第3話 業の巻
猫水晶を奪いに来た大トカゲのペロンチョの攻撃に、八ニャン士は力及ばず大惨敗してしまった。
しかし、そこへ華麗に武装した猫剣士の風ニャン神と雷ニャン神が突然現れた。
その風ニャン神と雷ニャン神とは、猫剣士を育成する為のトレーナーだった。
猫上様から猫剣士の育成トレーナーと言われても、八ニャン士はあまりピンときていないというか、むしろ嫌な予感していた。風ニャン神と雷ニャン神が腕を組んで笑っていると、ニャン太郎は猫上様に聞いた。
「あのぉ猫剣士の育成トレーナーって、この国で僕たちの他に猫剣士がたくさんいるんですか?」
「猫剣士は全国各地に存在する。 そしてお前たちは1番新しく出来た猫剣士で、しかもここは猫の聖地でもある里見村だからすごく重要な猫剣士なのじゃよ」
「いやいや。 猫の聖地で重要な猫剣士って言われても、今の僕たちの力はこれが精一杯です」
「ホッホッホ、ニャン太郎。 だから今からお前たちを強い猫剣士として修業させる為に、育成トレーナーであるこの2人が村へ来てくれたのじゃよ!」
それを聞いた八ニャン士は一斉にブーイングする。なぜなら、もの凄く怠け者である八ニャン士はニャン太郎以外は稽古が大嫌いなのである。
「チッ、おいおいカミオ、そこで何でいきなり修業になるんだよ。 勝手なことを言ってふざけんじゃねぇ!」
「そうだよん、カミオ。 だってこの2人はん、たまたまカミオに会いに村へ来たって言ってたよねん」
「猫剣士の修業だにゃんて、とっても可愛いニャン蜜ちゃんにはムリムリムリだにゃあ!」
「はぁ、やだやだ。 花魁のように可憐なあたいに猫剣士の修業をさせるだなんて、ホントに嫌な世の中になっちまったもんだよ。 このべらぼうめ!」
「誰が何と言おうと俺は絶対にイヤっす。 皆んな早く帰って飯でも食おうっす。 ああ腹減った!」
「僕さぁ、子猫の時から辛いとか苦しいとか苦手なんだよねぇ。 全部お金で解決しようよぉ」
「あ、僕は本当に家に帰りたいです。 イケメンのあなたたちとは、一生お友達になれません」
しかし、ニャン太郎1人だけ目をキラキラさせて興奮していた。なぜなら、ヒーロー好きなニャン太郎は稽古が大好きだからである。
「でもさぁ、皆んな稽古してもらって強くなると里見村を守れるからいいじゃないかぁ。 皆んなで一緒に修業して、強い猫剣士になろうよ!」
「ホーホッホッホ! ニャン太郎、よく言ったぁ!」
ニャン太郎の言葉を猫上様は褒めるが、八ニャン士は空気の読めないニャン太郎をギロッと鋭い目で睨む。
「チッ、だからお前のそういうキラキラしたところが大嫌いなんだよ!」
すると猫上様は先ほどペロンチョが現れた時の事について、ニャン丸とニャン平に指をさした。
「そういえばニャン丸。 お前は極悪非道で威勢はいいが、さすがにあのペロンチョにはビビっていたのぉ」
「ゲッ、ヤベ! カミオにバレバレでした」
「いつも豪快で1番体の大きいニャン平は、誰よりも後ろに下がって小さく震えていたではないか?」
「マズイっす。 恥ずかしいからそれ以上言わないでほしいっす」
猫上様は長い杖を前に突き出し、八ニャン士に向けて叫んだ。
「またあの大トカゲのペロンチョが村に来たらどうするのじゃ。 里見八ニャン士には、里見村と伏夜さんを守らなくてはいけない使命があることを忘れたのかぁ!」
猫上様から怒鳴られた八ニャン士はシュンとなり、全員下を向いて小さくなる。
「元々お前たちに猫剣士として稽古をしてもらう為に、師匠となるこの2人をわざわざワシが呼んだのじゃ」
