最終話 誕の巻
八ニャン士の活躍でダム建設計画が中止となり、里見村には再び平和な日々が訪れた。
里見村を守ることができた八ニャン士は、里見山にある里見神社に集まっていた。
また八ニャン士を集めたのは、神社に住んでいるあの白装束の猫上様だった。
八ニャン士がダム建設計画を中止させたことで、里見神社にいる猫上様はとても機嫌が良かった。長い杖を持って神社の台に立っている猫上様は、里見村を守った八ニャン士を満足気に見下ろしながら高笑いしている。
「ホーッホッホッホ! 里見八ニャン士よ、ダム建設の件ではよう闘ってくれた。 アッパレアッパレ!」
猫上様に褒められたニャン太郎は、目をキラキラとさせながら爽やかに笑う。
「はい、猫上様! 八ニャン士の皆んなのおかげで、この美しい里見村を守ることができましたぁ。 僕はすごく感動して泣いちゃいましたぁ」
「ケッ、ニャン太郎のやつ、また1人でキラキラしてやがるぜ。 俺はそういうやつが1番嫌いなんだよ」
「でも伏夜さんの足のケガも良くなってよかったなん。 俺はそれが心配だったなん」
「ニャン助、よく言うっす。 戦いの勝利のことを伏夜さんへ報告しに行ったら、早速ニャン斗とニャン助は伏夜さんをナンパしてたっすから。 ああ腹減った!」
「ヤダなぁ、ニャン平くん。 優しいイケメンニャン斗さんとニャン助くんはぁ、可愛い伏夜さんのケガを心配しただけさぁ」
「はぁ、ヤダヤダ。 まったく本当にこのドスケベどもは懲りないんだね〜。 このべらぼうめ!」
「本当にスケベは嫌だにゃん。 皆んなの活躍でせっかく勝っていい気分にゃのに、情けにゃいにゃあ」
「あ、僕も2人は情けないと思います。 だから早く家に帰りたいです」
ニャン助とニャン斗 小さくなる。
そんな会話の中、ケンカ好きなニャン丸がドヤ顔しながら工事現場の戦いについて自慢し始める。
「ヘッ、あの戦いでは俺が1番敵を倒したな! まぁ、俺様が本気で暴れたらこんなもんよ」
「ニャン丸、バカ言ってんじゃねぇよん。 俺の煙玉の方が1番倒したよん!」
「いいや、この怪力猫の俺様っす。 俺のパワーで全員ひねり潰してやったっす。 ガッハッハ!」
「ちょいとお前さんたち! あたいだってねぇ、作業員のオッサンたちを飛び蹴りしまくったんだよ〜」
「もう皆んなぁ、もうそんなこといいじゃないかぁ。 これからケンカはお金で解決しようよぉ」
「あ、僕もケンカが嫌いだよ。 早く家に帰りたい」
そんな話をしている中、ふと思い出したニャン太郎は八ニャン剣が光ったことついて猫上様に聞いた。
「ところで猫上様、八ニャン剣の剣先を重ねると突然光ってスピードとパワーが出ました。 でも光りが点滅したらパワーが落ちましたけど、あの光は何ですか?」
「あれはな、八ニャン剣は光り出すと82倍のスピードとパワーが出るのじゃ。 しかしその力は8分2秒で光りが消え、また8分2秒待てばエネルギーがチャージされて剣が光り出すのじゃ」
「そうなんですね! なんかヒーローみたいに八ニャン剣が光って、とてもカッコ良かったです」
「ヘッ、なんだかややこしい剣だぜ。 だったら最初から光る剣に作ればいいじゃねえか」
「ニャン丸、最初から八ニャン士が強かったらすぐ物語が終わってしまうじゃろ? 八ニャン剣にもいろいろややこしい条件があった方が、この物語としては盛り上がるじゃろ。 演出が大事なんじゃ」
八ニャン士 目が点になる。
「カミオ、またそれ? だから何の物語が盛り上がるんだよ?」
猫上様はすっかり機嫌が良くなり、いよいよ八ニャン士の誕生秘話について語り始める。
「ワシの知らぬ間に、やっとお前たち8人の結束が固まったようじゃな! 良きかな良きかな」
