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第壱話:匿名掲示板

「2025年8月15日午前10時00分:暇だ。誰か助けてくれメンス!・・・っと。」


俺は、匿名掲示板でそう訴えた。


働けば?


至極まっとうな返事が来た。


「働いていたんだよ5年前に・・・っと。」


なんでやめたの?どんな会社だった。


「ブラックモーターっていう糞な会社・・・っと。」


あー、あそこか!内部告発でいろんなやべーことが明るみに出たのに懲りずにCM流していた会社かw


「そうそう、休日出勤当たり前、3轍はやって当然、サービス残業当たり前、ハラスメントがなかった日は一日足りとも無い、人間関係は最悪と絵にかいたようなブラック企業だった・・・っと。」


それじゃあ、ニートになっても仕方ないなw


今何歳?


「来月30になる独身で自宅警備員を5年間やってますっと。」


草生えるw


親は何も言ってこないの?


「職場で精神壊してやめたことを知っているから何も言ってこないし、会話も食事で呼ばれるときに応答するぐらい。」


兄弟とかは話し相手になってくれないの?


「妹がいる。だけど、すでに一人暮らしをしていて家に金を入れてくるだけで全く帰ってこない。帰って来たとしても、俺をいないように扱っている。」


兄がもうすぐ30だからそれ以下の年齢か・・・。


「狙ってんのか?」


なぜバレたしw


「下心丸見えなんだよw・・・つーか、性格超きついから期待しない方がいいぞ?」


でも、それってお前だけにきつく当たっているだけじゃないの?


「たしかに、ニートは滅んじまえばいいとか言ってたな。」


まじか、俺もニートだから無理だわw


外出はしないのか?


「基本的に親が買い出しに行くから、出る必要もないしな。」


俺、一人暮らしだからうらやましいわ。


「ネットでいろいろ注文できるんじゃないか?ウーパーイーツとか」


めんどい


「草」


でも、外出とかはした方がいいぞ?俺、兄貴がいたんだけど、座り過ぎが原因で血管が詰まって死んじまった。


「あらま。なんか、ごめんな。」


いいって!お互い健康に気を付けようぜ!


「俺、ちょっと外出してくる。」


いってらー。


・・・・・・


そんな顔も素性も知らないネット民との会話を交わした後、重い体をよっこいしょと言いながら上げて玄関までやって来た。


靴はしばらく外出していなかったから埃をかぶっていた。


埃を払っていると後ろから母さんが声をかけてきた。


「出かけるのかい?」


「ああ。」


「気を付けてね。」


「わかったよ。」


本当にこのぐらいしか親としゃべらない。


どうにかしないといけないのに、やろうとすると急にめんどくさくなって今のようなやり取りになってしまう。


「せっかく見送ってあげようと思ったのになにその態度。」


「良いじゃんべつに。」


「こっちを向きなさい!」


俺は言われるがままに向いた。


母はいままでにないくらい厳しい表情をしていた。


「な、なんだよ。」


「あんた。この先どうするつもり?!5年間も働かずに家でゴロゴロして!」


「今・・・それ関係ねぇだろ!!」


そう言って俺は家を飛び出した。


「待ちなさい!吾、話は終わってませんよ!!」


俺は無視して走り続けた。


気が付くと俺は駅にいた。


「ここまで走って来たのか?」


途端に駅名が書かれた文字がかすれた。


「あれ?なんだこれ・・・畜生、みんなが見てるんだぞ?収まれ、収まれよ畜生。」


糞婆のせいで恥をかいたな。しばらくは帰らずにいてやろう。


そう思いながら、涙でぬれた顔を腕でぶっきらぼうに拭い、駅のホームまで向かった。

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