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54 メイド、相性の悪い魔獣を圧倒する。


 私とタヌセラも急いで部屋の中央へと走った。その間にも体長二メートルの竜達は順々に壁から床へと下りてくる。


 また変わった魔獣だね、確認しておこう。〈識別〉発動っと。半数くらい閲覧できないけど、魔力差は個々であまり感じないからたぶんレベル10から15辺りだと思う。

 魔獣は角竜種でネフィダロスという名称だった。確かに角が二本頭に生えているけど、同じ角竜種のモノドラギスとはずいぶんタイプが違うな。たぶん武器は牙と前脚の爪だね。それから〈岩闘弾〉っていう魔法か。あの魔法、地属性っぽいし、じゃあこの魔獣の得意属性は地……? ……私と相性悪いね。


 私の心を読んだようにナタリーさんはクスッと微笑んだ。


「あのレベルではまだ属性への耐性は大したことありませんよ。ですが、オルセラさんもそろそろ雷以外の属性魔法を習得してもいい頃です。検討してみてください。とりあえず今回は私に任せてもらって構いません」


 そう請け負ったナタリーさんは、再び鎖の付いた剣を投げ放つ。やはり刃が刺さるとネフィダロスはすぐに凍りついて砕け散った。

 剣は一旦彼女の手元に戻るのかと思いきや、その場でクルッと向きを変えて近くの角竜へと飛んでいく。もう一頭、氷漬けにして仕留めた。


 あの武器、まるで生きているみたいだ……。

 私の視線が剣に釘付けになっているのに気付いたナタリーさんが、それを手の中に呼び戻す。


「この鎖剣は魔法武器です。剣部分は遠隔操作が可能で、鎖を通して魔法を流すこともできます。今は〈アイスウエポンⅡ〉を付与しているのであんな感じですね」

「その鎖のとこ、何だか伸びてませんか?」

「ええ、長さは魔法で調節可能です。結構伸びますよ。この武器は情報を得るために魔獣を拘束する捕縛具でもありますから」


 いかにもナタリーさんらしい武器だと思う。

 一方のハロルドさんは剣から風の刃を放ち、こちらもネフィダロスを一撃で仕留めていっていた。あれはたぶん〈ウインドスラッシュ〉のⅡかな。


 どっちもまだ全然本気は出していないよね。この二人に任せておけば何の心配もいらないし、私は本当に見学していてもいいんだろうけど……。それは何かちょっと……。


(オルセラ、もやもやしていますね)


 気付けばタヌセラが私の顔を見上げていた。


(分かりますよ、私も一緒ですから。私の方は分身体で囮の役をこなしただけで、まだ戦ってすらいません。自分と同じレベル帯の魔獣に一匹で勝てるということを証明したいんです! 二匹がかりですけど!)

「分かった、危なくなったら私が助けるから行っておいで」

「キュオ――――ン!」


 分身体を作り出したタヌセラは、一頭のネフィダロスに向かって二匹同時に駆け出す。

 発射された大岩、〈岩闘弾〉を分身体の方が〈狸火〉で迎撃。岩が砕けている間に、跳び上がったタヌセラ本体が空中で高速回転を始める。

 飛来する毛玉を払いのけようとしたネフィダロスの前脚が、バチッ! と弾かれて逆に角竜の方が大きく体勢を崩すことになった。


 この隙にこちらも毛玉と化した分身体が突撃。ネフィダロスの腹部に回転蹴打を炸裂させた。

 倒れこんだ角竜の上にタヌセラ本体が作り出した大火球が浮かび上がる。


 燃え盛る炎を背に、魔石を咥えたタヌセラが私の元に戻ってきた。


「……案外、簡単に倒したね」

(オルセラが見守ってくれていると思ったら、思い切って戦うことができました。次は、私が危なくなったら助けにいきますので、オルセラもどうです?)


