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里見八ニャン伝  作者: ワタベミキヤ
猫剣士立志編
20/43

第20話 光の巻

大和田村の大俵村長と建設会社の琴梅社長による理不尽なダム建設計画で、湖の底に沈んでしまう里見村。

そのダム計画を阻止する為にニャン太郎は八ニャン士に助けを求めたが、誰もその話を聞いてくれなかった。


建設反対デモで伏夜がケガをしたことに激怒したニャン太郎は、建設現場の事務所へ1人立ち向かって行った。


ニャン太郎が工事現場にあるプレハブの事務所にたどり着くと、その中で作業員の男たちが酒を飲みながら盛り上がっていた。それを見ていたニャン太郎は思いっきり石を投げると、事務所の窓ガラスが激しく割れる。


「誰だ、こんなことするやつは?」


窓ガラスが割れて大勢の作業員の男たちが事務所から外へ出ると、そこに立っていたのはハチマキとタスキ掛けをしているニャン太郎だった。ニャン太郎は怒りで体をブルブルと震えさせ、ダム建設の作業員の男たちを睨みつけていた。

すると大勢の男たちの後ろから、額に傷があり龍の入れ墨が彫ってある黒竜文太がゆっくりと前に出て来た。


「おい小僧、お前またやられに来たのか?」

「やい、黒竜! よくも僕の大切な伏夜様にケガをさせてくれたな。 ここにいるお前ら全員やっつけて、必ずこのダム建設計画を中止させてやる」

「中止なんて出来るわけねぇだろ。 お前1人だけがここへ来て、一体何が出来るんだよ。 ハハハハ!」

「うるさい、お前たちを絶対に許さない。 僕が1人残らずやっつけてやるから覚悟しろっ!」

「早く家に帰って猫飯(ねこまんま)でも食べてろ、ハハハハ!」


ニャン太郎が作業員の男たちから笑われていたその時、工事現場の周りのライトが一瞬暗くなった。


「なんだ? なんだ?」


すると遠くの方でスポットライトが当たった先には、あの7人の八ニャン士が横一列に並んで立っていた。


「シッシッシ、忍び猫ニャン助の『忍法ライトの術』だよん! 待たせたなん、ニャン太郎」

「ヘッ、いよいよ俺の大好きなケンカが始まるぜぇ。 お前ら全員覚悟しろよぉ!」

「ガッハッハ! お前ら1人残らずボコボコにして、後でご飯をお腹一杯食べてやるっす。 ああ腹減った!」

「太郎ちゃんをバカにしたお前さんたちは、とんでもないヤツらだね〜。 あたいらをナメんじゃないよ〜!」

「あぁあ、揉め事は何でもお金で解決すればよかったのにぃ。 本当に可哀想な君たちだねぇ」

「あ、僕はケンカが嫌いだけど、君たちの方がもっと嫌いだよ。 だから早く終わって家に帰りたいです」


ニャン太郎は工事現場に集まってくれた八ニャン士を見て、目をウルウルさせて感動していた。


「八ニャン士の皆んな、ここに来てくれたんだね。 でもどうして?」

「ニャン太郎、こいつらが全部喋ったにゃん」


体の大きいニャン平が掴んでいたのは、縄にくくられた大和田村の大俵村長と建設会社の琴梅社長だった。その2人を見た作業員の男たちは驚き慌てて叫んだ。


「琴梅社長ぉ! 大俵村長ぉ!」

「フフフ、これも全部私が考えた作戦だにゃん!」


ダム建設計画の件で八ニャン士が集まったあの日の夜、軍師のニャン蜜はニャン太郎が神社に来る前に八ニャン士に()()()()を告げていた。


「ニャン太郎と神社で会う前に、猫上様が雇っている『忍び猫』を使ってダム建設についていろいろと調べたにゃん。 そうしたら、こいつら2人が国から賄賂を貰っていたことが分かったにゃん!」


