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里見八ニャン伝  作者: ワタベミキヤ
猫剣士立志編
14/43

第14話 仇の巻

大和田村の怪しい狸たちに襲われたニャン吉は、大切な猫アイドルのDVDを取られてしまった。


ニャン丸は自分のせいだと責任を感じ、ニャン吉のDVDを取り戻す為に1人大和田村へ向かった。


はたしてニャン丸は、ニャン吉のDVDを取り戻すことができるのだろうか?


ハチマキにタスキ掛けという武装をしたニャン丸は、自分の顔をパンパンと叩いて気合いを入れる。


「ヘッ、ニャン吉待ってろよ。 お前のDVDは必ず俺が取ってきてやる!」


そして八ニャン剣をギュッと強く握りしめ、ゆっくりと歩いて東野橋を渡った。


東野川の向こう側にある大和田村に乗り込むと、村の多くの狸たちは武装しているニャン丸をジロジロと見ていた。ニャン丸はその狸たちをギロリと睨みつけながら、村中に響きわたるように大声で叫ぶ。


「ケッ、俺は里見村から来た暴れ猫のニャン丸様だぁ! ニャン吉のDVDを盗んだクソ狸ども、出てこいやぁ!」


すると大和田村の1人の狸が、ヘラヘラと笑いながらニャン丸の前に出て来る。


「ヒッヒッヒ、誰だお前? 何しに来たんだよ?」

「おいお前! ニャン吉のDVDを取った狸はどこにいる?」

「DVDを取ったやつだと? 知らねぇなぁ。 そんなヤツはここにはいな・・・」

「うぉりゃあ!」


ニャン丸は話しの途中で八ニャン剣でいきなり殴ると、その狸は地面に倒れる。


「いたたた、テメェいきなり何するんだ!」

「ケッ、お前みたいなザコ狸には用はねぇんだよ。 ニャン吉のDVDを取ったクソ狸どもを早く出せや!」


すると、今度はニャン吉のDVDを奪ったあの3人の狸たちが笑いながらニャン丸に近寄って来た。


「ヒッヒッヒ! おいおい、この前のチンピラ猫じゃねぇかよ。 今度はお前が大和田村に何しに来たんだよ?」

「テメェら、俺がいない隙によくもニャン吉のDVDを取りやがったなぁ」

「DVD? ああ、これはあの大人しい猫ちゃんから、ちょいと借りただけだよ。 ヒッヒッヒ!」


狸たちは笑いながらニャン吉から奪い取ったDVDをグルグルと振り回していた。


「ふざけんじゃねぇ、ニャン吉のDVDを返せ!」

「ヒッヒッヒ! お前1人だけで大和田村に来たら、どうなるか分かってんだろうなぁ」

「うるせぇ、だまれ! お前ら3人は俺がボコボコにしてやるから覚悟してろよ」

「ヒッヒッヒ、それじゃあ強い俺たちが弱いお前をイジメているみてぇじゃあねぇか。 じゃあ俺とタイマンしな!」

「チッ、この暴れ猫の俺とタイマンだとぉ? 上等だよ!」

「ヒッヒッヒ、覚悟しろよ!」


そう言いながら、1人の怪しい狸が長い棍棒(こんぼう)を構えて前に出た。この怪しい狸は、棍棒の達人として大和田村では有名な狸であった。


それからニャン丸と狸の闘いが、大和田村の広場で始まろうとしていた。強い風吹く中でしばらくお互い睨み合うと、ニャン丸は八ニャン剣をシュンと抜いて狸は長い棍棒をブンブンと振り回した。


