第17話 悌の巻
『悌の玉』を持つ八ニャン士のニャン平。
里見村8番地にある酪農の家に住んでいる。
怪力猫の異名を持ち、体格が大きく食いしん坊で「腹減った」が口癖。
猫アイドルやヒーローごっこが大好き。
お尻に星の模様がある。
日本の山奥のまた奥に『東野郡』という集落があり、そこには里見村や大和田村を含め4つの村があった。その4つの村は、平和と安全の為にお互い協力しながら仲良くしていた。
ただ、里見村の猫と大和田村の狸のような一部の小さな争いも度々ある。
そんな東野郡では村同士の交流を深めようと、4年に一度『東野郡大食い選手権大会』を開催していた。これは各村の代表者4人が対決し、大食いの優勝者を決めるという言わば『食のオリンピック』のような大イベントである。
その大食い選手権大会の優勝者には、4年間東野郡のすべての飲食店で無料で食べれる『東野大五郎』という称号が与えられた。
ちなみに大五郎の名前に深い意味はない。
そして東野郡大食い選手権の里見村代表を選ぶ為、村の中心にあるウラオモテヤマネコ公園で予選会が開催された。里見村代表の予選では多くの村民がエントリーし、公園内の会場がとても賑わっていた。
その予選会のエントリー者の1人に、八ニャン士の中で1番の大食いであるニャン平がいた。体が大きくて怪力猫のニャン平は、いつも大食い選手権大会の優勝者候補の1人であった。自信たっぷりのニャン平は、会場に響き渡るように大声で笑う。
「ガッハッハ、やっと4年に1度の東野郡大食い選手権大会が始まったっす! 今回東野大五郎になるのは、この俺様っす! ああ腹減った!」
ニャン平が大声で叫んでいると、あの暴れ猫のニャン丸が腕を組みながらドヤ顔で仁王立ちしていた。
「チッ、朝からデカい声だすんじゃねぇ! 八ニャン士で大食いなのは、何もテメェだけじゃねぇぜぇ!」
「おやおや? 細マッチョのマルちゃんが、この俺様に勝てると思ってるっすか?」
「だ〜れ〜が〜細マッチョのマルちゃんじゃあ、コラッ! テメェこの俺にケンカ売ってんのか?」
「やめとけやめとけっす。 今回の大会は、この怪力猫のニャン平様が東野大五郎の称号をいただくのだっすよ。 ケンカが弱いマルは帰れ帰れっす」
すると今度は八ニャン士の女軍師であるニャン蜜も、腕を組みながらドヤ顔で仁王立ちしていた。
「ハッハッハ。 おいニャン平、今回はこのキューティーニャン蜜ちゃんも参加するにゃん!」
「おやおや、これは意外っすね? ニューハーフのミッチーまで大食い大会に参加するっすか?」
「ちょっとぉ、私今までミッチーにゃんて言われたことにゃい! とっても恥ずかしいにゃ」
「ミッチーも悪いことは言わんす。 早く家に帰って兵法でも読んで、軍師のお勉強でもしてるっす」
「大きなお世話だにゃあ! ところでニャン平はそんにゃに大食いにゃのに、何で4年前は勝てにゃかったにゃ?」
「うっ、それはっすね・・・」
ニャン平は4年前の大食い選手権大会のことを思い出し、地面に倒れて急に凹んでしまう。するとそれを見ていたニャン丸は、コソコソとニャン蜜に小声で呟いた。
「ニャン蜜、それをニャン平に言っちゃダメだ。 あいつが哀れで可哀想だよ。 めちゃくちゃ悲しい話しなんだよ」
「にゃにゃ、ニャン丸どうしたにゃ? 4年前にニャン平はにゃんかあったかにゃ?」
「4年前のニャン平は好きな女猫ちゃんがいて、その女猫ちゃんに愛の告白をしたんだって。 そしたら大会前で女猫ちゃんにフラれちゃって、1回戦の途中で食べながら大泣きしちゃって敗退したんだって。 クククク」
ニャン丸はニャン蜜に話しをながら小声で笑うと、それを見たニャン平はイラッとする。
「おい、マル! そんなことミッチーに話しするんじゃねぇっす。 しかも完全に俺のことをバカにして笑ってるっすな?」
「ダメだにゃ、ニャン丸。 そんにゃに笑っちゃ、ニャン平が可哀想だにゃん。 クククク」
「ミッチー、お前もっす。 八ニャン士の軍師たる者、人の不幸を笑うんじゃないっす」
「クククク」
するといつの間にか隣には小柄のニャン吉もいて、皆んなと一緒に小声で笑っていた。
「おいニャン吉、お前までどさくさにまぎれて小声で笑ってんじゃねぇっす。 それと何でお前がここにいるっすか?」
「さぁ、僕は何でここにいるんでしょ?」
「そんなの知らんっす! まぁ4年前の俺様とはちょっと違うから、今回は必ず予選大会を優勝してやるっす!」
「ヘッ、お前がこの俺に勝てると思ってるのかよ。 これでも俺は村で1番美味しい中華屋の猫だぞ?」
ニャン丸は里見村6番地にある中華屋の家に住んでいた。
ちなみに村で1番美味しいかどうかは定かではない。
「ハッハッハ、笑わせるなっす。 お前みたいなチンピラ猫に、この俺様が負ける訳ねぇす。 相手にならんっす