猫上様が雇っている忍び猫とは、訓練された本物の猫忍者のことである。

ちなみにニャン助が言っている忍び猫とは、あくまで自称である。


ニャン蜜の説明を聞いてニャン太郎は驚く。


「ええ! この2人が国から賄賂を貰ってたの?」

「だから賄賂の事をメディアに売る為に、どうしても2人からその証拠が欲しかったにゃん」

「でもニャン蜜ちゃん、その証拠ってどうやってやったの?」


ニャン太郎が問いかけると、ニャン蜜とニャン子とニャン斗がニヤリと笑う。


「まず私とニャン子ちゃんとニャン斗で、大和田村の大俵村長を料亭で接待して近づいたんだにゃん。 このスケベ大俵村長は、私たちの存在を全く気づいていにゃかったにゃん」


ニャン蜜の説明を聞いて大俵村長は悔しがる。


「くそぉ、あの料亭の接待は全部仕組まれていたことなのかぁ。 通りで怪しいと思ったんだ」

「私たちのお色気でいい気分ににゃった大狸のヒフミンは、里見村を国に売ったことや賄賂のことにゃど、まぁペラペラといっぱい喋ったにゃん」


そこでニャン子がボイスレコーダーを高々と上げる。


「これがさ〜、料亭の時の話しを録音したボイスレコーダーだよ〜。 このエロ狸のヒフミン村長は、あたいの忍法お色気の術にとってもメロメロだったんだよ〜」

「ああ、ニャン子ちゃ〜ん! 僕だってヒフミンを口説いて、かなり頑張ったじゃないかぁ」


実はニャン斗は女装の趣味がある。


「そうなんだよぉ! 女装したイケメンの僕の美しさに、ヒフミン村長は僕にデレデレだったんだよぉ」

「確かに酔っていたエロ狸のヒフミン村長は、最後までニャン斗を口説いていたね〜。 は〜危ない危ない」


そしてニャン蜜はある帳簿を上に掲げる。


「フフフ。 そして今度は琴梅社長の建設会社の部屋から、賄賂の証拠である帳簿を盗んだにゃん」

「ニャン蜜ちゃん、賄賂の証拠の帳簿なんてどうやって盗んだの? 確かあの建設会社は東野川の中洲なかすに建っていて、外からはなかなか入りにくい場所じゃない?」


すると今度は、ニャン助とニャン丸とニャン平とニャン吉がニヤリと笑う。


「ニャン太郎、東野川は俺の忍法水トンの術で忍び込んだよん。 俺の忍術はスゴいんだぞん!」

「ガッハッハ! このヤバいヤバい帳簿をタコ梅社長に見せたら、賄賂のこと全部喋りやがったっす!」

「ケッ、俺は泳げないから、川は浮き袋でぷかぷかと行ったけどな。 その後はクソ琴梅社長を、立てないくらいボコボコにしてやったぜぇ」

「あっ僕はね、建設会社のドアの鍵と金庫をチョコチョコっと開けちゃいました。 僕は知恵の輪大会の優勝者だからね、あんな安物のドアの鍵や金庫を開けることなんてチョチョイのチョイだよ」


ニャン吉の意外な言葉を聞いた八ニャン士は、全員目が点になる。


「何気に小声のニャン吉先生が一番恐ろしい」


八ニャン士の女軍師ニャン蜜は、この作戦の内容を締めくくった。


「そしていろいろにゃ賄賂の証拠を集める為に、このダム建設の工事現場で反対デモをするように考えて、八ニャン士の皆んにゃでワザとニャン太郎に冷たくしたにゃん」

「あの神社で僕に冷たかったのは、伏夜様と村の人たちに反対デモをさせたかったの?」

「ピンポーン! 反対デモを毎日派手にやってくれれば、建設業者の男たちがデモの方に目を向けるからにゃ。 その反対デモはリアルにやって欲しかったから、ニャン太郎にだけはこの作戦を黙っていたワケにゃん」