「そりゃあ、行くぜぇ!」


まずニャン丸が八ニャン剣で激しく襲うが、狸の長い棍棒でヒョイっとかわされる。ニャン丸はなかなか倒せない相手にイライラしながら、剣をシュンシュンと振り回す。


「チッ、腐った狸のくせに狐みたいにヒョイヒョイ逃げやがってぇ。 これでもくらえぇ!」

「ヒッヒッヒ! そんなお前のヘタクソな剣術と模造刀で、棍棒の達人であるこの俺を倒せると思うなよ」

「うるせぇ、まだまだだぁ! くたばれぇ!」

「よぉし、今度は俺から行くぜ。 ヒッヒッヒ!」


すると狸の棍棒が高速に回転して、荒れ狂うニャン丸の体を数カ所突き刺していった。そして最後に目を突かれたニャン丸は、とうとう地面に倒れてしまった。


「ちっくしょう、相手の目を狙うなんて卑怯だぞ!」

「卑怯? タイマンの闘いに卑怯もクソもあるか! 暴れ猫なんて大したことねえなぁ、ヒッヒッヒ」


ニャン丸の体が傷ついて立てなくなったその時、どこからか2人の声が聞こえてきた。


「その不公平な闘い、ちょっと待ったぁ! 大和田村に来たのはニャン丸だけじゃないぞ」

「ガッハッハ、狸どもが3対1の決闘だなんて汚ねえっす。 ああ腹減った!」


倒れているニャン丸の後ろにいたのは、さっきまで公園でヒーローごっこをしていたあのニャン太郎とニャン平だった。

2人は傷ついたニャン丸の顔を見てニヤリと笑う。


「ニャン丸、DVDのことはニャン吉から聞いたよ。 だから僕たちも一緒に闘うよ!」

「ニャン丸、1人で大和田村に来るなんて水くせぇっす。 お前は弱いんだから、あとは俺たちに任せるっす」

「お前ら・・・」


ニャン太郎とニャン平は狸と戦う為にハチマキにタスキ掛けの武装をして、八ニャン剣を強く握りしめていた。


「やい、大和田村の狸ども。 僕たちはニャン吉からDVDを奪ったお前たちを絶対にゆるさない!」

「ガッハッハ、さっさとニャン吉のDVDを返してもらうっすか。 でないと里見と大和田の全面戦争になるっすよ」

「なにぃ? 里見と大和田の全面戦争だってぇ?」


ニャン平のその鋭い言葉で3人の狸たちは少しひるんでいる間、ニャン丸はフラフラしながら立ち上がる。


「ヘッ、お前ら来てくれてありがとうよ。 でもこれは俺が始めた闘いだから、棍棒を持ったあの狸だけは俺がやる」

「ニャン丸、バカなこと言ってんじゃねぇっす。 そんな体で闘えるっすか!」

「ニャン丸、友達を想う気持ちはよく分かるよ。 だけど僕たちだってニャン吉の友達なんだよ!」


すると、ニャン丸はニャン太郎の顔を見て言った。


「ヘッ、別にニャン吉は俺の友達なんかじゃねぇよ」

「え? ニャン丸、どういうこと?」


ニャン丸はブルブルと震えながら八ニャン剣を握りしめて、相手を睨みながら仁王立ちしていた。


「小柄で小声でケンカが嫌いなニャン吉だけどな」


ニャン丸は八ニャン剣を高く掲げて、前に強く突き出した。


「ニャン吉は、俺の大事な里見八ニャン士の猫剣士なんだよ!」


ニャン太郎とニャン平は、ニャン丸のその力強い言葉にグッとくる。


「ニャン丸、お前・・・」

「ヘッ、大事な仲間の八ニャン士がやられたら、相手が誰だろうと俺は絶対に許さねぇんだよ!」


そしてニャン丸はニャン太郎を見てニヤリと笑う。


「ニャン太郎悪いな、お前のセリフをもらうぜ」

「えっ、なにを?」 


ニャン丸は力強く八ニャン剣を振り上げて、棍棒を持った狸に向かって飛びかかって行った。


「今日の正義は・・・このニャン様だぁ!」


それからしばらく2人が激しい闘いをしていると、ニャン丸の剣と狸の棒が強くぶつかり、剣と棒が空高く飛んだ。

その瞬間、ニャン丸は狸の両腕をしっかりと掴む。


「ヘッ、さっきから下手な棒を振り回して俺から逃げやがって。 へへへ、暴れ猫のニャン丸様をナメんなよ!」

「な、なにぃ? 腕を放せ!」


ニャン丸は両腕を掴んだまま睨みつけ、狸の顔に向かって激しく頭突きをした。


「うぉりあああ!」

「ギャアアア!」

「ニャン吉の大事なDVDを返せぇ! DVDを返せぇ! DVDを返せぇ!」

「お前、相手の顔を狙うなんて卑怯だぞ!」

「卑怯? ヘッ、タイマンの闘いに卑怯もクソもあるかって言ったのはお前の方だぜ!」


怒り狂っているニャン丸はそう言いながら何発も頭突きをすると、とうとう狸は気を失い倒れてしまった。

その狂ったニャン丸を見た他の2人の狸たちは、ブルブルと震え上がりながらニャン吉のDVDを投げ捨てて逃げて行った。


「ヤバい、あいつ狂ってやがる。 逃げろ!」


必死で逃げる狸たちの姿を見たニャン太郎とニャン平は、ニャン丸の逆転勝利に喜ぶ。


「やったぁ。 ニャン丸が勝ったぁ!」

「ガッハッハ! やるじゃねぇっすか、ニャン丸!」

「へへへ・・・」


すでに気を失っている狸の両腕を離し、ニャン丸は力の無い笑いをしながら地面に倒れた。



しばらく時が過ぎて夕方になり、遠くの山の方でカラスが鳴いている。

大和田村の狸との闘いでボロボロになったニャン丸を体の大きいニャン平が背負い、横にはニャン太郎も一緒に歩いていた。


「ったく、無茶しやがるヤツっす。 だから1人でやるなって言ったっす。 ああ腹減った!」