「誰がチンピラ猫じゃい! ヘッ、中華屋の暴れ猫がぜってぇお前を倒してやる。 覚悟しとけよ!」
「ちょっとあんたたち、キューティーニャン蜜ちゃんだって意外とたくさん食べるんだからにゃん!」
「あ、僕は何でここにいるんでしょ? 早く家に帰りたいです」
ニャン平は3人を横目で見ながらブツブツと独り言を言っていた。
「(独り言)まぁ今回の予選ではあのチンピラ猫だけが危険人物っすから、早いとこあいつをやっつけるっすか。 他のおチビちゃんとニューハーフちゃんは最初から相手にならんっす。 へへへ、優勝は俺のもんすよ」
しばらくすると開始のアナウンスが流れ、会場にいる大勢の観客の声が上がった。
「里見村の皆さ〜ん、こんにちはぁ! これから東野郡大食い選手権大会の予選大会を始めま〜す!」
「おおおお、待ってましたぁ!」
「4年前の大会テーマが『アメリカン』だったから、今回のテーマは何だろう?」
「今年の大食い選手権大会のテーマは『中華』です!」
「おおおお、今年は中華だぁ!」
今回の大食い選手権大会のテーマが告げられると、また観客の声が上がる。そして、そのテーマを聞いたニャン平も鼻息を荒くして興奮していた。
「ガッハッハ、今年のテーマは中華っすかぁ。 優勝はこの俺様がもらったっす。 ああ腹減った!」
「ヘッ、バカ言ってんじゃねぇよ。 大会のテーマが中華なら、この中華屋の俺様が優勝だぁ!」
「マルちゃ〜ん、家に帰るなら今のうちっす。 今日こそお前をボコボコにしてやるっす」
「ケッ、うるせぇバカデカトン平! おめぇこそ、吐いたツバ飲まんとけよ!」
「だ〜れ〜が〜バカデカトン平っすかぁ! 細マッチョのチンピラ猫がぁ、かかってこいっす!」
ニャン平とニャン丸は八ニャン剣をシュンと抜き、バキバキとお互い睨み合っていた。
そしていよいよ大食い選手権大会の里見村予選が始まった。会場には長いテーブルが置かれ、何十人ものエントリー者が座り食べる準備をして待っていた。
1回戦の料理のテーマがアナウンスから流れると、会場にいる観客の声が一斉に上がる。
「さてさて、予選1回戦のテーマは『村中華パラパラしっとりチャーハン』です! これは1時間でチャーハンを何皿食べるかを競います!」
「おおおお、チャーハンだぁ!」
長いテーブルに座っていた八ニャン士は、1回戦のテーマを聞いて興奮していた。
「ガッハッハ、チャーハンは俺の大好物っす。 この勝負、もらったっす! ああ腹減った!」
「ヘッ、チャーハンがパラパラなんだかしっとりなんだか分からんが、俺様が全部のチャーハンを食べてやる!」
「村中華って、町中華や県中華よりも大好きにゃん。 早くチャーハン食べたいにゃんにゃん!」
「あ、僕は何でここにいるんでしょ? 早く家に帰りたいです」
「では、大食いチャーハン! よ〜い、パン!」
アナウンスからスタートの合図が鳴ると、長いテーブルに座っているエントリー者は一斉にチャーハンを食べ始めた。
「おりゃあ、怪力猫のニャン平様は何杯でもチャーハンを食ってやるっす!」
「おおおお! ケッ、ニャン平! この俺様をナメんなよ」
「にゃにゃにゃにゃ! このチャーハン美味しいから、まだまだ食べれるにゃあ」
「モグモグモグ、モグモグモグ」
八ニャン士で1番の大食いのニャン平は、もの凄い勢いで何杯もチャーハンを食べていた。
「おりゃおりゃおりゃ、ぜんぜん余裕っす! もっとチャーハン持ってこ~いっす!」
「うおおおお。 ニャン平、早くくたばれ!」
「にゃにゃにゃにゃ! 私だって負けにゃいにゃあ」
「モグモグモグ、モグモグモグ」
「ピーッ! はい、終了で〜す!」
1回戦のチャーハンの大食いが終了し、エントリー者の半分が脱落した。
そしてニャン平とニャン蜜とニャン吉は次の2回戦に進んだが、あの勢いがあったニャン丸は早くも1回戦で脱落してしまった。
「ガッハッハ、俺様の胃袋はまだまだ入るっす。 ああ腹減った!」
「私も楽勝だにゃ。 パラパラしっとりチャーハンがとっても美味しかったにゃん!」
「あ、僕は何でここにいるのでしょ? 早く家に帰りたいです」
「ダメだ・・・俺はもう食えねぇ」
ニャン丸は食べ過ぎて目を回し、地面にバタッと倒れてしまった。苦しくて横になっているニャン丸の姿を見たニャン平は、呆れて目が点になる。
「食べ過ぎっていうかマルちゃん、お前1杯のチャーハンを半分しか食ってねぇっす。 お前はアホっすかっ!」
東野郡で4年に1度開催される『東野郡大食い選手権大会』が始まりました!
今まで以上に気合いの入ったニャン平くんは4年前の屈辱を晴らし、あの『東野大五郎』の称号を手に入れることができるのでしょうか?
それにしても大見え張っていたニャン丸くんがチャーハン半分って、意外と少食なんすね。
次回「喰の巻」をお送りします。
大食い選手権の予選大会の優勝者は・・・あいつが?
お楽しみニャン!