「え、そうだったんですか? たまたまこの村に来たんじゃなくて?」
「しかし、こんなに早くペロンチョが村に来るのは予想外だったがな。 2人が早く来てくれてよかった」
それを聞いたニャン太郎はキリッとした顔をして、直立不動で気合いを入れた。
「猫上様、僕たちの為に2人の師匠を呼んで頂きありがとうございます。 僕は強い猫剣士になりたいから、一生懸命稽古を頑張ります!」
「元気のいい君はニャン太郎くんだね。 僕は風ニャン神、これからもよろしくね!」
「私はぁ、キューティーニャン蜜ちゃんだにゃあ♡ 風ニャン神様は、とってもイケボだにゃあ♡」
「へへへ、俺は雷ニャン神様だ。 これからお前らの稽古がメチャクチャ楽しみだぜぇ!」
「雷ニャン神様、あたいはセクシーニャン子だよ~♡ この白くて長い脚がチャームポイントだよ~♡」
風ニャン神と雷ニャン神が笑顔であいさつすると、またニャン子とニャン蜜はデレデレし始めた。
すると、猫上様は意外な言葉を口にする。
「ええ、ちなみにこの2人はワシの弟子であ〜る。 だからお前たちは孫弟子になるのじゃ!」
「へぇ、この師匠が猫上様の弟子って意外ですねぇ。 ひょっとして猫上様は、猫剣士のトレーナーよりも強いんですか?」
ニャン太郎のその言葉でプライドを傷つけられた風ニャン神と雷ニャン神は、全力でそれを否定した。
「え? 猫上のとっつあんが僕たちの師匠? いやいや、僕たちは別にそう思っていませんけど?」
「おいおい、猫上のとっつあん。 弟子であ〜るなんて、いい加減なこと言ってんじゃねぇよ!」
「何じゃと、この恩知らずが。 昔、猫魔術にかかってダークサイドに落ちたお前たちを助けたのは、この猫山上王だということを忘れたのかぁ!」
猫上様の話しを聞いていた八ニャン士は目を点にする。
「ダークサイドに落ちたお前たちって、どういこと? 大体猫魔術って何の話だよ?」
今度は納得いかないニャン斗が、突然大声を出した。
「ちょっと待って下さぁい。 師匠のお2人が僕よりイケメンだなんてぇ、なんかとっても許されないなぁ!」
八ニャン士 コケる。
「おいおいニャン斗。 お前は修業の話じゃなくてん、師匠よりイケメンかどうかが大事かよん」
「だってニャン助くん、僕はイケメンに命をかけているんだよぉ。 これは僕にとって大事なことなんだよぉ」
「ヘッ、ニャン斗の気持ちは俺にも分かるぜ。 猫剣士のトレーナーだか何だか知らねぇが、実は俺もさっきから気に入らねぇんだよ。 なあ、ニャン平!」
「ああ、マルの言う通りっす。 俺もさっきからムカついて、メチャクチャ腹が減ってきたっす!」
ニャン丸とニャン平の言葉を聞いた風ニャン神と雷ニャン神は、上から見下ろしながら鼻で笑う。
「フフフ、君が里見村の暴れ猫って言われているニャン丸くんだね。 後で僕がいっぱい可愛がってやるね」
「チッ、なんだぁ? 風ニャン神、この俺とやんのかコラァ!」
「おい、そこのデカイの。 お前は俺様が後でみっちり稽古してやるから覚悟しろよ!」
「あ? 雷ニャン神、ふざけんなっす! ああ腹減った!」
「ちょっとちょっと、2人ともいきなりケンカはやめなよ。 僕はケンカが大嫌いなんだよ」
「そうだよ〜、小声で小柄のニャン吉ちゃんの言う通りだよ~。 ニャン丸とニャン平、お前さんたちがあたいの師匠たちに刃向かったら許さないよ〜!」
「ちょっとネコババァ! どさくさにまぎれて何が『あたいの師匠たち』だにゃ。 勝手に横取りするにゃ!」
「だまれ、この小童! 久々にあたいとやるか〜い?」
