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里見八ニャン伝  作者: ワタベミキヤ
猫剣士立志編
2/37

第2話 志の巻

里見村1番地に住んでいるニャン太郎が里見神社へ行くと、そこにはクセの強い7人の猫たちが待っていた。


そして突然光る神社の中から出てきたのは、白装束を着て長い杖を持っている猫上様だった。


はたして、8人の猫がここに集められた目的とは?


光の中から現れた猫上様は、神社の上から8人の猫たちをじっくりと見下ろしていた。そして白くて長いヒゲをゆっくりと触りながら声高らかに笑った。


「ホーッホッホ! 皆のもの、全員集まったかな?」


ドヤ顔をしながら笑みを浮かべている猫上様を、8人の猫たちはしばらく口を開けて見上げていた。すると気が短い暴れ猫のニャン丸が、早速猫上様にケンカを売った。


「何だぁ、このヨボヨボで汚ねえ老猫は? てめぇ、ふざけてんのか?」

「無礼者! このワシを誰だと思っておる」

「誰って言われても、神社が光って出てきた怪しい老人猫にしか見えないにゃ」


猫上様 コケる。

猫上様は長い杖で床を叩き、ポカンと見ている8人の猫たちに向かって叫んだ。


「ワシは怪しい老人猫ではない。 何を隠そう、ワシは猫の神様の猫山上王びょうざんじょうおうであ〜る!」


猫上様の言葉にシーンとする8人の猫たちは、目が点になりながら呟く。


「ネ・コ・ヤ・マ?」

「カ・ミ・オ?」


しばらく呆然とした8人の猫たちは、猫上様の名前の意味を全く理解していない。むしろ読み間違えた名前の方で全員大爆笑した。


「ガハハハハ! おいおい、ネコヤマカミオってダッさい名前だなぁ」

「キャハハハ、お前さんカミオって、随分と可愛い名前じゃないか〜い」

「ダマらっしゃい! ワシはネコヤマカミオではない。 猫山上王じゃあ!」

「ハハハハ、面倒くせえからお前はカミオでいい!」


会ってすぐ8人の猫たちにバカにされた猫上様は、イライラしながらまた長い杖を床に叩いた。しかし、8人の猫の笑いはまだ止まらない。


「うるさい、このバカ猫どもめ! ワシは昔から猫上様と呼ばれていて、里見村の人々からは猫の神様として崇拝されているじゃ」

「ハハハハ! もうカミオったらさっきから猫の神様って言ってるけど、それはあくまで自称だにゃ?」

「ダマらっしゃい!」

「笑ったりしてスミマセン。 ところでカミオ、いや猫上様はどうして僕たちをここに呼んだのですか?」


笑われて不機嫌な猫上様は神社の床に座り、白いヒゲをゆっくりと触りながら語り始めた。

ちなみに猫上様の自慢の白いヒゲは、月一にメンテナンスをしている。


「ここに集まったお前たちは、とてもお偉い猫から選ばれた8人の猫なのじゃ」

「とてもお偉い猫だってぇ? カミオさん、その猫さんは一体誰なのさぁ」

「それは今は言えぬ。 そしてお前たちは、お偉い猫から選ばれた8 人の猫剣士なのだ!」

「8人の猫剣士?」


猫上様は立ち上がり、長い杖で8人の猫たちに指しながら叫んだ。



「そう! その名も『里見八ニャン士』じゃあ!」



猫上様から突然言われた8人の猫は大声で叫ぶ。


「ええ? 里見八ニャン士ぃ?」

「おいおいカミオ! 里見八ニャン士って、一体どういうことなんだよん?」

「そんないきなり猫剣士って言われても、今日まで猫飯(ねこまんま)を食べながら普通に生きてきたから困るにゃあ」


8人の猫たちは気持ちの整理がつかずザワザワとしていると、猫上様は八ニャン士について語り始める。


「八ニャン士よ、これからあらゆる敵がこの里見村にやって来てもお前たちはこの村を守る使命がある。 だから子猫だったお前たちが大きくなるまで、ワシは今日までずっと待っていたのじゃ」

「あらゆる敵がやって来るのに、なぜ僕たちだけが村を守らなきゃいけないの? そんなの僕は嫌だよ」

「まぁ待て。 しかし今のお前たちでは自由きままの猫すぎて、性格や体力がバラバラじゃ。 だからこれからは八ニャン士の仲間として、早く8人の()()()()をしてほしいのじゃ」

