていくんでしょ?」
すると雷ニャン神はニヤリと笑い、苦しがっているニャン助とニャン斗の耳元で呟いた。
「おい、ニャン助とニャン斗。 ここだけの話しだけどな、この修業が終わったら日本で1番可愛い女猫ちゃんを紹介してやるよ」
「ピクッ、ホントにん。 うおおお!」
「女猫ちゃんならがんばっちゃう。 うおおお!」
雷ニャン神による悪魔の囁きにニャン助とニャン斗は耳を立てると、大声で叫びながら腕立て伏せを始めた。なぜなら2人は女猫が大好きだからである。
「雷ニャン神様ぁ、 あたいはもうダメだよ~」
すると雷ニャン神はニヤリと笑い、苦しがっているニャン子の耳元で呟いた。
「おい、ニャン子。 ここだけの話しだけどな、この修業が終わったら僕と一緒にチョメチョメしてあげるよ」
「雷ニャン神様とチョメチョメ〜、本当かい〜? いやあああ!」
こうして雷ニャン神の悪魔の囁きを繰り返すと、八ニャン士の腕立てや腹筋や背筋のスピードが上がっていった。始めはやる気の無かった八ニャン士は、初日の稽古をなんとかクリアすることが出来た。
力尽きて倒れている八ニャン士を見て、雷ニャン神は腕を組みながら笑っていた。
「へへへ、お前たちの本当の地獄はこれからだぜぇ!」
さあ、雷ニャン神によるパワー強化の修業が始まりました。
雷ニャン神の悪魔の囁きは、皆んなの力をパワーアップさせるんですね。
しかしニャン斗くんの夜な夜な遊ぶパワーって、一体どれくらいあるんでしょうか?
次回「翔の巻」をお送りします。
聴力が良い女軍師のニャン蜜が、また新たな技を手に!
お楽しみニャン!