とうとうケンカをし始めてしまった八ニャン士に、イライラしていた猫上様は長い杖をバン!と地面について怒鳴った。
「うるさ~い、このバカどもが~!」
八ニャン士 またシュンとなる。
全くやる気のない八ニャン士に呆れた猫上様は、これからの修業について詳しく説明する。
「とにかくお前たちには強い猫剣士になってもらう為に、この師匠から1週間修業してもらうぞ。 分かったかっ!」
「ゲッ、1週間もぉ? カミオ、稽古でそれはいくらなんでも長すぎるぜぇ」
「バカモン! 本来猫剣士になる為には、最低10年は修業しなくてはいかんのじゃぞ。 しかし今は緊急じゃから、今回だけ特別に修業するのじゃ」
「猫剣士になる為に最低10年ってん、俺の忍術は3日で覚えられるよん」
「でも1週間も修業で家を留守にしたら、皆んなのご主人様が心配するんじゃないですか?」
「ニャン太郎、皆んなの家の主にはワシから説明しておく。 とにかく今はペロンチョが村に来るまで時がない。 だからとりあえず1週間猛特訓をするのじゃあ!」
「へ~い!」
猫上様は八ニャン士を2つのグループに分け、まずは風ニャン神グループのメンバーの名前を長い杖を指しながら言った。
「風ニャン神グループは、ニャン太郎とニャン丸とニャン蜜とニャン吉じゃ! 風ニャン神のグループでは、特にスピードの強化を特訓する」
「はい、分かりました。 何だか分かんないけど、スピードを上げるなんて僕は凄くワクワクします!」
「ケッ、風ニャン神に教わらなくたって、俺は元々スピードは早いんだよ。 やりたくねぇなぁ」
「イケメンの風ニャン神様ぁ、私は可愛い女の子だからぁ、にゃるべく優しくして下さいにゃあ♡」
「あのぉ、スピード強化って僕は物凄く歩くが遅いですけど大丈夫? でも家は早く帰りたいです」
そして猫上様は雷ニャン神グループのメンバーの名前を、また長い杖で指しながら言った。
「続いて雷ニャン神グループは、ニャン平とニャン助とニャン斗とニャン子じゃ! 雷ニャン神のグループでは、特にパワーの強化を特訓する」
「ガッハッハ、パワーならこの俺様に任せとけっす! まぁ、元々パワーがあるっすけどな! ああ腹減った!」
「忍び猫の俺がパワーアップって何なのん? 煙玉や水トンの術の威力のパワー強化ん?」
「これ以上僕にイケメンのパワーを強化されるとさぁ、困っちゃうんだよなぁ。 またファンクラブが増えるなぁ!」
するとニャン子は長いキセルを持ち、得意の花魁のポーズしながら猫上様に叫んだ。
「カミオ、ちょいと待ちなっ! 華麗でか弱いこのあたいが、何でパワー強化なんかす〜る〜の〜さ〜!」
なぜかド派手なパフォーマンスをしているニャン子に、八ニャン士は細い目で見つめる。
「か弱いだなんて、うそつけ。 短気ですぐ飛び蹴りするニャン子が、これ以上パワー強化してどうすんだよ」
猫上様はまたいつもの軽い口調で、そそくさと神社の中へ入って行った。
「詳しい修業の話は、後で風ニャン神と雷ニャン神に聞いとくれ。 じゃあ皆んながんばれよ、バイビ~!」
「カミオ、かるっ!」
「まったく相変わらずだなぁ、猫上のとっつぁん!」
さあ、いよいよこれから風ニャン神と雷ニャン神による八ニャン士の猫剣士修業が始まります!
怠け者の八ニャン士は、猫剣士トレーナーの猛特訓に耐え切ることができるのでしょうか?
ちなみに猫上様が言っていた猫魔術とかダークサイドに落ちるというのは、また別のお話で・・・。
次回「風の巻」をお送りします。
風ニャン神グループのスピード強化の修業は、鬼ごっこ?
お楽しみニャン!