「8人の硬い結束してほしいって、そんなことバラバラな性格の僕たちにできるんですか?」


突然の無茶ぶりに騒然としている八ニャン士だが、やがて猫上様の話しに付き合いきれなくなっていた。


「猫剣士とか敵とか結束とか、さっきから一体何の話だい? あたいはカミオの言っていることがさっぱり分からないよ〜」

「元々性格がバラバラの猫の俺たちが、今さら仲間になんかなれるわけねえだろ。 ああ腹減った!」

「イケメンの僕もケンカが嫌いなので難しいなぁ」

「ああ、バッカバカしい。 皆んな、帰ろ帰ろ!」


しらけて里見村に帰ろうとする八ニャン士だが、なぜか1人で興奮しているニャン太郎だけが皆んなを止めた。

ちなみにこのニャン太郎、正義の為とか敵を倒すとかが大好きな猫である。


「皆んな待って! これを機会に仲間になってさぁ、大事な里見村を皆んなで守ろうよ」

「ケッ! ニャン太郎、俺はお前みたいにキラキラするヤツが1番大嫌いなんだよ」

「ニャン丸、そんなこと言うなよ。 まだ手紙に書いてあった首の玉について何にも説明してないしさ。 皆んな最後まで猫上様の話しを聞こうよ」

「おお、そうじゃそうじゃ。 お前たちが首につけている白い玉のことじゃがのぉ」


ニャン太郎に言われ、猫上様は思い出したかのように首の玉について語り始めた。一度は村に帰ろうとしていた八ニャン士だが、溜め息をつきながらも猫上様の話しを聞くことにした。