「チッ、結束が固まったかどうかは知らんけど、カミオは何で俺たちをまたここに集めたんだ?」
「オホン! 8人がようやく結束できたところで、今こそ八ニャン士ができた本当の理由を言おうではないか」
「本当の理由?」
八ニャン士 首をかしげる。
「猫上様、それは前にもここで聞きましたよ。 確か偉い猫様が、里見村を守る為に僕たち8人を選んだとか?」
「もっと詳しく言うと選ばれたのではなく、お前たち8人は守護神『大猫神様』に作られた里見八ニャン士なのじゃよ!」
それを聞いた八ニャン士は一斉に声を出す。
「ええ? 守護神の大猫神様に作られた里見八ニャン士?」
「ホーホッホッホ! 大神猫様は日本全国の猫をお守りしている、偉大なる猫の守護神なのじゃ」
「ねぇ、カミオ。 その守護神の大神猫様が、どうして8人の私たちを作ったにゃ?」
「だからここから、お前たちの誕生秘話を話するのじゃ。 皆んな、座りなさい」
猫上様は神社の床に座ると八ニャン士も地面に座った。それから猫上様は白くて長いヒゲを触りながらゆっくりと語り始める。
ちなみに猫上様の長いヒゲは月に1回メンテナンスしているが、最近メンテナンスをしていないので本人はやや気にしている。
「そもそもこの里見村が猫の聖地になったのは、猫の守護神である大神猫様の誕生の地だからなのじゃ。 だからこの村には猫がとても多いのじゃよ」
「里見村って猫の聖地なんすか?」
「遥か昔から全国にいる猫が里見村へやって来て住み着くようになったのじゃが、時には怪しい悪霊もこの村にやって来るようになったのじゃ」
「ケッ、それじゃあ俺たち八ニャン士じゃなくて、その怪しい悪霊とやらは守護神の大神猫様がやっつければいいじゃねえか」
「しかし守護神の大神猫様は、悪霊から猫を守ることは出来ても戦うことが出来ん。 だからこの村に悪霊と戦える新しい猫剣士が欲しかったのじゃ」
「ほうほう、それでそれで?」
八ニャン士 話しに少し食いつく。
「ある時、大神猫様が白い猫に姿を変えて里見山を探索していると、山に仕掛けてある罠に足がハマってしまったのじゃ。 大神猫様は白い猫の姿のままでは力が弱く、足から罠が取れないまま何日も飲まず食わずで力尽きてしまった」
「おやおや、それはかわいそうなことだね〜」
「するとその時、1人の女の子がそこへやって来て白い猫の足から罠を外して大猫神様の命を助けてくれたそうなんじゃ」
「フムフム、そしてそして?」
八ニャン士 話しにかなり食いつく。
「それからその女の子は白い猫の足を手当してあげ、持っていた自分のお菓子を白い猫に食べさせて家に帰ったそうじゃ」
「その女の子はさぁ、とっても優しい娘だねぇ。 僕は会いたいなぁ」
「その時、女の子が家に帰る途中で小さな布袋を山に落とした。 白い猫が布袋を開けると、その中には8個の綺麗なガラスの玉が入っていたそうなんじゃ」
「8個の綺麗なガラス玉にゃ?」
「白い猫は大猫神様に姿を変え、そのガラスの玉に念を入れて『仁義八行の玉』と『8人の子猫』を作ったのじゃ」
「その8個の綺麗なガラスの玉がん、『仁義八行の玉』と『8人の子猫』を作ったのん?」
「それからワシは大神猫様の命令で8人の子猫を預かり、お前たちは里見村の人々に大事に育ててもらったとワケなんじゃ」
八ニャン士は黙ったまま、首についている玉をお互い見つめ合う。
「最初はダサくてオシャレじゃにゃい玉だと思っていたけど、そういう意味があったんだにゃあ」
「つまりカミオさんさぁ、僕たちは大神猫様のかわりに悪霊と戦って里見村を守れってことなのかぁい?」
「あ、そんなの、ちょっと怖いです。 僕はちょっとちびっちゃいます」