それを聞いて悔しそうにした黒竜文太は、被っていたヘルメットを思いっきり地面に叩きつける。


「ちっくしょう! あの子娘の作戦に操られて、俺たちはインチキデモに気を取られていたのかぁ!」

「フフフ、私の策を見くびるにゃよ!」


ニャン太郎は地面に膝をついて、八ニャン士が裏でいろいろとやってくれていたことに感動して泣いていた。


「うわ〜ん、皆んなありがとう! 本当はね、僕ね、たった1人でここに来て怖くて寂しかったんだよぉ」

「ニャン太郎ゴメンにゃ。 でもニャン太郎のおかげで作戦成功だにゃん!」


その時、縄でくくられている大俵村長と琴梅社長が作業員たちに叫ぶ。


「おい、お前ら一体何やっているんだ! こんな変な猫たちを早くやっつけて、ボイスレコーダーを取り返せ! 私の話を聞かれたらマズいんだよ!」

「こっちも早く帳簿を取り返せ。 お前たちを全員クビにするぞぉ! こんな猫どもをやっちまえ!」


大俵村長と琴梅社長の叫び声を聞いた作業員たちは、いろいろな武器を持ち始めた。


「おお! この変な猫どもめ、全員ここから生きて帰れると思うなよ。 覚悟しろっ!」


その時、ニャン太郎は前に猫上様が話していたあの言葉を思い出す。


「そうだ、この時だからこそ八ニャン剣の剣先を合わせよう。 ニャン太郎ジャ〜ンプ!」


ニャン太郎の靴からバネが飛び出し、クルクル回りながら八ニャン士の所まで飛んだ。

ちなみにこの『ニャン太郎ジャンプ』は、前に失敗した時からニャン太郎は何回も練習していた。


そして八ニャン士は円陣を組んでそれぞれの剣を前に出し剣先を合わせると、8本の八ニャン剣が8色に光り出した。

その光り輝く八ニャン剣を見ながら、八ニャン士は皆んな興奮していた。


「僕は赤色だ。 やったぁ、ヒーローの赤だぁ!」

「あ、僕はオレンジ色。 まぁ、どっちでもいいや」

「あたいは紫色だよ~。 なんか紫だなんて、あたいと同じセクシーな色じゃないか〜!」

「私はピンク色だにゃん。 やっぱりキューティーニャン蜜ちゃんは可愛いピンクだにゃんにゃん!」

「俺は銀色だなん。 銀色なんてん、忍者の俺にはピッタリの色だなん!」

「ヘッ、俺様は青色だぜぇ。 クールで超カッコよくて、メチャクチャ暴れたくなったぜぇ!」

「僕は緑色だよぉ。 やっぱりイケメンの僕にはさぁ、きれいな緑がお似合いの色だよねぇ」

「やっぱり俺は黄色っす。 だいたい大食いキャラって、黄色に決まっているっす。 ああ腹減った!」


説明しよう。

この八ニャン剣が光を出すと、スピードとパワーがすべて82倍になるのだ。

なんせ剣の名前が『ハチニャン(82)』だけに。


それぞれの剣が光った後、八ニャン士はニャン太郎の顔を見ながらニヤリと笑う。


「ニャン太郎、アレだよん。 アレを言えよん!」

「え? ニャン助、何を?」

「太郎ちゃ〜ん、今こそあんたのいつものセリフに決まってるじゃないか~。 頼んだよ〜」

「ヘッ、ニャン太郎、今日の主役はお前だよ!」

「皆んな、ありがとう!」


八ニャン士は光る八ニャン剣を上に掲げると、首についている仁義八行の玉が光り輝き出した。

そしてニャン太郎は涙を拭き、赤く光った八ニャン剣を前に突き出しながら叫んだ。


「仁義礼智忠信考悌

    里見村を守る我ら里見八ニャン士! 

