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里見八ニャン伝  作者: ワタベミキヤ
風神雷神編
25/43

第4話 風の巻

怠け者の八ニャン士を修業させる為に、猫剣士育成トレーナーの風ニャン神と雷ニャン神がやって来た。

そして風ニャン神グループのメンバーは、ニャン太郎とニャン吉とニャン蜜とニャン丸に決まった。


風ニャン神グループはスピード強化の修業をする為に、里見山の山頂を目指して登っていた。


険しい里見山を颯爽に走る風ニャン神の後ろから、4人の八ニャン士は死にそうな顔をしながら登っていた。普段から稽古していない八ニャン士の体力不足が丸分かりである。

走っていた風ニャン神は後ろを振り向き、まるで春風のように爽やかに笑った。


「さぁ皆んなぁ、早く登っておいでよ。 今日の里見山は、とても気持ちいいよぉ!」

「風ニャン神様ぁ、待って下さいにゃあ。 可愛いニャン蜜ちゃんを置いて行かにゃいでぇ!」

「ハーハーハー。 チッ、里見村の暴れ猫の俺が、何でこんな山なんか登らなきゃならねぇんだよ!」

「でも猫剣士として修業で皆んなと一緒に強くなるなんて、なんだか僕はとっても嬉しいなぁ」

「チッ、ニャン太郎。 だから俺はそのキラキラしているお前が嫌いだっていうの! ハーハーハー、苦しいぜ」

「あ、僕は修業なんて大嫌いです。 早く家に帰りたいです」


いろいろブツブツと言っている八ニャン士に、岩の上でオニギリを食べている風ニャン神は大声で叫んだ。


「皆んなぁ、ペチャクチャ喋っていないで早く登りなさぁい! これはピクニックじゃないんだよぉ」

「へ~い! ってか、1人でオニギリ食べるし」


東野郡にある里見山は、山頂まで高い木で覆われている緑豊かな山である。そしてこの山には、世界でも観測されていない動物や植物がたくさんあった。

その里見山の山頂に着いた八ニャン士が横一列に並ぶと、風ニャン神は修業について説明した。


「ええ、今から君たちにはスピード強化の修業をしたいと思いまぁす。 準備はいいかなぁ?」

「ハーハーハー。 師匠、何だかここはとても息が苦しいぜぇ。 ったく、肺がもたねぇよ」

「ハハハ、ニャン丸くん! 里見山の山頂は空気が少し薄いんだよねぇ。 戦いでスピードを上げると呼吸が止まって苦しくなってしまうから、ついでに肺も鍛える稽古もしているんだよぉ」

「あのぉ師匠、何で僕たちはスピードの強化をするんですか? 何か理由があるんですか?」

「ニャン太郎くん、いい質問だ! それはとても弱ぁい猫剣士の君たちでもスピードを強化すれば、例え大きな敵がやって来ても少しは役に立つからね」

「なるほど! そういうことなんですね」


ずっとイライラしているニャン丸は、今回の修業に納得していない。


「ヘッ、スピード強化なんかしなくたって、俺は物凄く強いんだよっ。 先に俺が風ニャン神をやっつけてやる!」


バキッ!


「ギャ〜! イテェ〜!」


口と態度が悪いニャン丸は、早速風ニャン神から鋭い鉄拳をくらった。しかし、風ニャン神は爽やかな笑顔をしていた。


「ハハハ! ニャン丸くぅん、正直言って僕は君より100倍強いと思うよぉ。 だから師匠の僕に対して言葉使いには注意しないと、これからとっても痛い目に合って体がボロボロになるから気をつけてねぇ」