「いや、村を守るだけじゃない。 その命の恩人である女の子を守る役目としても八ニャン士を作ったのじゃ」
「女の子を守る役目? それは誰ですか?」
誕生秘話を聞いていたニャン太郎は緊張のあまり思わず息を飲み、恐る恐る猫上様に聞く。
「猫上様、その女の子って・・・まさか?」
「そうじゃ! ニャン太郎と一緒に住んでいる村長の娘である伏夜さんじゃあ!」
「ぎょえ~!」
猫上様は立ち上がり、長い杖でビシッと八ニャン士にさした。
「つまりお前たち里見八ニャン士は、里見村と伏夜さんを守る為の猫剣士なのじゃあ!」
すると神社の裏に隠れて話しを聞いていた伏夜が、いきなり八ニャン士の前に現れる。
「へへへ。 八ニャン士さん、こんにちは。 なんだか凄い話しになっちゃったみたいだね!」
猫上様から呼ばれて来た伏夜は、八ニャン士を驚かそうと神社の裏に隠れていた。
「わあああ! 伏夜様、いつの間に」
「まさか子供の時に助けたあの白い猫が、猫の守護神の大猫神様だったとはねぇ。 私はまだ小さかったから、猫上様から話しを聞くまで全く覚えてなかったなぁ」
「大神猫様はとても感謝されておる。 伏夜さんは大猫神様を救ってくれた命の恩人なのじゃ」
「いやいや。 でもその大猫神様は、よくこんなにバラバラな性格の猫たちを作りましたよねぇ?」
「ホーッホッホ! 伏夜さん、猫だって人間だって同じ性格なんぞ誰もおらんて。 皆んなそれぞれでバラバラなのじゃ。
「ハハハ、確かにそうですね。 ということで、これからもよろしくね。 八・ニャ・ン・士さん!」
八ニャン士は伏夜から笑顔で挨拶されて、モジモジと照れ笑いしている。
「はいはいん、伏夜さま〜ん。 俺は忍び猫のニャン助、よろしくお願いしますね~ん!」
「ニャン助くん、待ってよぉ。 可愛い伏夜様のことは、このイケメン猫のニャン斗さんに任せなよぉ。 伏夜様、よろしくぅ!」
「あぁあ、本当にこいつらバカだにゃあ。 伏夜様、私は八ニャン士の軍師であるキューティーニャン蜜ちゃんだにゃん。 よろしくお願いしますにゃん!」
「まったく〜スケベは死んでも治らないね〜。 伏夜様、セクシーニャン子もよろしくだよ~」
「ガッハッハ、伏夜様を祝ってなんか食おうっす! 俺は怪力猫のニャン平様っす! ああ腹減った!」
「ケッ、俺は暴れ猫のニャン丸だ。 伏夜様が出てきてワクワクしたから、何だか暴れたくなったぜぇ!」
「あ、伏夜様、僕はニャン吉です。 これからもよろしくお願いします。 だから早く家に帰りたいです」
八ニャン士が伏夜への挨拶を終えると、ニャン太郎は1人興奮しながら神社の上に立つ。
「よぉし、皆んなぁ! そうと分かれば、僕たち八ニャン士が伏夜様と里見村を守るんだぁ!」
またいつものように目がキラキラしているニャン太郎を見て、すっかり呆れている伏夜と八ニャン士と猫上様。
「あぁあ、またアレが始まったよ。 いつもニャン太郎がヒーローごっこしてるみたいで、皆んなゴメンねぇ」
「チッ、だから俺はキラキラしているヤツは嫌いなんだよ。 さぁ皆んな、ニャン太郎を置いて帰ろ帰ろ」
「ワシも神社に帰る。 八ニャン士よ、後のことはよろしく頼むぞ。 バイビ~!」
ニャン太郎は神社の上でゆっくりと八ニャン剣を掲げ、そして前に突き出しながら叫んだ。
「我ら里見八ニャン士! 正義は僕たちだぁ!」
これが八ニャン士の誕生秘話でした!
里見村と伏夜さんを守る為の今度の活躍に期待しましょう。
伏夜と八ニャン士の物語は、これからもまだまだ続きます。
戦え! 里見八ニャン士!
また次回まで、お楽しみニャン!
里見八ニャン伝 猫剣士立志編 終わり




