第16話 叶の巻
里見村1番の金持ちで、いつも優雅な生活をしている自称イケメンのニャン斗。
ニャン斗はニャン助の願いを叶えあげようと、可愛い子猫ちゃんたちとの合コンをセッティングした。
次にニャン斗の『孝の玉』が光ったのは、あのセクシーニャン子からの連絡だった。
ニャン助くんと華やかな合コンが終わった後、僕の『孝の玉』からセクシーニャン子ちゃんの軽やかな江戸弁が聞こえてきたんだ。
相変わらず色気のある声をしてるよねぇ。
「イケメンのニャン斗く~ん、ごきげんよ〜。 お前さん、元気にしてたか~い?」
「やぁ、セクシーニャン子ちゃん。 僕はいつもイケメンでとてもハッピーにしてるよぉ」
「そ~かい、そいつはよかったね〜。 あたいね〜、あんたに大事な話しがあるんだよ〜」
「セクシーニャン子ちゃんから大事な話って、いきなりどうしたのかなぁ? なんかドキドキするなぁ」
「それはあんたと会ってから話しするからさ〜、村のショッピングモールまで1人で来ておくれよ〜」
「ええ? ショッピングモールか〜い?」
里見村のショッピングモールと言うのは、村の中心にある繁華街のことなんだ。
大体皆んなここで買い物していることが多いんだよ。
「とても恥ずかしくて、あんたにしか言えないことがあるんだよ〜。 あたいのこの気持ち、分かるだろ〜?」
「ニャン子ちゃんの頼みなら断れないなぁ。 じゃあ、今から車でショッピングモールへ行くよ」
「おや、来てくれるのか〜い? 恩にきるよ〜」
それから僕は運転手付きの車で、里見村のショッピングモールへ向かったんだ。
ショッピングモールに着いたらベンチにはもうニャン子ちゃんが待っていて、笑顔で手を振ってくれたよ。
「本当にすまないね〜、イケメンニャン斗く〜ん」
「ハッハッハ、大丈夫さぁ。 ところでニャン子ちゃん、僕に大事な話ってどうしたんだい?」
「実はさ〜、ずいぶん前にあたいと一緒に大和田村の狸と戦ったじゃないか〜。 あの時、あたいはニャン斗くんのカッコ良さに気付いてしまったんだよ〜」
「ええ? どうしたんだい、急に?」
「だ・か・らさ〜! あの時あたいはニャン斗くんに惚れっちまったんだよ〜」
ニャン子ちゃんは色気のある甘い声でそう言いながら、僕のほっぺをツンツンしてきんだよ。
ニャン子ちゃんのセクシーな江戸弁とツンツンに、僕はすっかり鼻の下がビヨーンと伸びちゃったよ。
「そ、そうなのかぁい。 八ニャン士の仲間である僕に惚れてしまうなんて、照れちゃうじゃないかぁ」
「ホントだよ〜。 だからさ〜、このあたいをイケメンニャン斗くんのファンクラブに入れておくれよ〜」
「ニャン子ちゃんが僕のファンクラブに入るのかい?」
「そしてファンクラブに入ったら、女猫ちゃんたちに『私はニャン斗くんの女猫だよ!』って言ってやるのさ〜。 あたい、意外とヤキモチやきなんだよ〜」
ニャン子ちゃんはまた甘い声でそう言いながら、今度は僕の胸をツンツンしてきたんだ。
胸をツンツンされた僕はデレデレになって、下アゴがビヨーンと伸びちゃったよ。
「いやいやぁ、すぐ飛び蹴りする短気のニャン子ちゃんがヤキモチやきだなんて意外だなぁ」
「あたいはあんたにメロメロなんだよ〜。 すぐ飛び蹴りしてしまうダメなあたいを堪忍しておくれ~!」
突然ニャン子ちゃんは僕の胸に抱きついて来ると、僕の心はキュンキュンしてしまったよ。
そう、僕はニャン子ちゃんの恋に負けてしまったのさ。
「ハハハ、しょうがないなぁ。 恋は罪だねぇ」
