第2話 師の巻
里見神社にいる猫上様から緊急集合をかけられた八ニャン士。
猫上様が八ニャン士を集めた理由とは、大トカゲの妖怪ペロンチョが村にやって来て、猫の世界で大事な猫水晶を奪おうとしているからだった。
はたしてこのペロンチョとは、一体何者なのか?
猫上様からペロンチョの話を聞いた八ニャン士は、あまりにも話が大きすぎて口を開けて絶句していた。静まり返っている八ニャン士の中から、始めにニャン太郎から話しを切り出した。
「ところで猫上様、その猫水晶って一体何ですか?」
「猫水晶とは大猫神様の魂が入っていて、猫の世界では大切な水晶玉のことなのじゃ」
「大猫神様の魂?」
「その猫水晶を食べられたら、ペロンチョは物凄いパワーを持ってしまうのじゃ!」
「ええええ!」
それを聞いた八ニャン士はどうしていいのか分からず、その場でドタバタと騒ぎ始める。
「ゲッ、おいおいえらいことじゃねぇか。 一体俺たちはどうしたらいいんだよ!」
「おやおや、それは穏やかな話じゃないみたいだね〜。 さすがにセクシーなこのあたいもちょいと震えるよ〜」
「ニャン蜜ちゃん、君は八ニャン士の軍師なんだからん、何かいい作戦はないんかん?」
「無茶を言うにゃ、ニャン助! まだにゃにも情報がにゃいし、急にそんにゃこと言われたって分からにゃいよ」
「こりゃあマズイっすね。 俺は話がまったくワケ分からなすぎて腹が減ったっす」
「あ、僕はすごく怖くてオシッコがチビりそうです。 早く家に帰りたいです」
「カミオさぁん。 その大トカゲのペロンチョさんってさぁ、お金では解決できないのかぁい?」
「あのなぁ、ニャン斗。 恐ろしい大トカゲの妖怪に、お金が通用するわけなかろ?」
話がまとまらないまましばらく猫上様と八ニャン士が騒いでいると、遠く里見山のどこからか不気味で低い笑い声が響いて来た。
「ヒーッヒヒヒ!」
その不気味な声に耳を傾けた猫上様は、里見山に向かって大声で叫んだ。
「その笑い声は、大トカゲの妖怪ペロンチョじゃな!」
すると猫上様と八ニャン士の前に白い煙りが立ち上がり姿を現したのは、あの大トカゲの妖怪ペロンチョだった。体長5メートルくらいある大きなペロンチョは、黒光りしているシッポと長くて真っ赤な舌を振り回していた。
その不気味なペロンチョを見た八ニャン士は、あまりにも怖すぎて1歩も動けない。
「ギャ~! 大トカゲの妖怪だぁ!」
「猫上ぃ、約束通り里見村まで来てやったぜぇ。 早く俺様に猫水晶を渡すんだ。 ヒヒヒヒ!」
「バカモノ! 猫世界で一番大事な猫水晶を、お前みたいな妖怪に渡すわけないじゃろ?」
「そうか、ならばお前たち全員を1人残らず倒すまでよ。 覚悟するんだな、ヒヒヒヒ!」
「そんなことさせるかぁ。 さぁ猫剣士の里見八ニャン士よ、今すぐ八ニャン剣を持って戦うのじゃ!」
猫上様は八ニャン士に向かって檄を飛ばす。
しかし体が大きいペロンチョを目の前にして、八ニャン士は全員ブルブルと震えていた。
「ムリムリムリムリムリムリ・・・」
「何だこのガキどもは? これが新しい猫剣士か?」
「猫剣士の里見八ニャン士よ! この里見村を守る為に大トカゲのペロンチョと戦うのじゃあ!」
猫上様からまた檄を飛ばされたニャン太郎は、膝をガクガク震えながら八ニャン剣をシュンと構えた。
「よよよじぃ、みみみんなぁ、いいいぐよぉ。 ぜぜぜいぎははは、ぼぼぼぐだぢだだだ」
「何を言ってるんだ、このチビ猫は? こうしてくれるわっ!」
ペロンチョはそう叫びながら黒光りしている長いシッポをブ〜ンと振り回すと、剣を持って震えているニャン太郎をはじき飛ばした。
「あれぇ! 僕の力じゃ無理ですぅ!」
すると、今度はニャン助が震えながら前に出る。
「おおおまえなんかん、こここうしてやるん!」
ニャン助お得意の目がしみる煙玉を何個も投げたが、妖怪のペロンチョには全く効かない。
「ヒヒヒヒ、さっきから何をやっているだお前は?」
今度はペロンチョが真っ赤な長い舌をシュっとナメまわすと、震えているニャン助もはじき飛ばした。
「ひえ〜ん、助けて〜ん!」
飛ばされたニャン太郎とニャン助を見た八ニャン士はますます震えて、その場から逃げようとしていた。
「ムリムリムリムリムリムリ・・・」
「ヒヒヒヒ、この俺から逃げても無駄だぁ。 役に立たない猫剣士のお前たちもこうしてくれるわ!」
ペロンチョは長いシッポと長い舌をブンブンと振り回すと、残った八ニャン士全員を吹き飛ばしていった。
「ギャ~!」
「ヒーッヒヒヒ! 何だか新しい猫剣士は弱いのぉ」
全員やられた八ニャン士を見て心配する猫上様。
「おおい八ニャン士ぃ、大丈夫かぁ?」
「おい猫上、さっさと猫水晶を俺によこせ!」
ペロンチョが猫上様に手を出したその時だった。