「でもさぁ、ニャン平。 今日のニャン丸はとってもカッコ良かったと僕は思うよ」

「イテテテ。 チッ、あの逃げた2人の狸どもは、また明日行ってぶっ殺してやる!」


それを聞いたニャン太郎とニャン平は、強がっているニャン丸を見て笑う。


「ハハハ、まぁいいじゃねぇっすか。 とりあえず、ニャン吉のDVDを取り返したっすから」

「でもニャン吉のDVDとニャン丸の体はボロボロだけどね。 ハハハ!」

「チッ、2人とも笑うんじゃねぇ! いいか、今日のことは八ニャン士の皆んなには言うんじゃねぇぞ!」

「なんだ、お前? あいつにボコボコにされたのが、そんなに恥ずかしいっすか?」

「ケッ、うるせぇよ。 極悪非道で暴れ猫のニャン丸様はな、天下無敵の猫でなきゃいけねえんだよ」

「ああ、はいはい。 今回の狸との闘いは、3人だけの秘密にしておくね」


ニャン平に背負われて傷ついたニャン丸は、珍しく低く弱々しい声でニャン太郎に言った。


「なぁ、ニャン太郎。 今度マジで俺と一緒に八ニャン剣の稽古をしないか?」

「うん、別にいいよ。 でもニャン丸が八ニャン剣の稽古だなんて珍しいじゃない?」

「ヘッ、うるせぇ・・・ほっとけ」


少し涙ぐんでいるニャン丸のことを、ニャン太郎とニャン平は見て見ぬふりをしていた。



3人はしばらく歩いてニャン吉の家に着くと、ニャン丸はニャン吉にDVDを手渡した。ボロボロになったDVDとケガをしているニャン丸の姿を見て、ニャン吉は嬉しさのあまり大声で泣いた。


「ニャ、ニャン丸くん、ありがとう! そんな傷ついた体になってまで、僕の大切なDVDを取り返してくれたんだね」

「ガッハッハ、よかったっすな、ニャン吉先生。 これでまた猫アイドルオタクで集まって、一緒にDVDを見ようっす」

「ニャン吉、本当によかったね。 そして今日のニャン丸は本当にカッコよかったんだよ!」

「チッ、ニャン太郎は余計なことを言うんじゃねぇよ。 そんなこと言われると、何だか恥ずかしいじゃねぇか」

「ニャ、ニャン丸くん、今日はいろいろ失礼なことを言ってゴメンなさい。 もう二度とあんなことは言わないよ!」


ニャン吉は泣きながらニャン丸の胸に抱きつくと、抱きつかれたニャン丸は少し照れる。


「ケンカの好きなニャン丸くんは、八ニャン士のニャン丸くんはずっと僕の友達だよ!」

「ニャン吉、よ、よせよ。 2人に見られて照れるじゃねぇか」


ニャン太郎とニャン平 目が点になる。


「君たち、ひょっとしてボーイズラブ?」


その時冷たい風が里見村に吹くと、八ニャン士は寒さでブルブルと震える。


「おお、寒いっす。 風邪をひくっすから、早く家に帰るっす。 ああ腹減った!」

「寒いと思ったら、明日から11月かぁ。 なんだか1年が過ぎるのは早いねぇ」


すると、ニャン丸に抱きついて泣いていたニャン吉が泣き止む。


「え? ニャン太郎くん、明日が11月って言った?」

「うん、言ったよ? ニャン吉、それがどうしたの?」


その言葉を聞いたニャン吉は、雄叫びを上げながら服を破り、猫アイドルオタクのハチマキとハッピに着替えた。


「うおおおお! 10月31日は、猫アイドル『ニャンビッシュ』DVDの発売日じゃねぇかぁ!」


説明しよう。

ニャン吉は猫アイドルのDVD発売日になると、急に豹変する二重人格である。


豹変するニャン吉を始めて見たニャン丸は、ポカンと口を開けて見つめる。


「へ? 気が弱くてケンカ嫌いなニャン吉くんが、なんだか怖い顔をしてどしたの?」

「うるせぇ、チンピラニャン丸! お前のケンカのせいで、DVDの発売日を忘れたじゃねぇかぁ。 俺はお前らと付き合ってる暇はねぇんだよ!」


ニャン吉は家のガレージに入って猫アイドルオタク改造自転車『ネコオタッキー号』に乗り、もの凄いスピードで飛び出して行った。


「うぉぉぉ、早く行かねぇと発売日に間に合わねぇ! どけどけどけぇ! パフッパフッ!」


ニャン吉は雄叫びを上げて自転車を走らせ、ラッパを鳴らしながらどこか遠くへ消えて行った。

その豹変して消えて行くニャン吉を見た八ニャン士は、口をあけながら呆然としていた。


「あっ! ニャン吉先生は猫アイドルのDVDの発売日になると豹変することを思い出したっす。 さぁ帰ろ帰ろっす。 ああ腹減った!」

「そ、そうだねぇ。 伏夜様が夕飯作って待っているから、僕も家に帰ろうかなぁ」


ケガをしてボロボロになっているニャン丸も、しばらく呆然と立っていた。


「俺は・・・何も見なかったことにする」

今回はニャン丸くんが頑張ったおかげで無事にDVDが戻ってきてよかったね、ニャン吉くん!

あの極悪非道で口の悪いニャン丸くんにとって、八ニャン士がとても大事なものだったとは知りませんでした。

前にも言いましたけど、猫アイドルのDVD発売日はニャン吉くんに気をつけましょうね!


次回「孝の巻」をお送りします。

イケメンのイケメンによるイケメンの為のニャン斗を1日密着取材!


お楽しみニャン!


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