「恋は盲目っていうじゃないか〜。 それでさ〜、あんたにちょいとお願いがあるんだけど」
「お願い? 僕の可愛い女猫のニャン子ちゃんのお願いは、一体なぁにかなぁ?」
「あたいさ〜、あの赤いバッグが欲しいんだよ〜」
その時ニャン子ちゃんが指をさしたのは、ショーウィンドーに飾ってある赤い高級バックだったんだ。
「へ? あのバッグが欲しいのかぁい?」
「ね〜いいだろ〜? こんなことさ〜、金持ちでイケメンのニャン斗くんにしか頼めないんだよ〜」
「僕のことをメロメロになったニャン子ちゃんから言われたら、それはちょっと弱いなぁ」
「お願いだよ~、イケメンニャ・ン・斗・くん!」
「よ〜し、僕の可愛いニャン子ちゃんにあの赤いバックを買ってあげよう!」
「本当か~い! ありがとう、ニャン斗くん♡」
ニャン子ちゃんは僕のほっぺにチューをすると、僕はもう最高潮にデレデレになって、腕も足もビヨーンと伸びちゃったよぉ。
だから僕はニャン子ちゃんの願いを叶える為に、あの高級な赤いバッグを買ってあげたんだ。
「赤いバックありがとさ〜ん! じゃあね〜!」
僕のファンクラブに入ったニャン子ちゃんは赤いバックを振り回して、とっても喜んで帰って行った。
その可愛いニャン子ちゃんの喜んで帰る後ろ姿が、僕はとても愛おしかったよ。
「これでまた僕のファンの女猫ちゃんが1人増えてしまったなぁ。 ああ、なんて僕は罪深い猫なんだ」
するとまた僕の『孝の玉』が光ると、今度は怪力猫のニャン平くんからだった。
「やあ、ニャン平くん。 急にどうしたんだい?」
「イケメンニャン斗くんにスーパービッグニュースだよ! この里見村に新しいイタリアンレストランができたみたいだよ。 ああ腹減った!」
「ええ、それは本当かぁい? 新しいイタリアンなんて、ウルトラスーパービッグニュースだねぇ!」
「僕は今から行こうと思っているんだけど、グルメでイケメンなニャン斗くんも一緒に行かない?」
「よし行こう、今すぐ行こう!」
僕はイケメンで金持ちなんだけど、実は村1番のグルメでもあるんだよ。
そして食べることに関しては、八ニャン士の食いしん坊であるニャン平くんとは少し息が合っていんだ。
だから村に新しいレストランができると、いつも一緒に食べに行くことが恒例になっていた。
僕はニャン平くんの言っていたレストランへ車で向うと、店の前にはニャン平くんが両手を大きく振りながらニコニコと笑って待っていたよ。
「やぁ、イケメンニャン斗くん! ここのイタリアンはなんと、『ぐるニャビ』で肉球3つなんだぜぇ」
「へぇ、肉球3つだなんてすごいレストランだねぇ」
人気グルメサイトの『ぐるニャビ』の肉球3つって、まあ簡単言うと星3つのことだよ。
つまり、このレストランはかなり美味しいってことさ。
「里見村の金持ちでイケメンでグルメのニャン斗くんに、1番早く食べて欲しいのさ! ガッハッハ」
「いやいやぁ、グルメといえばニャン平くんもそうじゃないかぁ。 だから一緒に美味しく食べようじゃないかぁ」
「それがさぁ、ニャン斗くんにお願いがあるんだけど」
今度はニャン平くんにお願いされたよ。
今日はニャン助くんとニャン子ちゃんにもお願いされて、皆んなこの僕を頼りにしているんだなぁ。
「ん? ニャン平くん、どうしたんだぁい?」
「それがさぁ、俺は今お金ないんだよねぇ」
「なぁんだ、お金のことなら気にすることないよぉ。 僕たちはグルメ友達じゃないかぁ!」
「そうかい、ありがとう。 そうそうイケメンニャン斗くんと僕はグルメ友達だね、ガッハッハ!」
