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6 メイド、町に着く。

 私が魔石を回収するのを見届けたリムマイアさんは「さて」と言った。


「追放されたもんはしょうがないし、私はレジセネの町に戻る。まあ、オルセラのおかげで一瞬で下まで来れたし、よしとするか」


 レジセネの町に、戻る……!

 それを聞いた私も弱者の生存戦略を取らざるをえなかった。


「できたら私もぉ、一緒に連れていってもらえないでしょうかぁ」


 精一杯の甘え声と潤んだ瞳で懇願する。


「……きもい。……分かってる、置いてくわけないだろ」

「ありがとうございます!」


 町までの道中、私はさらにリムマイアさんのことを教えてもらった。

 なんと彼女は私と同じ十五歳らしい。戦士としてここにやって来たのは五年前とのこと。なお、同い年なので敬語もさん付けもいらないと言ってくれたから、そうさせてもらうことにした。


「けどリムマイア、たった五年でそこまで強くなれるものなの?」

「私の場合、固有魔法のおかげってのもあるな」

「そっか、〈戦闘狂〉だもんね。他の人の獲物まで遠慮なく倒してそう。追放されるわけだ」

「遠慮ないのはお前だ。途端にずけずけ言うようになったな」


 英雄級の戦士が一緒、というのはすごい安心感だ。

 リムマイアは現在全く気配を隠してない状態だそうで、この辺りの魔獣なら向こうから避けていくみたい。

 彼女に突撃してきたあのモノドラギスは相当勇敢だったんだね。あれは角竜種というらしく、あとサフィドナの森で気を付けなきゃいけないのは獣竜種のウルガルダなんだって。私が最初に遭遇した狼頭のドラゴンだよ。

 そういえば、ラクームも同じ獣竜種のはずなんだけど、……全然竜っぽくないな。


 と私は前をトコトコ歩く狸に目をやった。

 両脚に鱗が生えてるだけのちょっとでかい狸だ。普通の動物にも負けるんじゃない?

 にも関わらずこいつ、かつてないほどに堂々としてる。

 完全にリムマイアの威を借りてるな、まったくこの狸は……。人間にもいるよね、こういう人。

 私の顔をじっと見つめていたリムマイアがぽつりと。


「オルセラお前、さっきまでビクビクしてたのに、すごく堂々としてんな」


 …………、え?


 まあいいか。それより私、ずっと気になってることがあったんだった。

 固有魔法〈人がいらなくなったものを呼び寄せる〉についてだ。

 絶体絶命の状況で、あれは二度も私を救ってくれた。発動時、いつもと違う感じもしたし。

 話を聞いたリムマイアは少し考えてから。


「魔法って精神面も結構影響するんだけど、固有魔法は特にな。使用者の意思に反応して、一時的にレベルが上がることもあるみたいだ」

「私の必死さが魔法に伝わった、ってこと?」

「たぶんな。私も、やばい! って思った時はいつもより力出るし。ま、やばいのはやっぱりお前の魔法だけど、はは。

 ……あ、見えてきたぞ。あれがレジセネだ」


 やばいってのはさっき聞いたよ。よく分からないけど。

 そんなことよりやっと辿り着いた!


 暗闇の中に浮かび上がる人工的な明かり。

 戦場にあるから小さな町を想像していたんだけど、意外にもかなりの規模だ。東西の台地自体が何キロも離れており、その端から端まで建物が並んでいる。

 考えてみれば、世界中の国々が力を合わせて作った町なんだから小さいわけないか。


 近付いていくと、高さ十メートルほどの壁が視界に入ってきた。


「ゲートはあっちだ。じゃあ」


 リムマイアはラクームをちらりと見て言いにくそうに。


「……そいつとは、ここでお別れだ」


 お別れ……?

 ……そうだ、町には結界が張られてるんだから、魔獣のこいつは入れない。


「キュ、キュ……」


 不穏な空気を察したのか、狸は泣きそうな顔で震えている。

 これまで一緒に死にそうな目に遭ってきたこいつを見捨てるなんて、私には……。もう何だか、他人にも思えないし……。

 狸を抱き上げた私も涙を堪えられなかった。


「リ、リムマイア……、どうにかこいつも、中に入れてもらえないかな……」

「……やっぱりそう来たか。分かった、ついて来い」


 案内されたのはゲート横の建物だった。

 外で待っているように言い、彼女だけ中に入っていく。

 つっ立っている私を、通り過ぎる人達がじろじろと。

 すごく見られてる! 確かに誰も彼も鎧姿で、私だけメイド服だけど!


 注目を浴びながら待ち続けること数分、リムマイアが一人の女性を伴って出てきた。

 あ、この人は鎧を着てない。でも、ただ者じゃないことは魔力から伝わってくる。

 彼女は私を見るなり、


「本当に【メイド】だわ! あなたよく死ななかったわね!」


 無事を確認するように体をぺたぺたと触った。

 戸惑う私の視線に応じてリムマイアが。


「この人は関所の統括者、エリザだ。オルセラの事情を話した」


 おそらく二十代の前半だろうか。金髪を後ろで結い上げ、大人っぽい雰囲気のエリザさん。ぺたぺたとまだ私の無事を確認し続けている。


「……あの、体は大丈夫なので、そろそろ離してください」

「なんて食べ頃……、あら、ごめんなさい。心配しないで、あなたの固有魔法のことは誰にも話さないから」


 私が「どういうこと?」とリムマイアに尋ねると、彼女は大きめのため息。


「だからお前の魔法はやばいんだ。(エリザもやばいけど)言っただろ、銃と私のケースは一時的にレベルが上がった状態だったって。つまり、すでにやばいけどこれからどんどんやばくなる。とにかく、やばい」


 ……そ、そんなにやばいの?

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― 新着の感想 ―
[気になる点] なんて食べ頃……やばぃ責任者に遭遇しちゃったか(゜.゜)
[一言] 「要らなくなったもの」の「もの」の範疇はどこまでだろうか 領地を要らんとかいう領主が居たら盛大に土地が召喚されるんだろうか
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