「は、はい。 師匠すみませんでした」


笑いながらニャン丸を殴る風ニャン神を見て、ニャン太郎とニャン吉は目が点になっていた。


「あの爽やかな笑顔とイケメンボイスで殴るなんて、逆に怖いですね。 真面目にやりましょう」


そんな中、ニャン蜜はさっきからイケメンの風ニャン神を見ながらメロメロになっていた。


「風ニャン神様ぁ、にゃんでキューティーな私がスピード強化に選ばれたんですかにゃあ? それはぁ、私が猫アイドルみたいで可愛いからにゃあ?」

「フフフ、軍師であるニャン蜜ちゃんは八ニャン士の中でも1番耳がいいからねぇ。 スピード強化のついでに、君の聴力も強化するんだよぉ!」

「は〜い♡ 言っていることがさっぱり分かんにゃいけど、風ニャン神様がそう言うにゃら、にゃんでもしますにゃあ♡」


ニャン太郎とニャン吉とニャン丸 目が点になる。


「ニャン蜜ちゃん、さっきから目がハートだらけだよ」


すると、今度は小声のニャン吉がボソボソっと呟いた。


「あ、あのぉ師匠、何で僕がスピード強化なんですか? 僕は皆んなより体が小さくて歩くのが遅いのに」

「フフフ。 実はこのスピード強化の修業では、ニャン吉くんが1番のポイントだと僕は思っているんだよ!」


それを聞いた八ニャン士は声を上げた。


「ええ! 小声で小柄で歩くのが遅いニャン吉が1番のポイント?」

「え? 僕が? どして?」

「うわさだと、ニャン吉くんは()()()()で豹変するらしいじゃないかぁ!」

「あることで豹変って・・・それはまさか?」


ニャン太郎とニャン蜜とニャン丸 嫌な予感する。


「確か豹変したニャン吉くんがあれを買い行く時、猛スピードで自転車で走るって聞いてるよぉ!」


説明しよう。

ニャン吉は猫アイドルDVDコレクターで、DVDの発売日になると自転車を猛スピードで走って買いに行ける物凄いパワーがあるのだ。


「ああ、アレ!」

「僕が思うに豹変したニャン吉くんの走るスピードは、八ニャン士の中では断トツで1番だと思ってるんだよ。 だから普段大人しいニャン吉くんが、出来れば豹変しなくても速く走れるといいなぁ」

「ケッ、マジか! こんな小声で小柄なのに八ニャン士の中で走るのが1番速いって、なんだかお前すげぇな」

「そうだね。 僕もだんだんニャン吉を見る目が変わってきたよ」

「そ、そうだにゃん。 あまりアイドルオタクのニャン吉先生を怒らせにゃい方が良さそうだにゃん」

「ちょ、ちょっと皆んなぁ、そんなこと言わないでよぉ。 今でも僕はチビりそうで、早く家に帰りたいよぉ」



そんな雑談をした後、いよいよ風ニャン神によるスピード強化の修業が始まった。

横一列に並んでいる八ニャン士には、それぞれ亀の甲羅のような形をした大きな石を渡される。


「じゃあまずは、この大きくて重たい石を背負ってもらおう。 それから皆んなで鬼ごっこを始めるよぉ」

「チッ、バッカバカしい。 浦島太郎の亀みたいに石を背負って、何でこの俺が鬼ごっこなんかやらなきゃいけないんだよ! こんな修業なら俺は村に帰るぜっ!」


バキッ!


「ギャー! まただぁ!」


先ほど注意されたことを忘れているニャン丸は、またいきなり風ニャン神から思いっきり鉄拳で殴られた。


「フフフ、まぁだ口の悪いニャン丸くんは分かんないみたいだねぇ。 ついでに君の生意気なその口調も、厳しい修業で直してみようかなぁ」

「師匠す、すみません。 これから言葉には気をつけます」


八ニャン士はそれぞれ大きい石を縄で体にくくりつけ、横一列に並んでいた。


「あのぉ師匠? こんな重たい石を背負って、普通の鬼ごっこをするだけの修業なんですか?」

「そうだよニャン太郎くん、ただの鬼ごっこだよ。 君たち4人が僕の体に触ることが出来たら、今日の稽古は終わりだよ」

「ヘッ、修業なんて大袈裟なことを言って、やることは簡単なことじゃねぇか。 この俺様がすぐに師匠の体に触れて、修業を早く終わらせてやるぜ」

「ハハハニャン丸くん、普通の鬼ごっこしてもつまらないじゃないかぁ! だからお互いに剣を使って、剣術をしながらでの鬼ごっこだけどねぇ」


風ニャン神は微笑みながらそう言うと、腰から派手に装飾された風ニャン剣をキラリと振りかざした。


「ああっ! 師匠の風ニャン剣はかっちょいいですねぇ!」

「君たちも八ニャン剣を使ってね。 特にニャン太郎くんとニャン丸くんの2人は剣術の強化もやるよぉ」

「はい、分かりました」


それから風ニャン神はスタートの合図をする。


「ではぁ、八ニャン士の剣術鬼ごっこ始めっ!」


バキッ! バキッ!


合図と同時に風ニャン神はいきなりニャン太郎とニャン丸を殴ると、笑いながら森の中へ走って逃げて行った。


「ハハハ、ニャン太郎くんとニャン丸くんにはまだまだ隙があるみたいだねぇ。 戦場ならすぐにやられてしまうよぉ。 さあ皆んなぁ、鬼さんこちら、手の鳴る方へ!」

「チッ、ちっくしょう! おいっ、いきなり殴ってくるなんてきったねぇぞ。 待ちやがれっ!」

「イテテテ、師匠の修業は厳しいですね。 これは1週間体が持つのかなぁ?」

「風ニャン神様ぁ、ちょっと待ってにゃあん♡」

「ぼ、僕は早くてついていけないです」


八ニャン士は全員で追いかけたが、風ニャン神の足があまりにも早すぎてなかなか体には触れられなかった。ニャン太郎とニャン丸は八ニャン剣を素早くシュンシュンと振り回したが、トレーナーである風ニャン神の剣であっさりとかわされてしまう。