僕とニャン平くんは一緒に肩を組んで、歌を歌いながら笑顔でレストランに入ったよ。
食いしん坊のニャン平くんは、メニューをジロジロと見ながら早速悩んでいたよ。
「ニャン斗くん、この魚が美味しいそうだねぇ。 いや、こっちのお肉もいいなぁ? パスタもいいなぁ? ワインもいいなぁ?」
「ニャン平くん、遠慮せずにドンドン頼んでよぉ」
「え、いいの? じゃあこのピザにラザニアにニョッキとかも食べていいの? 僕食べちゃうよ?」
「ハハハ、なんだか今日の僕はとても気分がいいんだぁ。 だからドンドン頼んでよぉ!」
「本当にぃ? 分かった、じゃあこのメニュー全部持ってきてぇ! ああ腹減った!」
上機嫌の僕たちは、それからレストランのメニューを全部食べてしまったよ。
「ニャン平くん、このお肉と赤ワインは最高だねぇ! さすが肉球3つのイタリアンレストランだよぉ」
「いやぁニャン斗くん、このパスタもピザも最高だよぉ! ガッハッハ、美味い美味い!」
「ハハハハ、かんぱ〜い!」
美味しいそうに食べるニャン平くんの姿が、僕はとても愛おしかったよ。
「いやぁ食べた、食べたなぁ! グルメイケメンニャン斗くん、本当にありがとう!」
「本当に美味しかったねぇ。 いいイタリアンを教えてくれてありがとう、ニャン平くん!」
「ところでイケメンニャン斗くんは車だけど、ワインはあんなに飲んで大丈夫なのかな?」
「大丈夫、運転手さんが来てくれたから安心さ!」
「運転手付きなんてガーサスですなぁ。 金持ちでグルメでイケメンのニャン斗くんは!」
「ハハハハ!」
それから僕は車に乗ると、ニャン平くんは僕が見えなくなるまでいつまでも手を振ってくれた。
そんなお腹いっぱいで笑顔で手を振るニャン平くんの姿も、僕はとても愛おしかったよ。
僕は家に帰ってシャワーを浴びた後、白いバスローブを着て柔らかいソファに座った。
そしてお気に入りの『猫のぬいぐるみ』を抱きながら、高級なブランデーを飲んで1日を振り返っていた。
「今日も最高なイケメンの1日だったよぉ。 またこの里見村に笑顔が増えて、僕は本当に嬉しいよ」
こうして僕の金持ちでイケメンな1日が終わった。
「イケメンの僕に乾杯! おやすみグッナイ!」
その次の日、ニャン子とニャン助とニャン平は『ウラオモテネコヤマ公園』に集まって話しをしていた。
「いや〜ん、昨日はニャン斗のおかげでたくさんの可愛い女猫ちゃんと仲良くできたよん!」
「ちょっと聞いてよ! あたいなんて、ニャン斗から新しい赤いバッグを買ってもらったよ〜」
「俺なんか、ニャン斗から美味しいイタリアンをお腹いっぱいご馳走になったぜぇ。 ああ腹減った!」
「ところでニャン子はニャン斗のファンクラブに入ったみたいだけどん、これからどうするんだん?」
「そ〜だね〜。 いきなりサヨナラは可哀想だから〜、しばらくは適当にやっておくかね〜」
「フフフ、おぬしもワルよのぉ」
「いやいや〜、おぬしこそ〜」
ニャン子とニャン助とニャン平は、とても悪い顔をしながら不気味に笑った。
「お互い」
「良いお友達を」
「持ちましたなぁ。 シッシッシッ!」
知らぬは仏と申しますが、イケメンのニャン斗くんが幸せならそれでOKでしょう。
今度ニャン斗くんが困っている時は、八ニャン士の皆んなが助けてあげて下さいね。
それにしてもあの3人は相当の悪ですので、皆さんご注意を。
次回「悌の巻」をお送りします。
食いしん坊のニャン平が『大食い選手権大会』で大暴れ!
お楽しみニャン!