 契約獣にここまでお膳立てしてもらったら、戦わないわけにはいかないよね。やっぱり安全に戦える今のうちにできるだけ経験を積んでおくべきだ。

 全強化状態で魔法の剣を伸ばし、さらにそこに〈サンダーウエポン〉を付与した。相性悪くても、ないよりあった方がいいでしょ。


 私が走り出すとネフィダロス達は一斉にこちらへと向かってきた。

 確かにこの中じゃ私が一番レベルが低いけど! なんてあからさまな奴らだ! それより一気にこんなに沢山は無理っ!


 困惑しているとナタリーさんの鎖剣が床を走って氷の壁を構築。

 私は一頭の角竜と一対一の状況になっていた。

 視線をやるとナタリーさんはクイッと眼鏡を上げる。


「どうぞ、戦ってください」

「ありがとうございます……」


 改めて私はネフィダロスと向かい合った。

 あちらは威嚇するように両前脚の爪を振り回して見せつけてくる。


 ……まるで私になら勝てると言っているみたいだ。私自身の魔力量と剣に纏わせてる雷を見てだろうけど、ちょっと腹立つな。あんまりなめないでよ!


 大きく踏みこんで素早く相手の間合いに入り、先手を奪って斬撃を浴びせた。角竜の爪や牙による攻撃は避けつつ、繰り返し剣で斬りつける。


 あれ、このネフィダロス、レベルはさっきのブレノーガと同じくらいでもあそこまで強くはない。あっちは近接専門みたいな感じだったし、単独で行動していたから魔獣としての格も違うのかも。ネフィダロスはここまで接近しちゃえば〈岩闘弾〉は使えなくなるし、全然怖くないね。

 私がそう思っているのが伝わったらしく、今度は向こうが腹を立てる番だった。吠えながら私にかぶりつこうと牙を剥く。攻撃をかわしてその首筋を斬り、戦いに終止符を打った。


 ネフィダロスの体が塵に変わってしばらくして、ほぼ同量の経験値が流れこんできて私は【メイド】レベル14に上がる。


 今のはもしかして……? と目を向けると氷の壁の上にタヌセラがシュタッと現れた。その全身の毛が逆立つ。


(ひあ――――っ! わ、私やっぱり冷たいのは苦手かもです!)

「早く下りてきなよ……。タヌセラ今、もう一頭倒した?」

(はい、壁を越えようとしていたのがいましたのでやっつけました。ナイスサポートではないでしょうか!)

「キュッキュー!」


 意気揚々と氷の上から跳んだ狸を私がキャッチ。


 そうか、今日はご褒美にたっぷり魔石をあげないとね。せっかく追いついたレベルも、またこの子に先を行かれそうだけど。


コミカライズの10話が配信されました。

最下部のリンクからぜひどうぞ。

配信が先月末だったので、こっちの投稿が月を越えてしまいました……。

今月下旬あたりにでももう小説はもう一話投稿しますね。


さて、ぜひ読んでいただきたいコミカライズ10話です。

とにかくタヌセラが可愛いタヌセラ回になっています。


オルセラ

「待って待って、私の派手なアクションシーンもあるでしょ」


そう、少女漫画とは思えないクオリティのバトルシーンもあります。

さすがもの干し竿先生です。

でもやっぱり今回はタヌセラが可愛い……。


タヌセラ

「キュッキュッキュ」

(オルセラ、すみませんねー。何しろ私が大量の魔力を得るパワーアップ回ですからね)


オルセラ

「誰のおかげで得られたと思ってるの、この狸は……。しかも、パワーアップしてもまだまだ弱いし……」


そう、まだまだ雑魚くて可愛いです。

そして、現在製作中の次話ではなんと……、


ついにタヌセラが肉まんを食べます。


タヌセラ

「キ、キュッ!」

(ついに、私と肉まんの運命の出会いがっ!)


オルセラ

「……それ、そんなに大層なこと?」

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― 新着の感想 ―
順調な対処出来ましたね、どちらも一端の戦士となったもんで。
相性にはゴリ押し。それで解決出来たならそれでいいのです(ポ〇モン脳)
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