「ハハハ! ニャン太郎くんとニャン丸くんは、まだまだ八ニャン剣の使い方がなっていないよぉ」

「は、はい! 頑張ります!」

「それとニャン吉くんは走るスピードが遅いから、もうちょっと早く走ることが出来ないかなぁ?」

「ハーハーハー、ぼ、僕はもうダメです。 だから僕は早く走れないって最初から言ってるのに」

「それとニャン蜜ちゃぁん! もし僕の体に触ることが出来たら、ご褒美にホッペにチューしてあげるよ」

「ほんとにゃん♡ 風ニャン神様ぁ、待ってにゃ~ん♡」


風ニャン神のその一言で、ニャン蜜の走るスピードがいきなり上がった。それを見ていたニャン太郎とニャン吉とニャン丸は、呆然と見ながら目が点になる。


「ニャン蜜ちゃんはチューをしたくて足が早くなっている。 やはりニューハーフの底力は恐ろしいですな」


風ニャン神は素早く走りながら、今度はニャン吉にあるものを見せた。


「フフフ、そしてニャン吉くんにはコレだよっ!」


風ニャン神が見せたそれは、アイドルオタクのニャン吉の大好きな猫アイドルのDVDである。


「それは今話題の猫アイドルユニット『NyajuU(ニャジュー)』のDVDじゃねぇか! 俺も持ってねぇ」

「フフフ。 もし僕の体に触ったら、このDVDを君にあげるよ。 だから早く豹変して僕の体を触ってごらんよ!」


風ニャン神のその言葉を聞いたニャン吉は、顔が赤くなり急に豹変した。そしてニャン吉の足の筋肉が太くなり、走るスピードが段々と速くなっていった。


「うおおお! テメェ、そのDVDをよこせぇ!」

「まだまだぁ、ニャン吉くん。 もっと君の足は速くなるはずだよ」

「うおおお!」


すると風ニャン神を追いかけるニャン吉の足が速くなり、2人の姿が見えないスピードになっていった。それを見ていたニャン太郎とニャン蜜とニャン丸は、走るスピードが速すぎて全く追いつけなかった。


「あれ? ニャン吉と師匠の姿が見えなくなってしまったよ」

「ニャン吉先生の猫アイドルパワーは凄いにゃあ」

「あんなに小柄なのに、豹変したニャン吉は本当に恐ろしいな。 どこからあのパワーが出るんだよ?」


DVD欲しさに荒れ狂うニャン吉。


「うおおおお! そのDVDをよこせぇ!」

「いいよぉニャン吉くん、まだまだ君は早くなれるはずだよ。 このDVDが欲しかったら、早く僕のスピードに追いついて来なよ!」


風ニャン神の走るスピードがさらに加速していくと、そのスピードと同じ速さでニャン吉の体がシュっと消えていった。


「風ニャン神様とニャン吉の姿が消えたにゃん!」

「み、皆んな。 とりあえずニャン吉の速さに負けないで、なんとか俺たちもついて行こう!」

「おいおい、ニャン太郎! 2人とも全く見えないのに、一体どこへついて行くっていうんだよ?」


しばらくするとニャン太郎とニャン蜜とニャン丸の目も慣れてきて、なんとか2人の速いスピードに合わせられるようになってきた。



風ニャン神による剣術鬼ごっこの修業を始めてからしばらく時間が経とうとしていた。

そしてとうとうニャン太郎が、風ニャン神の体を触ることが出来た。


「やったぁ、この僕が師匠の体を触ったよぉ!」

「よくやったね、ニャン太郎くん。 それからだいぶ八ニャン剣のスピードも上がったみたいだね!」

「本当ですか? 師匠、ありがとうございまぁす!」


しかしニャン蜜とニャン吉は師匠からご褒美が貰うことが出来ず、ニャン太郎への怒りにブルブルと震えた。


「おいニャン太郎、にゃんでお前が風ニャン神様の体を触るんだにゃあ? これじゃあ、師匠からのご褒美のチューがもらえにゃいにゃあ!」

「おい、ニャン太郎! オメェのせいで新作のDVDがもらえないじゃねぇか。 ちょっとは空気読め!」

「あっ、ニャン吉とニャン蜜ちゃんが狂った! ヤバい、逃げろっ!」


怒り狂ったニャン蜜とニャン吉は、素早くニャン太郎を追いかける。剣術鬼ごっこで稽古で疲れたニャン丸は、ダラダラと横になってそれを見ていた。


「ヘッ、あいつらまだ鬼ごっこしてやがるよ。 俺は疲れてもう走れねぇし、ケンカもする気にもならねぇ」


いつまでも走り回るニャン太郎とニャン吉とニャン蜜。


「ニャン吉とニャン蜜ちゃん、ごめぇん。 これから鬼ごっこは2人に任せるから、許してぇ!」

「待てぇ、風ニャン神様のチューを返せにゃあ!」

「オメェはいつも無駄にキラキラしやがって、待ちやがれこのヤロウ! 八ニャン剣で殴ってやる!」


風ニャン神はそんな八ニャン士の姿を見ながら、腕を組みながら微笑んでいた。


「フフフ。 でも君たちの修業はまだまだこれからだよ!」

さあ、風ニャン神によるスピード強化の修業が始まりました。

特にニャン吉くんの走るスピードが速くなり、かなりパワーアップしたみたいですね。

ニャン蜜ちゃんとニャン吉くんは、今度こそ風ニャン神様からのご褒美はもらえるかな?


次回「雷の巻」をお送りします。

雷ニャン神グループのパワー強化の修業とはいかに?


お楽しみニャン!

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