「それは『仁義八行の玉』と言って、猫剣士にとってとてもありがたい玉なんじゃよ」

「仁義なんちゃらん? 何がありがたいんだよん?」

「これ邪魔なんだよにゃあ。 白い玉の中に何か変な漢字が書いてあって、ぜんぜん可愛くにゃい」


八ニャン士が首につけている白い玉の中には、8個それぞれに『仁義礼智忠信考悌じんぎれいちちゅうしんこうてい』と書体で書いてあった。

ちなみにこの白くて柔らかい玉は、八ニャン士の誰もが気に入っていない。


「それは猫剣士の証でもあり、その玉にいろいろな機能がある。 例えば話したい相手の名前を呼びながら玉をムニュっと握ると、その人と通信ができるのじゃ」

「通信だと? こんなので話しができるのか?」

「そうじゃ。 そして『皆んな』って呼ぶと、八ニャン士全員と通信ができるんじゃよ」

「え、本当に? ニャン吉!」


ニャン太郎が自分の首についている『仁の玉』をムニュっと握ると、ニャン吉の首の玉が光った。


「ニャン太郎くん、僕の声が聞こえるかな?」

「うん、ニャン吉聞こえるよ。 よし次は、皆んな!」


そしてニャン太郎がまた玉をムニュっと握ると、今度は八ニャン士全員の玉が光り出した。


「おや、あたいの球が光ったじゃないか〜」

「おお、これでお互い自由に通信ができるのかぁ。 すげぇ便利だなぁ」

「これはすげぇな。 変な漢字が書いてあるダサい玉だと思っていたけど、そんな機能があったんだな」


すると、ニャン斗が呆れた顔をして語る。


「でもさぁ。 この玉で通信っていうけど、通信なら別に携帯電話でもよくないかぁい?」


空気の読めないニャン斗がそう言うと、八ニャン士の顔が凍りつく。ニャン斗に変な事を言われた猫上様は冷や汗をかき、焦りながら慌てて言った。


「ニャン斗、それを言うでない! 猫剣士が携帯電話を使って連絡をしてしまうと、いまいちこの物語が盛り上がらんじゃろ?」

「おいおい、カミオ? この物語の盛り上がらないって、一体何の物語だよ?」

「あたいはさっきからカミオの言っていることが、さっぱり分からないね〜」

「ホーッホッホ。 それと猫剣士の君たちには、とっておきのコレを渡してやろう!」


猫上様は自慢げに8本の模造刀を八ニャン士の前に並べた。その剣の柄には、それぞれ玉と同じ『仁義礼智忠信考悌』の漢字が彫ってある。


「自分の玉と同じ漢字が書いてある剣を持ちなさい」

「僕は『仁』って書いてあるからこれだね」

「あたいは『礼』だからこれか〜い?」

「へっ、偉そうに。 剣って言ったって、ただの模造刀だろ? ああ腹減った!」

「ったく模造刀ってなんかダセエなぁ。 もっとカッコいい日本刀は無いのかよ!」

「ニャン丸、日本刀を持ってはダメだよん。 日本では警察に捕まっちゃうよん」


模造刀がそれぞれに配られると、八ニャン士はそれぞれ自由に振り回した。すると、剣はシュンシュンと風を切るような音が鳴った。


「やったぁ! なんか剣からかっこいい音が鳴って、いかにも早くて切れそうだよ」

「わざと音が鳴るように作ってあるんじゃ。 その方がこれから始まるこの物語がとても盛り上がるじゃろ?」

「またそれにゃ。 だからこれから始まるこの物語って、一体何の物語にゃ?」

「ホーッホッホ! そしてこれは『八ニャン剣』と言って、ワシが作った剣なのじゃ」

「へぇ。 猫剣士のニャン剣だなんて、まるでこの僕みたいにイケてるね!」

「僕は剣よりも早く家に帰りたいです」

「いざという時はその八ニャン剣の剣先を8本合わせると、八ニャン剣からはものすごくパワーが出るんじゃ」

「ものすごいパワー? どれどれ、早速皆んなでやってみようぜぇ!」


ものすごいパワーが気になった八ニャン士は、円陣になって八ニャン剣の剣先を合わせる。しかし、剣はうんともすんともニャンとも言わなかった。


「あれ? 猫上様、何にもならないですよ?」

「だから、いざという時だけって言うたではないか。 お前たちがもしもの時に八ニャン剣の剣先を合わせないと、剣のパワーは出ないのじゃ」

「使えね〜な。 さっさと殴った方が早いぜ」

「結局邪魔なだけだな。 ああ腹減った!」



猫上様は神社の上に立ち、改めて八ニャン士に叫んだ。


「よいか里見八ニャン士、お前たちの首についている玉と八ニャン剣は猫剣士の証じゃ。 志しを高く持ち、8人で里見村を守るのじゃあ!」


それを聞いて急に興奮し始めたニャン太郎も神社の上に立ち、八ニャン剣をシュンと振り掲げながら叫んだ。


「よぉし、皆んなぁ! このカッコいい八ニャン剣で、僕たち八ニャン士が里見村を守ろう!」

「おいニャン太郎、勝手に決めんじゃねぇ! 俺はお前みたいにキラキラしたやつが大っ嫌いなんだよ!」

「おやおや。 1番地のニャン太郎ちゃんは、こういうヒーローっぽいのが好きなんだね〜」

「シッシッシ、俺の忍術を試せるか楽しみだなん!」

「にゃんだか、面倒くさいことになってきたにゃあ」

「ガッハッハ! 八ニャン士なんかより、皆んなでメシでも食おうぜぇ」

「皆んなぁ、ケンカはやめて仲良くやろうねぇ」

「僕はケンカが嫌いです。 早く家に帰りたい」


そんな八ニャン士を見た猫上様は、神社の上から高笑いした。


「ホーッホッホ! まぁ、とりあえずしばらく皆んなで仲良くやってくれ。 じゃ、バイビ〜!」


そして、猫上様はそう言ってさっさと神社の中へと入ってしまった。さっきまで光り輝いていた神社は扉が閉まると、また暗い神社に戻った。


言いたいこと言ってさっさと逃げる猫上様の素早さに、八ニャン士は目が点になりながら呆然と立っていた。


「バイビ〜って。 カミオ、軽っ!」


とりあえずカミオ、いや猫上様から猫剣士の軽い説明があった里見八ニャン士。


これから八ニャン士は猫剣士として硬い結束ができ、そして里見村を守ることがでしょうか?


ところであの八ニャン剣の剣先を合わせると、一体どんなパワーが出るんですかね?


次回「仁の巻』をお送りします。

ええ? 里見村の村長の娘が家出をした?


お楽しみニャン!


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