表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

「愛」 -ai-

想いを寄せる相手に害を与える

――例えばヤンデレとか。


そういうのは、所詮「恋」止まりだ。

 『俺に優しさなんてないで』


 結局、自分を愛せないのでは、結局心は冷えたままじゃないだろうか?




 なら俺が、その氷を融かす役をしてやりたかった。

 「いくらでも慰めてやるよ」


 でも、サーショの隣にはもう彼女がいる。しかも、サーショの本性を知る理解者として。

 ――俺は、一番の“存在”には成れない。




 一番の“友達”として、その役を()ればいい。それが一番利口な選択なのは頭では解ってる。


 だけど。

 「この感情は恋じゃない」と決めつけたが、結局のところ――


 サーショが俺に触れ、俺がサーショを熱く求める、その妄想。

 サーショが欲しい、その欲。


 ――それを完全に捨てることは、難しそうだった。

 俺はプラトニックには成り切れないし、かつそんな気持ちを生き腐れにしてしまうのも……自分に嘘をつくような、そんな気がして嫌だった。

 もちろん、これは俺の想いのなかでも、危険域のものだ。常にこんなことを考えてるわけじゃない。


 とは言え、仮にもしプラトニックに想う気持ちであったとしても、サーショが俺のこの感情を受け取るなどありえないし、あってはならないだろう。

 だとして、俺とサーショが今後親友として付き合っていくことは疑う余地も無く、そんな距離感で居るのに、この感情を完全に捨て去って諦めるなど、無理な話ではなかろうか……。




 つまり。

 つかず離れずな距離に居ながら、絶対的な好意を抱いて、しかしそれ以上先には進めない。


 (……地獄かな?)






 また、サーショとのDMの画面を開く。

 また、意を決して、送信する文字列を打ち込む。


 (もうサーショには彼女が居る)

 (俺みたいなロクデナシが隣に居ていいのだろうか)

 (言っても大丈夫、なんて、都合のいい妄想も甚だしい)

 (伝えたとしてその先は無い)


 不安と猜疑を、決意と勇気で振り切って、送信ボタンを押した。

 「久々に会って話さない?」






 不思議な感覚があった。

 一度吹っ切ってしまえば、「大丈夫だ、拒絶されはしない」と、サーショを信じることができた。

 ……もちろん、不安や俺のエゴも、未だ多少は残っている。


 やがて、俺の気が変わってしまうかもしれない。

 俺がただ、さみしかっただけなのかもしれない。

 でも、それでよかった。


 俺がサーショへ渡す想いは、たくさんある。

 この想いと、これまで共有してきた時間を考えれば、サーショも俺自身も、信じることができる。


 だって、親友だろ?

 「俺→サーショ」の矢印がデカすぎるだけ。それにサーショが応えなかろうと、受け止めてくれるだけで充分。俺はこの想いを注ぎ続けるだけ。

 そしてサーショは、受け止めてくれる。


 この想いで、俺が知らなかった、サーショの心の氷を融かす手伝いをしたかった。

 ……解っている。その役割に最適任な人は、俺じゃなくて、彼女だろう。

 だとしても、それがなんだと言うのだろうか。


 ただ、「どうか、しあわせに」と、願うだけ。

 ただ、必要そうなら、助けてやるだけ。






 だから。

 久々に会った、サーショへ。


 「愛してる」


 ……恥ずかしくて、目を見て言うことはできなかったけど。




 「ほかにも友達は居るけど「居るんだ……」ここまで大切に想ってくれるのって、お前だけだと思うんだよ。……はじめてのことだから、正直戸惑ってるけど」


 そりゃそうだろう。同性の親友にこんな想いぶつけられて平然としてるようなら、それこそ心が凍り付いてる。

 でも、サーショはそうじゃない。


 「ありがとう。これからも変わらずやっていけたらって、そう思う」

 「そりゃねぇ。俺がこんなだからさ、完全に変化ナシとはいかないだろうけどさ、俺も関係性を変えようとは思わないよ。だって、サーショには彼女が居るわけだし……」

 「でも、お前はかけがえのない存在だよ」


 その言葉が、俺にとって、どれだけの意味を持っただろうか。

 俺の中の懊悩(おうのう)なんて、その一言ですべて片付いた。

 「っ! ……ありがとう」




 「でもさ、お前がそういう風に想うのって、周りに人いないからじゃないの?」


 ピシ、と。

 シリアスを破壊する一言だった。

 「友達、いないの? 増やしなよ」


 (気持ちはわかるんだけどなーんでそんなこと言うかな~~~~???)

 「依存気味だって言いたいんでしょ? 可能性としてはゼロではないけど……できるかいな」

 俺は笑って、そう答えた。


 だって、今は。

 サーショを超える、そんな相手は想像できないし、したくなかったから。


 今、俺は、サーショだけを愛していたい。











 まだまだ伝えきれていないけど、溢れ出す想いはどれも嘘じゃない。

 サーショのしあわせを願う想いも、「俺なんかが……」なんて卑屈さも。

 無理だと解っていてもサーショが欲しい、そんな醜悪な独占欲だって。


 全部、俺の正直な想いだ。嘘偽りは無い。だから受け入れられる。


 ……まだまだ、俺の我欲がチラつく。それはきっと、一方的な恋情。

 だけど。


 俺にとって、サーショは、一番大切な存在。

 なら、サーショのことを第一に想うのが、スジってもんだろう?


 俺は、愛を見つけた気がした。




 この愛がある限り、俺は俺を受け入れて、そしてサーショを愛していく。

Type2:■■■






どっかの玄関の扉を模したデザインをした表紙を持つ本。

その本から、破かれたページのような、差し込まれたルーズリーフのような、

そんな感じの紙が落ちた。


“観測”を続ける↓

https://ncode.syosetu.com/n6630hw/7/

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