             正義は僕たちだぁ!」


「フフフ。 ニャン太郎、今日は決まったにゃん!」


そしていよいよ八ニャン士と建設作業員による工事現場の戦いが始まった。



まず怪力猫のニャン平が工事現場の扉を破壊した。


「うぉりやぁ! よし、皆んな中に入るっす!」

「あの変な猫どもをやっちまぇ!」

「うぉぉぉ!」


シュンシュンと剣を振り回すニャン太郎とニャン丸。

煙玉をポンポンと投げまくるニャン助。

作業員を派手に飛び蹴りをするニャン子。

大勢の作業員をはしごで押し倒すニャン平。


現場にある重機の裏でブルブルと震えながら隠れているニャン吉とニャン斗に向かって、ニャン蜜がいつものセリフを大声で叫ぶ。


「ニャン吉、今度のDVD発売日はお前を邪魔してやるからにゃあ! ニャン斗、キモくてブサイクにゃお前は、早く闘うにゃあ!」

「なんだとぉ、テメェら全員やっつけてやる!」


豹変して強くなったニャン吉とニャン斗は作業員と戦い、工事現場は大乱闘になった。


「本当に単純な2人だにゃん」


そして赤く光る八ニャン剣を持つニャン太郎と、 黒く光った木刀を持った黒竜の1対1の対決になった。


「このクソ猫どもかぁ、俺たちのダム建設工事を邪魔しやがってぇ! 生きて帰れると思うなよ!」

「うるさい! 世界で一番大切な伏夜様をケガさせたお前を、僕は絶対に許さない!」


ニャン太郎の剣と黒竜の木刀が激しくぶつかった。

しばらく戦いが続くとニャン太郎が持つ八ニャン剣の光りが点滅し、やがて光りが消えてしまう。


「ヤバい! 八ニャン剣の光りが消えて、パワーとスピードが無くなったよ」


光りが消えながも、ニャン太郎は八ニャン剣を振り回してしばらく黒竜と戦った。

そして別の作業員の男が、ニャン太郎の顔をめがけて石を投げた。石が当たった額からは血が流れ、ニャン太郎はフラつきながら地面に倒れそうになった。


「ううっ、しまったぁ! やいっ黒竜、1対1の戦いで他のヤツが邪魔するなんて卑怯だぞ!」

「ハッハッハ、お前はもうおしまいなんだよ!」


黒竜が黒く光った木刀を振り下ろした瞬間、靴からバネが飛び出してニャン太郎は空高く飛んだ。


「ニャン太郎ジャ〜ンプ!」

「な、なにぃ? 空を飛んだ?」


ニャン太郎が高く飛んだ瞬間、八ニャン剣がまた赤く光り輝いた。

そしてニャン太郎は大声で叫びながら、赤く光る八ニャン剣を思いっきり振り下ろした。 


「くらえ〜! 八ニャン剣唐竹(からたけ)割り〜!」


ニャン太郎は思いっきり八ニャン剣を振り下ろすと、黒竜の木刀が折れヘルメットが半分に割れた。やがて黒竜の頭から血が流れ、気を失って地面に倒れた。

ニャン太郎は八ニャン剣を高く掲げて、大声で叫んだ。


「やったぁ、黒竜に勝ったぁ! 僕たちの勝利だ!」


圧倒的な八ニャン士の強さに作業員はうろたえ、琴梅社長と大俵村長を置いてどこかへ逃げて行った。


「ダメだ、こいつら強すぎる。 警察に捕まるから逃げろ逃げろぉ!」

「待て待てお前たち、社長の俺を置いて逃げるなぁ!」

「おおい、村長のワシも助けろぉ!」


こうしてダム建設の工事現場の戦いは、八ニャン士の大勝利に終わった。

八ニャン士が改めて横一列に並ぶと、ニャン太郎は八ニャン剣を高く掲げながら叫ぶ。


「里見村は僕たち里見八ニャン士が守ったぞぉ!」

「おお!」


里見八ニャン士の勝利の叫び声は、里見山に大きく響き渡った。



それから時は過ぎ、大俵村長と琴梅社長は政府から賄賂を受け取った罪で逮捕された。小さな村が政府から賄賂を受け取ったということが国会でも大問題となり、この事件がメディアでも大きく取り上げられたことで世論が動いた。


そして国からの一方的なダム建設計画はすべて中止となり、里見村には再び平和が訪れた。

理不尽なダム建設が中止され、無事に里見村を守ることができた八ニャン士。

いつもはバラバラな8人だけど、最後の最後は八ニャン士の硬い結束が勝利に導いたんですね。

しかしあの八ニャン剣って、模造刀なのに何で光るんですかね?


次回最終話「誕の巻」をお送りします。

猫上様が告げた、八ニャン士誕生秘話とは?


お楽しみニャン!

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