里見山の向こう側から風が吹いて来ると、その風は渦を巻くように回転し、その風の中から何やらイケメンな声が聞こえてきた。
「ねぇペロンチョ、調子に乗りすぎじゃない?」
風の回転が止まり姿が現れたのは、華麗に武装した猫剣士の『風ニャン神』だった。
「やぁ、猫上のとっつあん! 元気だったかい?」
「おお、猫剣士の風ニャン神ではないかっ! ワシたちを助けにここへ来てくれたのか!」
「フフフ。 別に猫上のとっつあんを助けに来たわけじゃないけど、久しぶりに里見村に来たら生意気なペロンチョが見えたんでね」
ペロンチョに弾き飛ばされた八ニャン士は、急に現れた風ニャン神を見て目が点になる。
「あのぉ、どちら様で?」
さっきまで暴れていたペロンチョは、風ニャン神の姿を見ると少しうろえる。
すると風ニャン神は自分の腰から華麗に装飾された『風ニャン剣』をゆっくりと抜き、ペロンチョの方へ向けた。
「フフフ、ペロンチョ。 僕の風ニャン剣で、またいつものように遊んでやろうかな?」
「チッ、風ニャン神め。 もう少し楽しもうと思ったのに、面倒臭いヤツが出て来やがった!」
「この前みたいに僕にやられたくなかったら、さっさとこの村から消えるんだね」
「風ニャン神が出て来たらマズイ。 猫上、また近いうちに猫水晶を取りに来るからな。 ヒヒヒヒ!」
そう言って笑いながら、ペロンチョはまた白い煙りとなって消えていった。
そして風ニャン神は剣を納め、倒れている八ニャン士に向かって爽やかに笑う。
「やぁ君たち、大丈夫だったかい? 八ニャン士の可愛い女猫ちゃんはケガなどしなかったかな?」
突然現れたイケメンの風ニャン神に、ニャン子とニャン蜜の目がすっかりハートになり態度が変わる。
「あたいは大丈夫だよ~♡ もうイケメンの兄さんに言われちゃ、このあたいも照れちゃうじゃないかぁ〜♡」
「私はぁ、ちょっと痛かったにゃん♡ カッコいいお兄様を見たらぁ、すぐ治ったニャンニャンニャン♡」
八ニャン士と猫上様 コケる。
「まぁ、とりあえず皆んなが無事で本当に良かったね」
「は〜い♡ ありがとうございまぁす♡」
風ニャン神の笑い顔から綺麗な歯が光ると、ニャン子とニャン蜜はデレデレした顔になる。それをしばらく見ていた八ニャン士は目が点になっていた。
「なんだか、さっきからニャン子ちゃんとニャン蜜ちゃんがおかしいのは気のせいか?」
すると、今度は里見山の向こう側が激しい雷でピカピカッと光った。そして眩しい雷の光りの中から、またイケメンな声が聞こえてきた。
「よう、猫上のとっつあん。 歳なのにしぶとく生きて、まだまだくたばってないみたいだなぁ!」
激しい雷の中から現れたのは、華麗に武装した猫剣士『雷ニャン神』だった。
「おお今度は雷ニャン神ではないかっ! お前まで里見村に来てくれたのか!」
「ヘッ、冗談じゃねぇ! たまには猫上のとっつあんの話し相手でもしてやらないとなっ!」
突然現れたイケメンの雷ニャン神に、またニャン子とニャン蜜の目がハートになり態度が変わった。
「こりゃまたイケメンの兄さんが来たじゃないか〜♡ これはセクシーなあたいのハートも穏やかじゃないよ〜♡」
「キャ~♡ キューティーニャン蜜ちゃんはぁ、お2人のイケボがたまらにゃいニャンニャンニャ〜ン♡」
八ニャン士と猫上様 またコケる。
「よぉ、お前たちが大猫神様が作った新しい八ニャン士か! 可愛い女猫ちゃんもよろしくなっ!」
「は〜い♡ よろしくお願いしま〜す♡」
雷ニャン神がパチッとウィンクすると、ニャン子とニャン蜜は失神して倒れた。その2人を見ていた八ニャン士は、もううんざりした顔をしながら頭を抱えていた。
「ダメだこりゃ。 この2人使えない」
八ニャン士の前で仁王立ちしている風ニャン神と雷ニャン神を見て、ニャン太郎は猫上様に小声で囁く。
「あのぉ猫上様? そちらのイケメンのイケボで強そうな方々は、どこのどちら様でしょうか?」
「ホーッホッホッホ! この2人は風ニャン神と雷ニャン神と言ってな、全国にいる猫剣士に修業させる為の師匠たちじゃよ。 まぁなんと言うか、いわゆる猫剣士の育成トレーナーってヤツじゃなっ!」
「ええ? 猫剣士の育成トレーナー?」
八ニャン士は大声で叫ぶと、仁王立ちしていた風ニャン神と雷ニャン神は腕を組みながら笑っていた。
「フフフ、これからが楽しみだね!」
ペロンチョにやられた八ニャン士の前に、突然イケメンの風ニャン神と雷ニャン神が現れた。
はたしてこの猫剣士育成トレーナーの風ニャン神と雷ニャン神は、八ニャン士にどんな修業をさせるのか?
それにしてもニャン子ちゃんとニャン蜜ちゃんは、もうすっかりイケメンの2人にメロメロですね。
次回「業の巻」をお送りします。
トレーナーの風ニャン神と雷ニャン神に対して、怠け者の八ニャン士が大ブーイング!
お楽しみニャン!




